森の嘆き
そこはかつて動物たちがひっそりと暮らす森だった
魔物や魔素などはなくただただ綺麗な緑と幻想的な花々が生い茂る場所
来るものを惑わす霧のおかげで人は立ち寄りにくい天然の迷宮
人が土地を開発することで行き場を失った生き物たち行き着く最後のオアシスであった
そんな場所が今では魔物が多く生息し入ったものは二度と帰ってこないと言われるほどの魔窟と化している
何を隠そうこれもまた人間の業である
ある貴族の女がとある希少な動物の毛皮を欲しがり魔法士や傭兵達が生息地を探しあてどんどん動物を狩って行ってしまった
この森にも被害は及び、魔法士達の魔法により霧は晴れ惑わされることなく森を進み動物たちの住処を荒らしていった
目当ての動物はもちろんその他の絶滅されたとされていた動物たちも見つけるとさらに狩りを行った
ついには中枢に生えていた樹木からも枝や根を切り搾取していった
辺りは動物たちの死骸が溢れていた
そのことに樹木は怒り悲しんだ樹木は動物たちを養分として吸収し無念を糧に森を拡大していった
霧をより濃く何人たりともこの森に入れぬよう、そして入ってきたものを追い出すために動物たちの怨念、瘴気から魔物が生まれた
これにより再度狩りをしようとしていたもの達は二度とこの森から帰ってくることは無かった
このことから貴族達は諦め管理もできないためこの千年樹の森を迷宮入りとした
こうしてこの森には近づくものは居なくなるはずだった
だが、味を占めていた貴族の一部が研究を続け世代を超えて魔道具を完成させていた
その貴族は霧の中でも迷わない魔道具を開発しその事業を独占していた
そうして他の貴族たちには内緒でこの森の資源を独占しようとし秘密裏に狩りが始まった
その際に傭兵だけでなく近場の盗賊たちも従え狩りは行われた
かつての狩りから生き延びた動物達、植物を手当り次第狩り尽くした
そのことで森の怒りに触れるとも知らずに……
傷だらけの熊は暴れる
魔物のテリトリーに入り手当り次第魔物を切り裂く
その腕は血に塗れ目は紅く片目は潰れていた
ガァルル――
森は一部始終を見ていた
狩人達により目の前で小熊が攫われるところを……
森は嘆く、二度と同じ被害が出らぬようにとしていたはずだったのに
熊は瘴気にあてられ徐々に姿が変貌していく
爪はより凶悪に、体も一回り大きくなり背中から骨が突き出していく
目はより鋭く視界に映るものは全ては敵だと思い切り裂いていく
そして熊は血の涙を流しながら進む
更なる敵を殲滅するために――