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 カルサル師団長の執務室を出た後、どこかに向かっているようで私はアラン殿下の後に付いて歩いている。


 やはりライアン殿下と兄弟だけあってとても格好がいい。この美貌では令嬢達も放ってはおかないと思う。


 確かアラン殿下は既に婚姻されている。記憶によれば、五年前位に婚姻したはずだ。


 私はまだ小さかったし、興味が無かったせいか国中でお祝いしたなってくらいの記憶しかない。


 アラン殿下は歩きながら聞いてきた。


「リア嬢、君は光魔法が使えるのだったね。これから各騎士団の団長、副団長と顔合わせする。


 明日から午前中はカルサルの補助を、午後はカルサル指導の元、魔法の練習をすると聞いている。


 だが、光魔法が使える者が少ないため、騎士達の怪我の治療が間に合っていない状況なんだ。魔法練習は騎士団の治療を兼ねていると思ってくれ。君は欠損も治せるのかな?」


「欠損を治す事は可能だと思います。ですが、実際に欠損患者と接した事が無いため実践は出来ていません。


 それに欠損を治すまでになると魔力消費が激しく、大勢を治療することは難しいでしょう。一日三人程度が限度かと。殿下は治したい希望の方がいらっしゃるのですか?」


「あぁ、十分だよ。最初に治療してほしい者は私の師匠である元第一騎士団団長サイモンだ。


 彼は左足を魔獣討伐で無くして以来、団長職を降りて後進育成に努めて貰っているんだ。彼以外にも怪我で勇退した騎士は多い。彼等を優先的に治療して貰いたい。


 騎士団は常に怪我人で人員不足でね。光魔法の術者が希少な今、怪我しても治療されないという不安から成り手も減って困っていたんだ」


 確かに光魔法の術者は少ない上、上位貴族並みの魔力量を持つ人は数人程度。


 現在、怪我人の治療で欠損を治す事が出来るのは、教会の総司祭様と国を代表する治療師であるアニマ様くらいだったかな。


 勿論魔力が足りなくても何度も治療を続けて少しずつ欠損部位を減らしていく方法で完治させる事はできるのだが、怪我人も多く、欠損した者の治療は後回しになるのが現状なのだ。


 アラン殿下と話をしながら着いたのは騎士団棟。


 鍛錬場が横に併設されていて大勢の騎士達が訓練を行っている。聞いた話では鍛錬場の見学スペースに令嬢達が群がっているのだとか。


 私も筋肉美を見ながらキャッキャしてみたい気もする。


 騎士団棟の中に入るとすぐに総本部と書かれたプレートが頭上で輝いている。


「リア嬢、こっちだ。まずは挨拶だ」


 アラン殿下は迷うことなく棟の奥にある会議室の前で立ち止まった。『入るぞ』の声でアラン殿下が部屋に入ると、そこには二十人位の人々が殿下の姿を見て一斉に立ち上がり、礼を執っている。


 こ、怖いわ。


 国中の猛者が一斉に礼をしているんだもの。


 アラン殿下は手を挙げて騎士達に座るように指示をする。そしてこともあろうか、アラン殿下は私を彼らの前に押し出した。


「彼女が新しくカルサルの元に入った王宮魔導師見習いのリア・ノーツ侯爵令嬢だ。皆も話を聞いて知っているだろうが、彼女は光魔法の使い手だ。


 午前中は魔導師として、午後は治療師として騎士団に来られるようにカルサルに()()()した。


 まずは怪我で勇退した者達の治療を優先的に行っていく予定だ。分かっていると思うが、リア嬢はまだ十四歳だ。


 もちろん婚約者もいない。良からぬ虫が付かぬように気をつける事。良いな。リア嬢、挨拶を」


 ここに来るまでの殿下と団長達の前にいる殿下の雰囲気は一瞬にして変わった。アラン殿下はこれが普段なのだろう。


 でも私にとっては騎士団長や副団長が揃っている場なんて初めてで、みんなの視線が私に集まっている。その視線だけで足はガクガク、手の平は汗をかいている。


「り、リア・ノーツです。王宮魔導師時々治療師を目指しています。未熟な面も多々ある、と、は思いますが、い、一生懸命頑張りますので宜しくお願いしましゅっ」


 緊張して震える声でなんとか自己紹介を終えた。心臓は今にも破裂しそうなほど高鳴り、怖かった。騎士団長達は頷き、歓迎してくれている。


「リア・ノーツ嬢、ようこそ。私は第一騎士団団長ホセ・マードラだ。我ら騎士団は日々怪我との戦いだ。光魔法が使える者を首を長くして待っていた。


 王宮魔導師兼治療師として王宮に入られたことを騎士団一同感謝する。君の役割は決して軽いものではないが、これから宜しく頼む」


 代表してホセ団長が挨拶してくれた。


「他、何かあるか?」


 アラン殿下がそう言うと、一人の若い男の人が手を挙げた。


「俺、アベル・サウラン! 二十一歳。第五騎士団副団長。彼女募集中! リアちゃんよろしく」

 そう言って立ち上がったアベル副団長。何だか大型のワンコみたいな人だわ。


「リア嬢には追々自己紹介をしてくれ。今日はまだ寄る所がある。明日から彼女は魔導師棟で魔法訓練を開始、午後から第一騎士団治療室に配属する事になる。以上だ」


 アラン殿下の言葉と共に団長、副団長達が立ち上がり礼を執った。凄い。団長達の一糸乱れぬ礼にとっても興奮してしまう。


 この姿を見て制服愛好家に目覚めてしまうかもしれない。


「リア嬢、では退室する」

「はい」


 因みに兄から聞いた話では第一騎士団から第十騎士団まであって第一騎士団は陛下直属、第二~五騎士団は王族や王宮の護衛や警備。主に貴族からなるエリート集団なのだとか。


 第三騎士団だけは女騎士のみで編成しているらしい。後は衛兵と呼ばれる人達がいる。彼らは平民で構成されていて王都や周辺の街の警備などを担当している。



 私が団長達の姿を見て興奮していたのをアラン殿下は苦笑しながら治療室まで案内してくれた。


「ここが第一騎士団の治療室だ。医務官のモーラは長年ここで治療を行っているから何でも聞いてみると良い」


 そう言って紹介されたのは白髪の優しげなおじいちゃんといった感じの人だった。


「リア・ノーツです。明日の午後から宜しくお願いします」

「ワシがここの医務官を務めているモーラだ。宜しくな、お嬢ちゃん。丁度ワシの孫くらいの年齢なのに王宮で働くとは優秀なんだの」


 私はモーラ医務官から部屋の説明を受けた。一通り説明を受けていると殿下は執務に戻ると言って戻っていった。


「色々巡って疲れただろう? ちと年寄りに付き合っておくれ」


 そう言ってモーラ医務官はお茶を用意してくれた。お茶を飲みながらモーラ医務官と治療室の話や雑談をし、帰宅することになった。


「気を付けて帰るんだよ」

「はい。では失礼します」


 医務室を出ると、そこには騎士の一人が待機しており、家までしっかりと送り届けられた。


 理由を聞くと、まだ攻撃魔法も使えない光魔法の魔導師見習いの少女は保護の対象でもあるとのことだ。何だか申し訳ない。


 早く王宮魔導師になれるように頑張るわ。

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