私の中のルール
久しぶりの執筆なので温かな目で許してください(土下座)
「姫様……これは……これまでの事は全て貴女がした事ですか……?」
穴という穴から血を垂れ流し、事切れたお父様の顔を小さな足で踏み付けながらケラケラと嗤う五歳児の私に『さいしょう』と呼ばれている偉いおじさんが問いかけてくる。
「そうだよ?いっぱい居るお母様達も、お兄様達もお姉様達も、全部わたしがしたの!!すごいでしょ!!きゃははっ!!」
「何故こんな事を……」
『さいしょう』のおじさんはまた問うてくる。なぜそんな事を聞きたがるか分からない。私は嗤いながら首を傾げ、お父様の顔を強く踏みにじる。
「だってお父様が戦争しようって言ってるんだよ?そしたら自分じゃない人達が代わりに戦争で死んじゃうかもしれないんだよ?戦争っていっぱい人が死んじゃうって本当のお母様が言ってたから、代わりにお父様達が死ねば少ない人数で話がおわるでしょ?」
おじさんは顔を真っ青にしながら口を手で塞いでいる。私のじゃまをするなら、このおじさんも死んでもらわなきゃ。
「アンネ様……本当にそれだけですか?」
ああ、このおじさんは分かってくれたみたいだ……殺さないでおこう。頭の良い人は嫌いじゃ無い。
「おかしいよね?私の本当のお母様を殺した女共。その血を引くお兄様やお姉様達。だから私分かっちゃったの。私もみんな殺しちゃっても良いって!!ふふっ、『さいしょう』のおじさん、わたしを呼ぶときは『じょうおうさま』って呼んでね?おじさんなら分かるでしょ?」
「……畏まりました、アンネ女王様」
おじさんに向けていた鉄砲を持った腕をおろし、ケラケラとお父様の顔が分からなくなるまで私は踏み付け続けた。
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それから十年の時が経った。お父様達の件は流行り病として宰相のおじさん、ハーネスが片付けてくれた。そして私が若干五歳でこの国の女王として君臨し、十年もの間私の好きな様に行動し続けている。
その好きな行動を手助けしてくれている『あんさつしゃ』さん。私が心から大切に想っている大事な人。私はこの人の子が産みたい。この人以外には考えられない程、私は『あんさつしゃ』さんを愛している。
……だけど『あんさつしゃ』さんは私を受け入れない。だって、この人の両親を殺したのは私なのだから。なのに、この人は私に何も言わず従順に私にとって邪魔な人を殺していく影となった。
「ねぇ、『あんさつしゃ』さん。どうして私を殺さないの?どうして私の想いを受け取ってくれないの?それが駄目なら……貴方になら私、殺されても良いよ?」
「……アンネ様、俺は貴女の影です。……それに俺達は決して結ばれてはいけない関係です」
私はその言葉をケラケラと嗤いながら、『あんさつしゃ』さんの頬を撫でる。
白い肌、透ける様な金の髪、澄み渡る青い目、私とそっくりな顔をした男性。そう、私達は兄妹だ。血は半分しか繋がってないが、間違いなく私の兄だ。
幼い頃、お母様以外で私に唯一優しかったお兄様。だから私はお兄様だけは殺さなかった。お兄様のお母様は殺したが、お兄様は私を恨まなかった。寧ろ、私のお母様を奪ってしまった事に自責の念まで抱く優しいお兄様。自分も死んだ事にして、私の手足となり行動するお兄様。
そんなもの捨ててしまえ。世の中がいけない事だと言っても、私がルールだ。私は私のルールで生きていく、今もこれからも。
「さあ、選んで?私を殺すか、受け入れて一緒に堕ちていくか」
「アンネ……」
私とそっくりな顔が泣きそうに歪む。その瞳の中には歪んだ笑みを浮かべ、手を伸ばす私がいる。涙を流しながらゆっくりとその手を『あんさつしゃ』、いや……お兄様が絡めとった。
私に世界の誰かが決めたルールなど知らない。私は唯お兄様と共に堕ちていき、この世界で生きていきたいのだ。
この始まりの苦しみが今では私の大好物なの。
ありがとうございました!!