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謝罪、そして進捗のこと

本業が忙しく、なかなか進みません。

お読みいただいている方には、気長に構えていただきますようお願い申し上げます。

「貴女の人生を台無しにして、本当にごめんなさい」


 そう言って頭を下げる王妃に、花乃子は慌てて「頭を上げてください」と懇願した。ちょっと天然の入った、ほわわんとした女性だと思っていたが、さすがに王族らしい威厳がある。


「本当なら陛下がキチンと謝るべきなのに、ここに来るのを嫌がって。ホント、意気地の無い人で」


 王も王太子も、初っ端で説教をかました時に揃って頭を下げているのを、花乃子はしっかりと見ている。考えてみれば、彼らもよく頭を下げたものだと、今更ながら思う。


「いえ、私も最初にガンガン怒りましたから、陛下たちを怯えさせたかも……」

「それでもよ。でも、わたくしも聖女の召喚を簡単に考えていた部分があったから同罪だわね」

「そんな……」

「ヨウ・カーンが、聖女の召喚を貴女で最後にすると宣言して、陛下も了承したわ。今後は自分たちで瘴気を浄化する方法を構築すると言っているの。貴女を元の世界に戻すのは難しいらしいし、お詫びにはならないけれど、わたくしたちが反省をしなければならないことは心に刻んだわ。今後は、貴女の望みをできるだけ叶えることで、せめてものお詫びにさせてもらえたらと思っているのよ」


 そう言って、王妃は両手で花乃子の手を握った。その手の温かさや声、表情からも真摯な気持ちが十二分に伝わってきた。と、王妃は突然、顔を近づけると、こそっと告げてきた。


「ついでに、ズンダーのことも考えてくれると嬉しいわ」


 花乃子は「は?」と言ってしまった。そういえば……とじわじわ顔が熱くなっていくのを感じる。と、王妃はいたずらっぽい笑顔で「自慢の従兄なのよ」と付け加えたので、「うぇっ!?」と変な声が出てしまった。花乃子とて、王家に嫁げる身分の人の従兄といったら、やはりそれなりの階級だろう……ぐらいの知識はある。


「あのー……そのような方に、私のような年をくった異世界の平民はいかがなものかと思うんですけど……」

「あら……ズンダーはダメ?」

「そういうことではなくー」


 何故か二人して顔を近づけ、内緒話のようにこそこそしゃべっているので、少し離れたドアの前に立っている騎士団長には聞こえていないと思うが、何となく居たたまれない。元カレと別れてから、“そういう”方面とは全く無縁で生きてきて、感度が完全に鈍っているのだ。あるいは、枯れているというべきか。

 だが、騎士団長が信頼できる人柄だということはわかっているし、エスコートなどで触れられることに嫌悪感は全く無いことは確かである。指への口付けは、心臓に悪かったが。


「私には、勿体無さすぎますよ」

「あら、そんなことなくてよ。二人が並ぶと、お似合いですもの」


 王妃はにこにこ笑いながら「だから、考えてみて」と告げると、姿勢を戻してティーカップを持ち上げた。この話題は、これまでということだろう。花乃子も切り替えて、その後は和やかに過ごした。

 そのおかげだろうか、その夜は涙にくれることなく眠れたのだった。

 ただ、それ以降、騎士団長のことを心のどこかで意識してしまうという、小さな変化もあった。


  ◇◇◇


 花乃子に、魔法省から瘴気の浄化の方法を探る手助けをしてほしいという依頼が来たのは、そのすぐ後だった。正確には、筆頭のヨウ・カーンからの依頼になる。聖女かも知れないが、魔力の類は一切、持ち合わせていない花乃子に「何故?」と思ったら、聖女について調べた時に作った資料の作成能力を買われてだった。

 パソコンがあればサクサク作れるのに……と思いつつ手書きにしたが、表などを駆使し「わかりやすさ」を重視したので、すごいと騒ぎになったらしい。手伝ってくれたウィーロくんも驚いていたが、花乃子に言わせれば、こちらの世界の書類は出納表を除けば著述式のものばかりで、ややこしすぎるのだ。


 そんな時、花乃子はたまたま魔法の術式を文字にしたものを見る機会があった。それを見た第一印象が「コンピュータプログラムみたいだな」だった。魔法文字というのか、一般で使われている文字とは異なるので全く読めないのだが、好奇心が湧いてウィーロくんの手が空いた時に読んでもらうと、やはりプログラムに近い。筆頭に確かめると、聖女召喚の術式は莫大な行数ということだが、内容によってまとめればチャート化できるのではないか。

 聖女が存在するだけで瘴気を浄化できるというのも納得し難かった花乃子は、寧ろ召喚が副産物なのではないかという仮説を立てた。それを筆頭に話すと、初めは「まさか」と笑っていたが、時間は掛かると思うが分析させてくれないかと頼むと、「そこまで仰るなら」と術式を用意しようと言ってくれた。

 とはいえ、大部分が魔法陣に組み込まれているので、まずはそれを文字化しなければならない。ということで、解析が得意な数人でプロジェクトチームを編成して、その作業を開始した。


 この段階では、術式の文字が読めない花乃子の出番はない。魔法省だけでなく、一般的な文官用の書式の作成を手伝ったり、王妃との茶会に招かれたり、その合間に非番の騎士団長にデートに誘われたりしていたので、忙しいといえば忙しい日々を送っていた。

さて、どんなデートをさせましょうか。

というより、いつ完結できるんだろう……(汗)。

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