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夕陽から飛び出して来い   作者: 木畑行雲
第三章 麗しき日々!?
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第三章

「犬の散歩行きますけど、来ますか?」

 

 蕎麦屋から帰ってきてくつろいでいた晶は、雑誌を閉じて言った。小鬼はまた漫画を読んでいる。

 

 静かな午後の部屋で、表を往来する車の音だけが聞こえた。行かないのかと思い晶が立ち上がると、小鬼は粘って読んでいた漫画を床に置いた。

「行こう行こう」

小鬼は元気よく言うと、楽しそうに付いて来た。

 

 門扉の前で犬にリードをつけると、小鬼は手綱を持ちたがった。犬は今か今かと門が開くのを見つめている。晶がリードを渡してよいものか迷っていると、犬はすかさず鼻を鳴らす。

 犬の強い気持ちに耐えきれず、晶は門を開けとにかく歩くことにした。

「もう少ししたら、代わりますから」

晶は小鬼にそう言って、丁度いい場所を探した。なるべく、車の通らない安全な場所で、ついでに人もいない所がいいように思うのだ。

 

 晶は一箇所思いついて、そこへ行ってみた。町の人や通りがかる人は、そこを私道だと思っていて入って行かないのである。

 その道の先には屋敷があって、はじめは晶も屋敷の人たちの敷地なのだと思っていた。しかし、ある時その道の前でみかんをコロコロ落としている老婦人の手伝いをして、たわいもない事を話していると、屋敷に住む人間だとわかった事があった。そして、その老婦人から道は公道だから入ってもいい事を教わった。

 以来、誰にも会いたくない時に行っている。その道に入って行くのを誰にも見られないように、いつも後ろを確認して。

 

 そこは、丁度車が入れないぐらいの細い道で、始めのうちは古い石畳が続き、途中で固い土と僅かな雑草の道になり、梅の並木道の手前でアスファルトになる。アスファルトの道をずっと行くと、梅並木を抜けて屋敷がある。しばらく気づかなかったが、アスファルトの道は屋敷の裏側まで続いており、車道につながっていた。屋敷の人たちは主に車道側の道を行き来しているらしく、滅多に会うことはなかった。 

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