第2章~中央監視室に現れる白い人影
大川さんは、9年前に離婚していて、それからどのくらい女性の知り合いがいたかは定かではありませんが、現場にいた時は付き合っている女性がいる感じは全然ありませんでした。
しかし、この度の謎の末路として、千葉県の成田市内の山荘で単独で亡くなったのではなく、そこに若い女性2人が一緒に亡くなっていたとの事でした。
その3人の遺体が発見されたのが、4月下旬~5月にかけての事らしく、遺体の腐敗がかなり進んでいて、身元の判明にかなり手こずったとの事でした。
大川さんの遺体の両脇に、2人の女性の遺体が寄り添う様な状態だったそうです。
それにしても、あまりにも不可解な死に、ただ違和感を覚えるだけでした。
警察官が現場での話を終えた後、この一件と現場の人間の関わりがないという事が判明したので、それ以来は来なくなりました。
事情聴取の後、現場長の酒井さんが言いました。
「大川さんの死体がかなり腐敗していたのなら、この会社を辞めてから短期間で成田市内の山荘に行ったという事じゃないかな?」
すると、同僚の方が数人で、
「2月中旬に亡くなったとしたら、4月下旬にはけっこう腐敗しているかも知れないね」
「それにしても、一緒に亡くなっていた女性2人は推定25才と20才位らしいじゃないか!」
「どこで知り合ったのかね?」
「でもまあ、死んじゃえばどうしようもないけどな」
「それもそうだな…」
「ただ、大川さんが化けて出てこないといいけどな…」
という、会話がありましたが、自分はその最後の、
「化けて出てこないといいけどな…」
という、言葉にゾッとしました。
そういえば最近、宿直勤務で夜中1人の時に、どうも人の気配がするようで気にはなっていましたが、その時は振り向かないようにしていました。
しかし、それは意外な感じで目撃する事になったのです。
警察官が来てから大体1週間後、自分が宿直勤務で食事交代の時間になった時です。
食事に行く方が中央監視室から出ていった直後、監視用のディスプレイとパソコン本体の間に、白っぽい人影が見えました。
いつもなら、そのようなものはなるべく見ないようにしているのですが、時間帯が比較的明るい時間だったので、ふと、その間の白っぽい人影を覗いてしまったのです。
すると、何とそこには、真っ白な着物を着た大川さんが、しゃがんだ状態でいたのです。
それも、こちらの方を恨めしそうな感じで見ていたのです。
自分はつい、
「大川さん!」
…と、言いそうになりましたが、
「はっ!確か大川さんは死んだ筈…」
「こ、これはこのまま見てはいけない!」
と、思った瞬間、大川さんの幽霊が自分の方に向かって、ぐぐっ~と伸び上がってくるではありませんか!
それも、恨めしそうな目をしたまま、かなり近くまで顔が近付いてきたのです。
自分は必死になって目をつぶり、勢いよく左を向きました。
その時、かなり激しく、
「ドキ-ン、ドクドクドクドク……」
と、鼓動が高鳴りました。
その数秒後、恐る恐る目を開くと、そこにはもう何もいませんでした。
数日後、現場の方に、
「このディスプレイとパソコン本体の間に、真っ白な着物を着た大川さんの幽霊が現れたんですよ!」
「それも、恨めしそうな目をしてこっちに顔を近付けてきたんですが…」
…と、自分が言ったら、次の日にはディスプレイとパソコン本体の隙間がなくなっていました。
自分は、現場の方は心霊を気にしない人が多いんじゃないかと思っていましたが、即座に取られた対応に少し驚きました。
しかし、ディスプレイとパソコン本体の隙間をなくしたところで、その後ろに大川さんの幽霊がいるのは変わらないので、一時凌ぎだと思いました。