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高位貴族となるとローレンツ達が来るのね。アイラは表向きには療養すると領地に下がったが、修道院で反省し令嬢としてまた参加するのだろうか?
そんな事を考えつつベッドへダイブして翌朝メイジーに起こされる。
翌朝からは変わらずに出勤。ニール様も変わらずに仕事をしている。公私混同する人ではないらしい。けれど、変わったのは周りの態度かな。魔導師塔や医務室へと来る人達に婚約おめでとうと声を掛けてくれるようになった。
そしてモーラ医務官は孫がようやく幸せになったと我事のように喜んでくれたの。
午後一番で泣きそうな顔で医務室に駆け込んできたのはサウラン副団長。
「なんで、リアちゃん! ニールの物になったの?」
「私は物ではないですよ。サウラン副団長」
「きっとニールがリアちゃんを上司の権限で手籠に、そして婚約者になってしまったんだよね。怖かったね」
これにはモーラ医務官も呆れている。
「いえ、ニール師団長はそんな事はしていません。むしろ私が気のないニール師団長に迫って婚約者にしたが正解です」
「リア君、その言い方だとアベルが勘違いしている。まぁ、いいけれど」
「リアちゃんってそんなに積極的だったんだ。俺ならいつでも迫ってくれても良かったのに。ああ、リアちゃんがニールの嫁になるなんて。俺、ショックで立ち直れない」
悲しみに打ちひしがれているサウラン副団長の後ろから声が聞こえる。
「そうですね。リアにならいくらでも迫られたいですね」
その声に振り向くとニール師団長が書類を持って立っていた。
「アベル、諦めろ。リアの崇高な愛(魔石)は私に贈られたのだから」
モーラ医務官はこの微妙に噛み合っていない話のやり取りに匙を投げたようだ。
「リアちゃん、いつでも俺に頼ってくれていいからね」
そう言って手を取ろうとするが、ニール師団長にパシリと手を叩かれる。
「アベル、リアの仕事を邪魔しない。行くぞ。ではリア、しっかり仕事をこなすように」
そう言ってニール師団長はサウラン副団長を連れて医務室から出て行ってしまった。モーラ医務官からはあんまりアベルを揶揄うなと言われた。