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王妃最強?のこと

主人公、女性には強く出られません。同性は味方です。

 今回のお茶会は、あくまで王妃の私的なものだということで、こじんまりとした客間に案内された。騎士団長は、花乃子を送り届けると、そのまま入り口に立っている。エスコートは終わりで警備に当たるらしい。騎士団長ともあろう人間が他に仕事が無いわけがないのにと、甚だ疑問である。


「まあああ! ようこそ、聖女様!」


 少女がそのまま大人になったような雰囲気の王妃は、花乃子の顔を見るなり立ち上がり、小走りに近づいてきた。既に、テンションがかなり高い。それに若干、引き気味になったおかげで、花乃子の緊張はかなりほぐれた。

「本日は、お招きありがとうございます。ですが、わたくしはもともと平民でございます。どうぞカノコとお呼び捨てくださいませ」

 侍女さんに教わり、合格点をもらっていたカーテシーで挨拶したが、目をキラキラさせた王妃は「そんなことは良いから」と花乃子の腕に自分の腕を絡ませ、引っ張っていって席に着かせる。


「じゃあ、カノコさん……で良いわよね? ずっとお会いしたかったのよ。今日はいろいろお話をさせてね」


 ほわわんと微笑む王妃様に、花乃子も微笑み返した。

 そして、香りの良い紅茶と美味しい焼き菓子を楽しみながら、暫しおしゃべりに興じる。結婚もせず、仕事人間の花乃子の生き方が、王妃には不思議で仕方がないようだ。花乃子は苦笑しながら、自分の生き方はどちらかといえばマイノリティだからと説明する。

 と、王妃が「そうそう」と思い出したように言い出した。


「カノコさんって、腹筋が男の方みたいに割れてるってホント?」


 唐突な話題に、花乃子は危うくお茶を噴きだしかけ、入り口の方からは「ぶふぉお!」という音が聞こえた。侍女さんたちも、ちょっと焦っている。腹筋の話は侍女ネットワークが情報源なのだろうが、なぜに王妃様に伝わっているのか。


「えーと……どちらでそんなことを……」

「だって、あなたの侍女たちが聖女様はコルセットが要らないぐらいだって騒いでいたんですものぉ。どんなお仕事をしてらしたの? やっぱり騎士のようなことを?」

「いえいえ、仕事は、いわゆる文官のようなものです。体を鍛えるのは、健康維持とスタイル保持のためと、多少の気晴らしで。腹筋は……まあ、少しばかり割れてますが、日頃、訓練しているような、あちらに立っ……しゃがみこんでいる方のようなことはございません」


 侍女さんたちに身の回りの世話をしてもらうということは、すっぽんぽんも見られるということではあるし(着替えしかり、入浴しかり)、その時に割と筋肉質の体型についてはキャーキャー言われた。それで、筋トレやくびれ作りのための体操を教えると約束したが、まさかあちこちに言いふらしていたとは。しかも、王妃様にまで知られているし。

 そして、騎士団長は何故、顔を覆ってしゃがみこんでいるのか。


 実は10年ほど前、花乃子は元カレとの別れや仕事のストレスで太っていた。そんな折、下着を買いに行った店の試着ルームの鏡に映った全身のたるみ具合にショックを受け、一念発起して、ブートなんちゃらに入隊し、半年で8キロほど絞ったのだ。格闘技の動きも入っていたのも、かなりストレス解消になった。

 その後も、地道に体幹トレは続けていたし、食べるものに気を遣ったり、エステに行ったりして、現在のスタイルと健康状態は20代の頃より上かも?だったりする。


 ……という話を、かいつまんですると、マアンジュ王妃は「すごいわー」と感動していた。侍女さんたちも、尊敬のまなざしでコクコクとうなずいている。似た者主従か。


「わたくしにもできるかしら?」


 王妃の言葉に、花乃子だけでなく侍女さんたちも固まった。


  ◇◇◇


 王妃様の筋トレについては、「陛下の許可がいただけたら……」とか何とかお茶を濁し、蒸し返されないように他の話題にシフトして、そのまま逃げ切った。万が一、ケガでもしたら国王に恨まれる。確信はないが、花乃子はそう思ったのだ。その勘が正しかったことは、戻ってから侍女さんたちと話して判明した。国王は、王妃にベタ惚れの人であった。


 お茶会の後、花乃子は本格的に過去の聖女について調べ始めた。もちろん、元の世界に戻る方法が無いかを探るためである。幸い、国王はじめ重鎮たちが協力的で、ヨウ・カーンからは代々の筆頭魔術師に伝わる資料も借り受けることができた上、王宮の図書室にある資料についても無制限で閲覧が可能になった。

「私を追い返せたら、別の人を召喚できるとか思ってないでしょうねぇ」

 ちょっと意地悪く言ってみると、ヨウ・カーンはぶんぶんと首を振り(アラフォーがやっても、あんまりかわいくない)、「それはないです」と断言した。

「恥ずかしながら、カノコ殿に言われて、我々もようやく目が覚めたのです」

「んーそう? 取り敢えず信じとくわ」

 その言葉に嘘はないようで、ヨウ・カーンは花乃子を補助するため、次期筆頭魔術師の候補の一人というウィーロ・オーという20代の青年を寄越してくれた。こちらの世界についての基本的な知識を教えてくれるほか、花乃子の読解力では読みこなせない古文書の翻訳も引き受けてくれ、確かに優秀な青年である。

 そして、花乃子にとって衝撃的な事実が判明した。

3話では終わりませんでした。

もうちょっと、お付き合いいただけると幸いです。

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