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⭐︎お詫び⭐︎
本日、いきなりエピローグぶっ込んでおりました。皆様のご指摘で気づきました!
ゴメンナサイ!
私達は会場に着き、一番最後に会場入りする。
「カルサル公爵家、ノーツ侯爵令嬢入場」
一番最後の入場に私は震えた。緊張し過ぎて口から心臓が出そう。私はニール様の両親の後ろに続き、ニール様と歩く。流石公爵家、優雅に入場する様は先日の舞踏会とはまた違う感じがした。
物珍しさや興味津々といった視線の中に他とは違った視線を感じ、その方向に目が向く。
……アイツだわ。
アイラと一緒に居る。私は心が硬くなり、無意識にニール様の腕をぎゅっと掴んでしまっていたようだ。
「リア、他の男を見つめるのは良くないな。私を嫉妬させようとしているのかい。後でお仕置きが必要だな」
「ニ、ニール様っ、違います。ラストール公爵がこちらを見ていたのです」
「ふふふ。誰だろうとリアの視線を向けていいのは私だけだ」
そう言って私の頬にキスをする。
「っ、ニール様。皆の前です」
ニール様は意地悪な顔をしながらギュッと腰に手を回してエスコートする。
キャッとどこかで令嬢の声が聞こえてくる。恥ずかしくて顔に熱が集まる。
「こらっ、ニール、その辺にしておきなさい。リアちゃんが困っているだろう? 全く、誰に似たんだか。嫉妬深くて困るな」
お義父様が助け船を出してくれた。良かった。
「さあ、挨拶をしなくてはね」
お義母様の言葉で私達はそのまま陛下への挨拶へ向かった。やはり公爵家は一番目なのね。私達の後ろにラストール公爵家がいて、数家後ろにお父様達がいた。
先ほどまでの熱は下がり、ニール様と離れないようにぴたりと体を沿わせた。
陛下へ挨拶を終えてニール様とダンスをするために移動しようとした時、声が聞こえた。
「……ィス」
呼ばれたような気がして振り向くと、そこにはラストール公爵が私を見ていた。
「さぁ、リア。踊ろう?」
ニール様に手を引かれ、ホールの中央まで歩く。音楽と共にダンスを始める。
「リア、早く結婚したい。父も母もリアの事を本当の娘のように気に入ってくれて良かった」
私は先程聞こえた声に不安を滲ませる。
「ニール様、さっきラストール公爵様は私を見てリディスと呟いたように聞こえたの。私は全然似てないのに」
「リア、前世はリディスだから仕草や雰囲気は似ているのかも知れない。だが気にしないのが一番。私が付いている」
そしてダンスが終わると、私やニール様と繋がりを持ちたい貴族が話しかけてくる。
私も、私も、と多くの貴族達がいたのだが、サッと人の波が割れる。不思議に思っていると、私達の前に現れたのはアイラ・ラストールだった。
「私、アイラ・ラストールですわ。宜しくね。ニール・カルサル公爵子息、並びにリア・ノーツ侯爵令嬢」
「ラストール公爵夫人、宜しくお願いします」
アイラは足元から頭の先まで私を値踏みするように見てくる。
不快極まりない。
やはりアイラはどれだけ経とうともアイラだったわ。反対にニール様には笑みを浮かべ胸を寄せ色気でジワリと距離を詰めてきた。
若い燕に、とでも思っているのかもしれない。
「貴女がマリーナを修道院に送ったのよね? こんなチンクシャがマリーナを陥れたなんてマリーナが可哀想。ニールさん、そこのチンクシャよりうちの娘の方がいいわよ。そう思わない?」
リアになって初対面だというのに彼女は言葉をオブラートに包むことなく攻撃してきた。
やはり公爵夫人になる為の勉強は身に付かなかったようだ。
「名前で呼ぶのを許した覚えはないですよ夫人。私にとってリアは勿体無いほどの素晴らしい令嬢です。巡り会えた事に感謝したいくらいです」
私達は仲睦まじい姿を見せつけるようにニール様は私に微笑み答えた。
「マリーナ様は修道院に行かれたのですか? 私は存じ上げませんでした。私はマリーナ様はお茶会ではしゃぎ過ぎて領地でご静養なさるとラストール閣下からの謝罪のお手紙をいただきましたのに」
アイラの顔が真っ赤に変わっていく。年を取っても煽り耐性は低いのね。
「なによっ! たかが侯爵令嬢の分際で! 光属性持ちってだけでチヤホヤされているんだから身を弁えなさい!!」
アイラの本性が出た。
そんなに娘を王子妃にさせたかったのね。王妃の座まで狙っていたのかもしれない。
今にも飛び掛かってきそうなアイラの状態に周りの貴族達も冷ややかな目で見ている。
ニール様は私を庇うように前に出ようとしたが、私は大丈夫とニール様の袖をそっと掴みニコリと微笑んだ。
陛下や王妃陛下、殿下、大臣達に挨拶を終えたローレンツは何事かとこちらに来てアイラに事情を聞いている。
アラン殿下もローレンツの後ろからやってきた。少しにやけた顔のアラン殿下、絶対これは面白くなりそうだなって来たんじゃないかしら?
今思ったのだけれど、ローレンツは陛下に挨拶していたのにアイラはしていない。
貴族としてどうかと思うわ。
陛下への挨拶を終えたからとローレンツはアイラを連れて帰ろうとしているが、アイラはなおも私に食ってかかる。
「マリーナこそがライアン殿下に相応しいのよ! 貴女が王子妃になるはずだったマリーナの邪魔をしたのよ! 責任を取りなさい!」
アイラは持っていた扇子を振り上げ、私の頬をパンッと勢いよく叩いた。これにはローレンツも周りの貴族達も驚き、響めきが起こった。
アイラはローレンツに無理矢理に腕を掴まれ、引きずられるように会場を出ようとする。
「お待ちください、ラストール閣下。アイラ夫人に一言だけ宜しいでしょうか?」
「……ああ、構わない。なんだ?」
彼は立ち止まり、私を不審な眼で見ている。
私はアイラに歩み寄り、彼女の耳元で囁いた。
「マリーナ嬢が王妃になるのは無理ですわ。だって資格がない。マリーナ嬢はキール子爵令嬢だもの」
「!!!!」
私はそう告げ満面の微笑みを浮かべながらニール様の元に戻った。
アイラは目を大きく見開き、奇声を上げ、暴れようとしたが、ニール様がすぐに風の魔法を使い、アイラの声を奪い気絶させる。
倒れ込んだアイラは駆け寄った騎士達にそのまま担がれて会場の外へと運ばれて行った。
ローレンツも騒がせて申し訳ないと会場の人々に謝罪した後、アイラを追うように会場を出て行ってしまった。
「リア、大丈夫ですか? あぁ、頬が赤く腫れて少し切れています」
「ニール様、私は大丈夫です。この通り」
ヒールを唱えて即座に治療する。
「治療出来るからと言っても女の子の顔を怪我させるのは駄目だ。リア嬢、大丈夫だったかい?」
「アラン殿下お気遣い有難う御座います。私は問題ありません。会場の皆様もお騒がせして申し訳ありませんでした」
私が礼をすると会場はまた元のような雰囲気となり始めホッとする。
「ところでリア嬢、最後にラストール夫人に何と言って油を注いだんだい? 発狂寸前だったよね」
アラン殿下は面白そうに聞いてきた。
「ふふっ、それは秘密ですわ。すぐに解るとは思いますが」
「まあいいさ。これでラストール夫人は生涯領地から出られなくなったしな」
アラン殿下は素敵な笑顔で妃様の元へ戻っていった。アイラにせよ、マリーナにせよ問題を起こす彼女達には何か思うところがあったのだろう。
「リアさん、大丈夫だった? 心配したわ」
「ええ、お騒がせしてもうしわけありませんでした」
ニール様の両親が私達の元にやってきた。
「うちから抗議を出しておくわ。リアさんは狙われる身でもあるのだし、先にニールと帰ったほうがいいわ」
お義母様が私の頬を撫でながら心配してくれている。
「リア、大丈夫か!?」
父達もすぐに駆けつけてくれた。
「お父様、ご心配をおかけしました」
「これ以上何かあっては困る。挨拶も済んだし、今日はこのまま帰ろう」
「はい」
私達は身の安全を優先するという理由で陛下に謝罪した後、早々に邸に帰る事にした。




