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夕陽から飛び出して来い   作者: 木畑行雲
第三章 麗しき日々!?
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第三章

 月曜日、小鬼は高校へ付いて来た。しかし、二時限目の授業が終わると、窓からスーッと出て行き、家へ帰ったようだった。

 以来、高校へは付いてこなくなり、晶が帰宅する頃、気まぐれに帰り道の途中で待っているようになった。

 

 しかし、授業で宇宙の事を説く時や自然界のドキュメンタリーを鑑賞する時など、興味のある場合にはどこから聞きつけたのか付いて来た。

 小鬼曰く、勘で分かるのだとか。

 ある時などは、宇宙のドキュメンタリーを見て大いに喜んだ。銀河の解説や宇宙の再現映像を眺め、人間の面白い所だと繰り返し言った。

 

 そうして六ヶ月ぐらいを共に過ごすと、小鬼の好みが少しづつ分かってきた。

 食べ物はほとんど何でも美味しいと言うが、キャラメルと水飴はちょっと苦手そうで、人間を含めた生物のほとんどが可愛いく小鬼の目には写り、鏡が苦手で、天気の良い日は雲の上で日向ぼっこをしたり植物を見に行く。雨の日はたいてい漫画や本を読んでいる。餡子と米それから緑茶を気に入って、日本に来れて良かったとよく言った。

 小鬼がおはぎの存在をまだ知らないことを晶は把握していたから、いつか買ってきてビックリさせようと思っている。

 それと最近は家族にも興味を持ち、父が朝食時に読む新聞を覗いているし、姉が友達と電話を始めるとよく聞きに行く。

 祖母の作る梅干しや干し柿には感心して、手伝いのつもりなのか、まじないのような光を一瞬当ててやっている。

 小鬼曰く、殺菌しているんだとか。

 

 何が好きで、何をするのか、そういうことが分かってくると晶は安心した。そして、すっかり気を許していた。

 いつしか、高校からの帰り道に、うろうろしながら待っている小鬼を見つけると、晶の気持ちはパッと明るくなるようになっていた。

 

 また二月のある日、梅の枝先の蕾を蝶々のように撫でて回っている小鬼を見つけると、

「なんて綺麗な生き方をするんだろう」と、晶の心の中では春の訪れが一層輝くようだった。

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