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怪我をしたグリフォン

 バーホンがレンナとヒナに知り合ってから1ヶ月が経とうとしていました。


 もっとも3人の行動は変わりません。

 自由気ままな森の旅。


 図鑑の検証はずいぶんと進みました。


 分かっているのは、図鑑の品物を消費したときは半日以上は図鑑の物は取り出せないこと。


 消費していない品物はいつでも図鑑に戻せるけれど、いちどに2つの物を取り出せないこと。


 最後に、大きな物は図鑑から取り出せない。

 そんな3つのルールです。


 図鑑以外でもちょっぴり変化がありました。


 たとえば、レンナとヒナはリュックサックを持っています。

 獣の皮を、図鑑のミシンで縫ったものです。


 それからキャンプ道具。

 図鑑から取り出したキャンプ道具は、テントに飯ごう、ほかにもテーブルに椅子。

 それらがまとめてありました。


 キャンプ道具も、リュックサックも、森での生活を快適にしました。


「おじちゃんあのキノコ食べれる?」

「あれは駄目だ触っても駄目だ」

「ヒナ、駄目よ。またおててが痛くなるよ」


 今日も、深い森を進みながら会話します。


 毛皮で作ったバッグの中にヒナは食べられるものをたくさん詰めています。

 きのこや木の実、はたまた葉っぱ。


 森の中にはたくさん食べられるものがありました。

 もちろん食べられなくて毒になるものも。


 子供の頃、父親に連れられて森の散策した知識がとても役に立ったっている。

 何かある度に、バーホンは彼の父親に感謝しました。

 

 たとえ魔法があったとしても、毒を取り除くことができたとしても、即死の毒には通じません。

 だからとても慎重に食べるものを選ぶのです。


「さて今日はこのあたりでご飯を作って食事にしようか」

「おじちゃん、私がシート敷くね」

「あたしも!」


 何度もテントを張っているだけあって、3人の連携はバッチリです。

 テキパキとみんながうごき、瞬く間にテントは完成します。


 さらに紐を張って肉を吊します。

 干し肉をつくっているのです。

 他にも果物に、皮。干せる品物はなんでも大歓迎でした。


「茸が沢山採れたから茸スープ」

「そうだな」


 ここ最近はレンナがメニューを決めます。

 料理は三人で作ります。

 

 ヒナが茸を裂いて小さくします。

 彼女は葉っぱも小さな手でやぶって小さくします。

 下ごしらえが得意なのです。


 レンナは味付け。

 鍋の噴きこぼれを監視します。

 ほかにもお鍋をかき混ぜます。


 そうやって、作った料理はいつもすぐに無くなりました。

 今日も、きっとそうなるでしょう。


「おいしい匂い」


 ヒナがクンクンと鼻を鳴らしました。


「そうだな。今日は一際うまそうだ」


 バーホンはニコリと笑いました。


 いつものように楽しく美味しい食事。

 しかしその日は少しだけ違いました。

 

 異変に気がついたのはレンナです。

 彼女はカサカサと草木が動く音を聞きました。


「おじちゃん」


 レンナは小声でバーホンを呼ぶと、干し肉をそっと指差しました。

 それと同時に干し肉の一つがガサリと音を立てて下に落ちました。


「獣か何かかな」


 バーホンは木を削って作った棍棒を手にとって、さっと動きました。


 とても素早い動きで干し肉の吊り下げてある場所まで行くと、近くの茂みに向かってブンと棍棒を振るいました。


「ぎゃっ」


 甲高い悲鳴が起こりました。


「おじちゃん大丈夫?」


 ヒナが声を上げます。


「問題ない。だが、こいつは……」


 困った顔をしてバーホンは茂みから一匹の獣を引き上げました。


 それはヒナやレンナよりもずっと大きくて、バーホンよりも小さい、不思議な生き物でした。


 真っ白な鳥の頭、鮮やかな黄色いくちばし、立派な赤い翼、そして下半身はまるで猫のよう。


 つまりはグリフォン。

 人より賢くて、人より長生きで、そして空も地上も我が物とする、魔獣でした。


「ごめんなさい。許して。お腹がとっても空いていたんだ」


 鳥の前足をバーホンに掴まれた状態で、逆さになったグリフォンは、真新しい頭のたんこぶを羽でなでつつ言いました。


 泣き声混じりのその声は、やんちゃな少年のようでした。


「おじちゃん助けてあげて」


 その声を聞いてレンナが言いました。

 彼女の視線はグリフォンの左足を見ていました。

 左足は紫色になってパンパンに腫れていました。


 ヒナもレンナの言葉にコクコクと頷きます。

 二人に頼まれたバーホンは、断る気にはなれませんでした。

 

 グリフォンに干し肉を食べさせてあげて、それから果物もあげました。

 食事の後に回復魔法をかけてあげます。


「魔法は効きにくいか」


 バーホンはあまり回復しないグリフォンの左足を見てつぶやきました。

 だからといってこれで終わりというわけにいきません。


「しょうがない、俺が担ごう。しばらく一緒に旅をするか」


 バーホンの提案にグリフォンは二つ返事で了承し、ヒナとレンナは笑顔で同意しました。


「ありがとうございます。僕の名前はパリカール。キールバンドの黄金グリフォン、ルフランドの子、パリカールです」


 こうして子供のグリフォン、パリカールを新しい仲間に加えて旅は続くことになりました。

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