第1章~大川さんの急な転職
皆様の職場には、途中で退職される方がどのくらいおりますか。
退職理由はいろいろありますが、職場環境や人間関係や給料といったところが大半なのではないでしょうか。(倒産やリストラの場合は除きます)
もし、元同僚だった方が、退職してからすぐに行方不明だったらどう思うでしょうか。
もう、関係ないと思うでしょうか。
それとも、何があったんだろう…位は思うでしょうか。
つい先日退職された同僚が、謎の死を遂げて職場に何度も幽霊として出てきたら、どんな気持ちになるでしょうか。
何の影響もない、幽霊なんて見えないし関係ない!
と、言い切れたらいいのですが、見えない方にも多大な影響が及ぶ場合があるので、完全には無視出来ない事だと思われます。
それでは、第1章へお進み下さい。
皆様は、長年仕事を共にしてきた同僚が何人かいるでしょうか。
良くも悪くも腐れ縁になるのでしょうか。
お互い、癖も性格も知り尽くしているから、悪くはないのかもしれませんね。
中には、家族ぐるみのお付き合いをする方もいますね。
一方、同じ仕事をしていてもすぐに辞めてしまう人も多々いますね。
今は、昔ほど露骨なイジメは出来ないような制度がありますが、水面下ではまだまだありますね。
今回のお話は、長く仕事を一緒にしてきた元同僚の謎の末路について述べていこうと思います。
それでは、そろそろ本題に入ります。
2010年(平成22年)の初め頃に、設備管理の仕事を長年一緒にしてきた同僚の大川さんが、宿直勤務の時に突然、
「なるべく早く今の会社を辞めたいんだ」
と、自分に言ってきました。
大川さんの年齢は40代前半で、バツイチ子なしで独身の方でした。
「次の就職のあてがあるのですか?」
「この仕事の前にやっていた異業種の仕事仲間から、いい条件で誘われたんだ」
「そうなんだ、それでどんな職業に就くの?」
「舞台の大道具係だよ」
「あの仕事は、日本全国あちこち回るから独身の方が都合がいいんだよ」
「もう、大道具のメンバーに内定しているからすぐにでも働けるけど、一応退職のルールがあるからそれは守るよ」
「本社にはもうその事を言ったの?」
「言ってあるよ、2月中旬の退社日も決まっているよ」
「そうなんだ、随分と話が急だね」
「現場長は俺の話を相手にしなかったけどな…」
「じゃあ、代わりの人が来るのかな?」
「そんな事は知らんよ」
「もう、あと2週間でここを辞めるから、俺にはどうでもいいよそんな事」
…という会話をした2週間後に、大川さんは会社を辞めていきました。
結局、ベテランが抜けて補充要員もいなかったので、それからかなり仕事が大変になりました。
それにしても、大川さんの引き際は不可解な感じだったな…。
年明けの頃にはそんな素振りを全く見せなかったのにな…。
とは思いましたが、当面は欠員1名の状況で運営するしかなかったのです。
2月の終わりに、本社の人事担当の松崎さんから、
「4月になったら解約現場からいっぱい人が溢れるから、とりあえず4月迄人員の補充はしないけど頑張ってね」
というお達しが来ました。
「マジかよ……」
とは思いましたが、あと1ヶ月何とか凌ぐしかなかったのです。
そして4月になって、やっと補充人員が1人来て何とか契約人数になりました。
欠員1名だった1ヶ月半の間は、けっこう仕事がキツかったですが、これで何とか現場の立て直しが図れるかと思っていました。
それから、1ヶ月経過した5月の大型連休明けの事です。
警察から本社に連絡が入り、どうやら以前現場で働いていた大川さんについての問い合わせが来たとの事でした。
警察が動いているからには、何らかの事件性があるという事になりますよね。
それによると、大川さんが千葉県の成田市内の山荘で死亡していたとの情報で、身元を判明する物が本社が退職時に出した離職表のみだったそうです。
それで、本社の方に問い合わせがあったそうです。
それも、死後けっこう経過しているとの事でした。
それを聞いた時に、現場では少なからず衝撃が走りました。
後日、警察の方が2人現場に来て、現場長と自分に話を聞いていきましたが、大川さんが退職後に連絡を取った同僚の方はいませんでした。