デートはSSRを出してから
さらっとふわっと読んでください。
設定ガバガバなので、深く考えるの禁止。
「あの、今日良かったら、夕食、ご一緒してくださいませんか?」
私の学生時代からの友人であり、我が社の一番のエースでもある、青山 悟を探していたら、今年中途で入社したばかりの女性に、顔を真っ赤にされながらお誘いを受けてる場面に遭遇してしまった。
思わず反射的に隠れてしまったが、悟は私の存在に気付いたようだ。
チラリとこちらに視線を寄越してから、彼女に視線を戻して一言。
「ん、夕食だとSRカードだね。ちなみにランチはRだから出しやすいと思うよ。」
そして、彼女の頭をポンポンと撫でて、私を呼び寄せた。
ー詳しくは彼女に聞いてね、と。
※※※※※
この会社には、ガチャシステムが導入されている。
良い企画を出したり、新規営業先を開拓したりは勿論、早朝、会社の掃除をしたりとかちょっとしたことでも、会社に貢献すると、お給料の他にガチャポイントなるものがつく。
そして、ガチャを引くと特定の人気がある社員とのちょっとした触れ合いからデートが出来るレアなものまでを引き当てる事が出来ると言うわけだ。
勿論、そんなものには興味が無い人もいるわけなので、ガチャポイントはお金に換えることも出来る。
「で、さっきの青山くんが、その特定の相手の1人ね。彼が言ってたように、彼とのランチはR、つまりレアカード。貴女が行きたい夕食はSR、スーパーレアカードね。貴女は入って来たばかりで、まだお給料明細見てないから、わからないでしょうけど。そこに1ヶ月のポイントが記載されるから、来月ポイント確認してから総務課に来てね。そこに置いてあるPCでガチャ回せるから。」
ちょっと早口になりながら、彼女に悟が言ったシステムの説明をした。
「…何ですか、それ。」
俯いて大人しく聞いていた、彼女がポツリと言った。
あ、これ受け付けないタイプかな。
潔癖な子とかこんなシステムふざけてるって辞めていった子とか居たからなぁ…。
たしかにふざけてるシステムだと、我ながら思うし。
この子、確か優秀なプログラマーさんで、来てくれて嬉しかったんだけどなぁ。
これで去られたら悲しいなぁ。
「あ、でも嫌ならポイントはお金に変えられるし、勿論本気で恋愛したいなら…。」
「…何それ、何なの?そんなの、やるに決まってるじゃないですか!!ガチャ回せばイケメンとリアルデート出来るなんて!」
「…え?」
慌てて、ガチャシステムを使わなくてもいい事を説明しようとしたら、大声で遮られた。
「私、さっきは玉砕覚悟、ダメ元で勇気を出して誘ってみたのですが、まさかのガチャ回せばデート出来るとか!最高ですね!!あぁ、その特定の人って、青山さん以外誰ですか?宮瀬さんいますか?関さんも勿論いますよね?」
「ええ、あとは菅野くんとか…。」
おぉ、入ったばかりなのに一通りのイケメン人気社員の名前が出たわ。
「よっしゃ!!俄然、やる気出たー!私、この会社入って良かったです。まずはRカード目指して頑張ってポイント稼ぎますね!では、早速、残業してきます!」
…まさかの、怒涛の勢いで食いついてきた。
喜んでいただけて何よりです。
そして彼女はスキップする勢いで自分のフロアに帰って行った。
うん、良かったけど…なんか疲れた…。
休憩しようと、自販機が置いてあるフロアに行き、何にしようかぼんやりと眺める。
あったかいお茶でいいかなぁと、ボタンを押そうと思ったら、横からスッと長い指が、コーヒーのボタンを押した。
え、私がお金入れたのに?
「お疲れさま、頑張り屋さんに、はい、コーヒー。」
長い指の正体は、悟だった。
しれっと、自販機からコーヒーを取り出して、私に渡す。
「…私、コーヒー嫌いなの、知ってるでしょ。」
「うん、知ってる。でも、ほら、Nカードのセリフだから。」
「いや、私ガチャひいてないし。そんなサービスいらないし。」
「違う。桜が、僕に、やって。」
そう言って見せてきたのは。
Nカード1枚。
「…なんで、悟が持ってるの?」
「ん?ガチャひいたから。持ってるのは、それだけじゃないよ。」
そして、渡されたカードは。
ーーーーーSSR。
本当にあるの?って言われてた、1日デート出来るカードだ。
「桜、明日の土曜日、1日ちょうだい。」
ーでも、その前に、Nカードのセリフを僕に言ってねって、耳元で囁かれた。
最初は飲み会の席での冗談だった。
女の子達が悟とデートしたいーって騒いでて、悟が「俺のデートは貴重だよ、そうだなぁ、ガチャで言えばSSRかな?」って言ったのがキッカケか。
うちの会社は乙女ゲーム系が中心のゲーム会社で、社員は殆ど女子だ。
そんなガチャがあったら、絶対するって言ってたっけ。
その話を社長が聞いて、面白がって採用したらしい。
最初はご褒美になる役の悟たちも渋ってたが、後で社長室に呼ばれてOKを出した。
その時言われたのが、男子用のガチャも作る。
女子と違って、ご褒美役をやる事で、レアなガチャの確率が上がるって、言われたらしい。
「その貴重なカード、私なんかに使っていいの?」
学生時代からの腐れ縁の私じゃなくて、他にもいっぱい悟に憧れる可愛い子いるでしょう?
「僕は 目の前の和泉 桜が良いの。それに桜はこうでもしなきゃ、デートしてくれないじゃん?」
ー学生時代から、誘ってるのにね。いつもはぐらかすし。でも、このカードあればデートするしかないよね。
そう言いながら、笑う悟は。
いつもの爽やかな感じではなく。
艶やかで、色っぽくて。
まだデートしてないのに、次のデートをする為に。
私もガチャ、ひいてみようかなって思った。