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シラクサの賦  作者: Iz
第二楽章 彼方へと
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第二楽章 彼方へと その11

種といっても色々ある。

そこでより詳細に例えるならば

それは、巨大なひまわりの種だった。


底部はふくよかな半円をして

上部はかなり先鋭に閉じる。


水滴の如く重量の影響を受けた

歪な楕円と捉えるのも悪くない。


とまれ、ふくよかな方を前にして

巨大なひまわりの種が寝かせてある。

それが、シラクサの第一印象であった。



サイズは数名乗りの小舟に近しいか。



大のマッチョ数名を用意し直立させ、

よりタッパの高い者から順に並べ

一列縦隊を形成せしめる。


その上で各マッチョには

両腕を肩の高さで最大限に。そう、

指先まで意識を張らせピンと広げさせる。


そして。


全てのマッチョをその状態に保ち、

各々のマッチョが表象する4つの頂点。


すなわち磨き上げられた頭頂部。

踊り子の如くピンと伸びた左右の指先。

そして地を噛む鉄杭の如き閉じられた足。


これら4つの頂点を、まずは1体単位にて

外部へ弧を向けた緩やかな曲線分で覆い

出来た歪な楕円な図形を各々連結し、

現出した立体の前後を丸く閉じる。



これが寸法を含めた第二の印象だ。

なおマッチョは全て半裸かつハゲとする。





シラクサは既にして城砦軍師だ。

「軍師の眼」を有している。


「軍師の眼」とはあまねく神羅万象を数値に

置換し再構成して、戦の趨勢すうせいを占い決する、

そんな特殊能力だ。


用途は基本、戦絡みだが、有していれば

当人の意志とは関係なく、時や場所をも

選ぶ事なく発動してしまうものでもあった。


今この場などは端から「その気」だ。

お陰で眼前の未知の物体から膨大な情報が

次々と高速で抽出され数値化され再構築

されていく、のだが。


時として


そうした人智の外なる超常の処理に

人智の内で培った真っ当な人としての

認知認識が追い付けぬ(オーバーフローする)事は多い。



それゆえに


印象として、幻視した、

してしまったのが先のアレだった。



お陰で端からは暫し呆けて(フリーズして)いるような

有様として映っていた。が、実のところ。

その「端」な者らも概ね同様の仕儀だった。


なぜなら、そしてたいそうおぞましい事に。

先述の印象は後半の忌まわしいヤツも勿論

その場の全ての「軍師の眼」持ちの脳裏へと

寸分違わずに想起されてしまったからだった。



けだし高すぎる叡智と謎過ぎる物体が

共鳴し生んでしまった悲劇といえよう。



お陰で無駄に長い、たいそう

いたたまれない静寂が場を支配。


城砦騎士や元城砦騎士らはその様を

何だか気の毒そうに、眺めていた。





ややあって、最も先に回復したらしき

気丈な少女、城砦軍師シラクサが念話した。



(「箱型構造物」ではないですね)



そう、正に、おっしゃる通り。

先刻の軍議で副院長カッシーニは

確かに「箱型構造物」だと言及した。


箱型とは立方体や直方体、

要は四角で覆った六面体の事だ。


だが眼前の物体は余りにも曲線調カービング

不規則な曲線と面で構成されていた。



「確かに」


自身の直近の言動を忘れたり、

忘れたふりをするほど老いても

腐ってもないカッシーニは頷いて


「ふむ」


と構造体に近づき、

側部の曲面が上下で鋭利に

切り替わる辺りの下部を検めた。


するとそこに、城砦騎士団の紋章が。

さらに並んで文字列が浮かびあがった。



「C4CTWW04 ……成程」



呟き、一人納得するカッシーニ。


当然のごとく周囲は続きを待ち


一拍の後、カッシーニ。



「これは4号機だ」

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