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 入学式が終わり、先生達の指示に従い、各クラスへと移動する。


 今日はこのあとクラスで魔法鑑定が行われる。これにより魔法を教える先生が変わってくるのだとか。


 因みに前回の時は教会から光属性の方が直々に教えて下さったので光魔法の殆どは習得済みなの。


 できれば今回は水魔法の授業を優先して取りたい。


 担任のマーク先生は一人ひとり順番に名前を呼んでいく。


「マリーナ・ラストール。前へ」

「はい」


 ローレンツは豊富な魔力を持っていたけれど、アイラの魔力は平民の平均的なものだったはず。彼女はどうだろうか。


 先ほど式で代表の言葉を言っていた彼女は表情を変えることなく教壇に向い、水晶に手を触れた。


 水晶は赤色の光を帯びている。火の属性のようね。光はそこまで強くなかった。下位貴族程度の魔力なのかもしれないわね。


 やはり私が感じたことは他の人も感じていたようだ。少し教室がざわついたけれど、彼女が公爵令嬢のため表立って口にすることはなかった。


「リア・ノーツ。君の番だよ」

「はい」


 先生に言われ、前に出る。


 教壇には鑑定球が置かれている。鑑定球に魔力を流すと色と光の強さで鑑定される仕組みになっている。


 私は鑑定球に手を乗せ魔力を流すと水色と白色が浮かび上がり、眩しい位に光を放ち、周りが響めいた。


「リアさん! 凄いわ!」


 誰かが大声で言った。先生はジッとその様子を見つめているだけだった。


 何だか怖い。

 後で呼ばれてしまうのかしら。


 私は一つの視線に気づいたが、知らないふりをする。


 クラス全員の鑑定が終わり、明日からの授業に備えて下校の時間となった。兄の元へ向かおうと思っていたけれど、先生に呼び止められたわ。


「リアさん。こちらへ」


 マーク先生は真面目な面持ちで私を呼んだ。


「リアさん、貴女は光属性の持ち主でしたね。今日は一人で帰るのですか?」

「いえ、三年に兄がおります。兄の授業が終わるのを待って一緒に帰るため図書室で待ち合わせをしています」

「では、向かいましょう」


 クラスメイトに『ごきげんよう』と挨拶をし、マーク先生と図書室へ向かった。


 図書室へ向かう途中、マーク先生は真剣な表情で話をする。


「いいですか、リアさん。これからは一人の行動は謹んで下さい。

 ここは学院であるし、現在は王族も通っているため、厳重な警備が敷かれているので安全ではありますが、移動中にもしもの事が起こり得ないとも限りません。明日からは従者を付けて貰いなさい」

「先生、そんなに注意しなくてはいけないのですか?」


 光属性持ちは狙われるほど危険なの? 前回は珍しい属性ではあったがそんな事は無かった。


「昔はそうでもありませんでしたが、十四年前から光属性の子供は一人も生まれていないのです。国中から婚姻目当てや治療目当てで攫われる可能性もあり、光属性の者は狙われやすいのです」


 あ、私の事ですね。


 私が自殺した事で何らかの抑制させる物が発生したのか。偶然ではあると思うけれど、もし、何らかの抑制させるものがあったのだとしたら……。


「ディルクお兄様!」


 授業を切り上げて迎えに来てくれたようで図書室前でディルクお兄様が立っていた。


 マーク先生は兄と話をして保護者の方に渡して下さいと手紙を渡していた。きっと今日の鑑定結果のことよね。


「お兄様、帰りましょう?」

「あぁ、そうだね。明日からはメイジーを供に付けよう」


 お兄様は既にそのことを知っていたのね。兄のエスコートで馬車に乗り込み、今日の入学式の様子や。クラスの様子を話した。


「リア、今日はどうだった? クラスは馴染めそう?」

「お兄様、クラスの方は一人気になる方がいますが、後はみなさん優しそうでした」

「気になる? 誰だい?」

「マリーナ・ラストール公爵令嬢です」

「ラストール公爵か。彼女が何かしてきた?」

「いえ、特には」

「何かあったらすぐに言うんだぞ?」

「はい」


 家に帰ると待ちかねていたように両親が玄関ホールに立っていた。


「お帰りなさい。さぁ、執務室に行きましょう」


 お母様の声で私たちはそのまま執務室へ向かった。父の横に母が座り、私と兄はテーブルを挟んでソファに座った。


「リア、学校はどうだったかしら?」

「まず、父上。これを」


 兄が母の言葉をさえぎるようにマーク先生から渡された手紙を父に渡し、父がその手紙に目を通している。


「お母様、私、Sクラスになりました。鑑定球にも触れたのですが、水と光の属性が出たんです。魔力量はお兄様と同じ位かそれより少し多いくらいでした」

「リア凄いわ。我が家も鼻が高いわね」


「あと、マーク先生からは移動の際に一人では歩かないように注意を受けました。学院内とはいえ一人では行動しないようにと。今は昔に比べて光属性は格段に減ったのですね」

「そうだね。年頃の娘となるとリアだけだからね」


 兄は心配そうにそっと私の頭を撫でた。


「明日からはメイジーか護衛のロイドを連れて行きなさい」


 お父様は腕を組み考えながらそう言うとニカッと笑った。


「はい。お父様、私、水魔法の練習がしたいです。過去に光魔法は習得を終えているのですが、水魔法は使えなかったので。きっと、学園では水魔法を練習せずに光魔法を練習する事になると思うのです。後、護身術も習いたいです」


「そうだね。狙われる可能性があるのなら習っておいた方がいいな。王家に嫁ぐならリアのことを守ってくれるだろう。なんならそちらの方のことも考えておいてもいいんじゃないか?」


 父なりに心配して言ってくれているのだろうが、それとこれは違うと思うの。私は頭の上に乗せている兄の手を取り、父に反論する。


「お父様、嫌です。お兄様も目になさっているでしょう? ライアン殿下を狙う女の闘い。それに王族は側妃も娶るのですよ? 私には無理です。


 誰かと夫を共有したいと思いません。お父様はお母様を誰かと共有したいですか? それに私が結婚するのは昔からお兄様と決まっているのですぅ」


 私は態とらしくお兄様の腕にしがみつくとお兄様は満更ではなさそうにニコニコと笑っている。


「リア、そこはお父様と言ってくれないのかい?」

「お父様にはお母様がいますもの。それにお父様は王家に嫁がせよう、嫁がせようとしているではありませんか。私は爵位が無くとも我が家のような家族愛に溢れた家庭を築きたいのです。前世からの願いです」


 前世の事は言ってはいけないとは思うけれど、やはり王族と婚姻するくらいならギリギリまで抵抗したい。


 兄の腕にこれでもかというくらいぎゅっと抱きついてみる。兄は上機嫌だが、父も母も複雑そうだ。


「まぁ、確かにお茶会や学院での王子妃候補者達の争いは俺から見てもエゲツないと思うよ。あんな中にリアを投げ入れるのは反対ですね」


 兄の助け船もあって父達はそれ以上何も言わなかった。心配しているのだとは思う。王家の庇護に入れば安心して暮らせるのは分かってはいるの。


 でも、今世こそは私だけを愛し、愛されたいと思ってしまう。


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