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高位貴族のみが参加する舞踏会の日となった。
平日は仕事、休日はニール様とデートや結婚式の打ち合わせで毎日が駆け足で過ぎていった。私達は結婚式の後から王都内の一軒家に住む事になっている。
ニール様は伯爵位を持っているが、領地は持っていないので王都の家で十分なの。使用人も五人ほどの予定で本当に最低限だと思う。
メイジーは私に付いて来てくれることになった。
感謝しかないわ。
因みに、前世では私に侍女はおらず、ドレスを着る以外は自分で全て身支度をしていたからメイジーがいてくれるだけでも嬉しくて仕方がない。
王家からは王城内の貴族コテージに住んで欲しいと要望が出たらしいけれど、ニール様は二人の愛の巣を他の人に踏み入れられたくないと拒んだ。
もちろん家の方には魔石で結界を張り、がっちりと侵入者対策もする。護衛も雇うしね。
そして他の家とは違い、私は結婚しても生涯働き続けて欲しいと国から要望がある。
これは光属性持ちの運命よね。
ただでさえ十四年間光属性持ちが生まれなくて光魔法を使う人が減り、治療を待つ人が大勢いる。
「リアお嬢様、準備ができました」
そう言って準備をしてくれた公爵家の侍女さん達。本日はニール様のお母様が公爵家総力を挙げての嫁磨きをしてくれました。
お義母様曰く、『こんな根暗魔法マニアのボサボサ頭で女の子に興味の欠片もない息子を変えてくれた勇者のような婚約者を逃してなるものか』ということらしい。
お義父様もお義母様もとても優しくて素敵な家庭だと思う。
私の家族はもう会場にいるかしら。
今日も兄は殿下の側近として警護を兼ねて先に会場に入っているとは聞いた。
本来なら上位貴族の警護に私達も駆り出される側なのだが、公爵家子息の婚約者お披露目や挨拶を兼ねているらしく、私達は招待客として参加する。
有事の際はよろしくねという感じだろう。
「リア、今日も素敵だ。よし、私の部屋に行こう。今日の舞踏会は参加を止めよう。誰にも見せたくない」
エスコートの手を取り、邸の中へ戻ろうとするニール様の前にお義母様が笑顔で立ちはだかった。
「ニールが行かないなら私達と一緒に行きましょうね。リアさん」
渋々ニール様はお義母様に言われて私をエスコートする。馬車の中ではお義母様と話をしていたのだけれど、ニール様がボサボサ頭の頃は誰も見向きもせず、避けられ、嫌味を言われるなど散々な目に遭っていたらしい。
髪型を変え、顔を見せるようになった途端に令嬢から追いかけ回されるようになったのだとか。
今回はニールの愛人になるべく擦り寄る令嬢がいるので気をつけるように言われた。もちろん私自身の身の危険もあるから離れないようにと。




