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エピソード0魂違い(チェンジリング)

昔、二次創作を執筆していましたが、サイトが新しくなってからずっと書いてませんでしたが、終にリビドーが抑えられなくなったので、また執筆し始めました。

オリジナルは、処女作品となります。

どうかよろしくお願いいたします。

 青空に足元には雲が雲海を作り出しているような場所で、大きな机に座る年若い、ともすれば幼いとも言える少女とその対面に立つ切れ長な目をした妙齢の女性がいた。

 少女は日本神話で出てくるような貫頭の衣や勾玉などの装飾品をしており、一般的な現代服からはかけ離れていた。

 対する女性は、上下黒のパンツスーツに、白のシャツと言ういかにも現代社会のOLや、女社長と言ったような感じだ。

 あまりにも対照的な二人は、言葉もなくただ向かい合い、その空間には書類をめくる音だけが暫く響いた。

 そんなとき、書類の最後の一枚をめくった少女がパサリと書類を机に投げたして、椅子の背凭れに体を預けながら声を発した。

 

 「――此度の魂違い(チェンジリング)の件、貴女の不手際だそうね?」

 「はい、誠に申し訳ありません……」


 彼女は頬杖をついて書類の一番最初のページに目を向けたまま女性に声をかける。

 声をかけられた女性は、そんな彼女の行動を注視しつつ返事を返す、表情は固く額には少し汗が滲んでいた。

 そんな彼女に対して、少女は視線を移し気楽げに声をかける。

 

 「ま、起こしてしまったことは仕方がないわ。 さて、どのように対処はしましょうか……」

 「はっ、即刻その魂をあるべき世界に持ち帰り、輪廻のなかに戻して参ります。 ついさっき輪廻に紛れ込んだので回収は容易かと思われます」

 

 少女の言葉に間髪いれず女性はそう返す姿は、己の失敗に対する責任を感じたことであるのは明白であった。

 だが、少女は困ったように表情を作り言葉を放つ。

 

 「残念だけど、今それやったら、地球の輪廻が一部崩壊して、地球が滅亡してイザナミちゃんに怒られるわよ?」

 「――まさか、もう肉体を得ているのですか!?」

 

 まるで、他人事のように発せられた少女の言葉に、女性の顔が驚愕に彩られる。

 そんな彼女に、またもや他人事のように少女は言葉を返す。

 

 「みたいよー。 彼、前世ではとんでもなく善行を積んだみたいだね、まさかのいの一番に転生しちゃったみたいだよー」

 「だとするならは……。 直接交渉するしかないかと……」

 「ですよねぇー。 まぁ、しゃあないから私が行ってくるわ」

 

 絞り出すように呟いた彼女の言葉に少女は分かっていたと言わんばかりの表情を作り、よっこらせと呟きながら席を立つ。

 そんな彼女に、女性はあわてて声をかける。

 

 「お待ちください! どうか私に行かせてください! 此度の件は、私の部下の不始末にございます。 どうか!」

 「はぁ、全くもう。 《落ち着きなさい》」

 「――!?」 

 

 必死な形相の彼女にたいして、声をかけるだけで冷静にさせ、諭すように少女は言う。

 

 「必死なところ悪いけど、あなたじゃあ、管轄しない世界に干渉出来るほどの権能はないでしょう?」

 「――あっ」

 

 正しく、その通りだったのか、そう言われた彼女は表情を暗くしてうつ向いてしまう。

 

 「だから、向こうから連れ帰るだけは私がするから、貴女はきちんと魂が転生出来るように準備をしてきなさい」

 「――――! はいっ!」

 

 そういった少女の言葉に、うつ向いていた顔を跳ね上げて彼女はきびすを返して、跳ねもないのに何処かへと飛んでいった。

 少女は彼女を見送った後、小さな笑みを浮かべて、彼女のように翼もないのに何処かへと飛んでいったのであった。

 と、そこで映像が消える。


 「ってわけなのよ、少年」

 

 そう言って、先程までの映像に映っていた少女が、映像を出力していた勾玉を首にかけ直しながら言う。

 

 「なるほど、僕が映像の中で言われていた«ちぇんじりんぐ»と、そう言うことなんですね」

 「おー、飲み込みが早くてお姉さんちょっと嬉しいぞ」

 

 そう言って、貫頭衣を着た少女は、自分よりも高身長の少年の頭を撫でながら言う。

 

 「んで、その«ちぇんじりんぐ»って何ですか?」

 「簡単に言うと、あたしたち神の手違いで本来産まれるべき世界ではなく、べつの世界に間違って転生してしまうことかな」

 「とすると、僕は日本に産まれる魂ではないと?」

 「ノンノン。 «日本に»じゃなくて«地球に»よ。 言ったでしょ?べつの世界だって」

 「なるほど、それはスケールの大きい話ですねぇ」

 

 感心したように腕を組んでウンウンと頷く彼。

 その時、少女が訝しげな表情で言った。

 

 「でもさぁ、君、飲み込み早すぎじゃない? 逆にこっちが何でって感じなんだけど? ぶっちゃけあたしってばかなり不振人物じゃん?そこのところどうなん?」

 

 実際、彼女はかなりの不振人物だった。

 4畳半の我が家に目の前の空間が行きなり光輝き、光が収まったそこに行きなり現れて、第一声に――。

 

 「神様でーす、よろよろー」


と、気の抜けた言葉を投げ掛けられたのだ。

 しかし、少年は少し呆けてはいたが次の瞬間には――。

 

 「そうですか、こんなところまで、来ていただいてすいません。 あ、こちら粗茶ですがどうぞ」

 

 そう言って、少女にお茶まで出したのである。

 少女からしたら逆に気味が悪いと言うのも頷ける反応だろう。

 

 「まあ、僕が一般的に言うようなオカルトな人間だからですかね? 幽霊とか妖精とか、神様とも普通に話しますし」

 「え、君、私以外の神様と話したことあるの?」

 

 事もなさげに言う彼に、ぎょっとした顔で声をかける。

 

 「ええ、ありますよ? 最近話したのは天照大御神様ですかね。 お仕事の事とか、姉弟間の軋轢とか、ご両神がバカップルのようでうざいとか、色々と愚痴ってました。 神様も大変なんですね」

 「なにやっとんねん、あの引きこもりは……」


 のほほんと告げられた彼の言葉に、彼女は額を押さえてため息を着いた。

 

 「ところで、お姉さんの名前を伺っても宜しいでしょうか? もしかしたら、来世でもお世話になるかもしれませんので」

 「ああ、ごめね。 自己紹介もせずに話を進めちゃって。 私はダスベス。 エクゼリアって言う世界、つまり君が本来生まれ変わるべき世界の、最高位の神様をしてるわ。 気軽にベスお姉ちゃんって呼んでいいのよ?」

 「ベス様で、妥協してくださいませんか?」

 「えー、仕方ないなぁ」

 

 流石に、神様を愛称で呼ぶなんて恐れ多すぎで、呑気な彼にも出来なかったようで、少し苦笑いを浮かべてそう返す。

 彼の返事に少し不満だったようで、唇を尖らせて渋々と言ったような返事を返す。

 

 「それで、いつ、僕は向こうの世界に行くのでしょうか?」

 「ああ、それは当分無いわよ?」

 

 話の核心を突いたような彼の言葉はあっさりと返された。

 あまりにも、以外な答えに少年はきょとんとした表情を浮かべる。

 

 「そうなんですか?」

 「そう。 これには、輪廻って言うシステムが関わってるんだけどね」

 

 そう言って、彼女はお茶を一口すすった後に、紙と鉛筆を取り出して図を描いていく。

 

 「君の魂は、本来あたしの管轄する世界の住人だけども、今、この地球の、日本に肉体を持って存在してるじゃない? そうするとね、輪廻って言うコンピューターシステムみたいなのが君を地球の輪廻に関わっている魂として誤認しちゃってるのよ」

 

 そう言って、ガリガリと図に描いていく。

 

 「この誤認しちゃってるのが、厄介でねぇ。 このまま君をあたしの世界に拐っちゃったり、ちょっと物騒だけど、殺して魂を回収しちゃったりすると、この輪廻のシステムがエラーを起こして、バグっちゃうのよ」

 

 図解に、エラーとバグの書かれたドクロが描かれる。

 

 「このバグが起こると、どうなるんですか?」

 「この世界の滅亡」

 「……え」

 

 少女の口から告げられたあまりにも、大きすぎる代償に、少年は二の句が告げられない。


「どうしてって言いたげな顔ね。 まぁ、簡単に説明するとバグった輪廻システムは、そのバグを取り除こうとフリーズは起こすの。 存在しない転生すべき魂を探しあてるまでずぅっとね。 さて、問題です、輪廻がフリーズして、転生ができなくなった場合どうなるでしょう?」

「……死産の増加?」

「いいえ、正解は死産にしかならなくなるの。 どんなに母体が健康でも、先進的な医療が有ろうと、魂が転生出来ないから、産まれる赤ん坊に魂が入ってないの。 だから、それは死体なの。 これは、人間だけじゃなくて、すべての生物がそうなってしまうものなの」

「植物も?」

「もちろん、生きとし生けるものすべてに例外無くね。 植物たちも葉をつけて花は咲かせられるけど、実をつけることはないわ」

「なるほど、そうなると食料がなくなり、生物は次に命を繋ぐことができず、遠くない未来に滅亡するわけか……」


 そう呟く少年を尻目に彼女は、ガリガリと地球滅亡と言う字を、図解の地球に書く。

 

 「――それを、回避する方法って無いんですか?」

 「あるわよ?」

 

 さらりと、当然とでも言いたげな感じに彼女は言葉を発した。 

 

 「輪廻のシステムにバグをおこさせなきゃいいわけよ。 つまり、君はこの地球で、残りの寿命を全うするまで生きて行けばいいの」

 「なるほど、そして天寿を全うし、地球の肉体と言う鎖から解かれた僕の魂を回収して、向こうの世界の輪廻に連れていけば、無事にことは終わるわけですね?」

 

 割りと難しくもないことだったために、少年は逆にあっけにとられてしまう。

問題は、さふさ

 「まあ、一つ条件があんだけどね」

 

 そんな彼に、そう言ったの表情は固かった。

 

 「その条件とは?」

 「子供を作らないでほしいってことよ」

 「?」

 

 少女の言った条件がいまいち解せず、少年は首を捻る。

 

 「今はまだ輪廻が誤認しているだけなんだけど、子供を作っちゃうと輪廻が君の魂を地球の輪廻に無理やり押し込めちゃうのよ」

 「なるほど、そうなったら、僕の魂を失ったベス様の世界も、無理やり僕の魂を受け入れてしまったこの世界も輪廻のシステムにエラーが起こって……」

 「そう、世界崩壊ってことになっちゃうわけよ」

 

 そう締め括った彼女はお茶を一口すする。

 彼女の表情は、先程とはうって変わって少し暗い。

 

 「本当はこんなこと言いたくはないんだけどねぇ、ごめんねぇ」 

 「仕方がありませんよ、たまにはそんなこともあります」

 

 落ち込むべき彼が逆に慰めている。

 その事にたいして、ダスベスは情けない気持ちになってしまった。

 

 「では、今から頑張るといたしますよ」


 そう言って彼は自分の太ももをパチンと叩いて立ち上がる。

 そんな彼にあっけにとられて、呆けたような表情で彼女は声をかける。

 

 「なにに?」

 「決まっているじゃないですか、ベス様の世界に転生拒否去れないような、知識や技術を身に付けて、さらに後悔がないように何か大きな事をこの世界で成し遂げて、胸を張って転生できる用にです!」

 

 そう言って彼はにっこりと笑顔を浮かべた。

 こうして彼は地球の日本にて、多くの知識や技術を蓄え、また重力分野において多大なる功績を残し、59年と言う短い生涯に一度、幕を下ろしたのである。

いかがでしたでしょうか?

お気に召しましたら、次回もよろしくお願いいたします。

感想なども有りましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

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