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ep1-2 セインアフター

「あの人たちが、この村の盗賊事件の犯人ってことですね」

 シエルは顔は笑顔のまま、そう答えた。

「多分、旅人達からもせしめていたんでしょう。当然、俺達も標的になってたんです。あの食事は睡眠薬かなんかを仕込ませているんでしょう」

「……ふゆー」

 リークはシエルと、事実に対する驚きに鳴らない口笛を吹いた。

「今日はなんだか冴えてるねシエル。いつもならボクが先に言うはずだったのに」

「てんめっ!気づいてたのかよ!」

「さぁね、今回はシエルが冴えてたってことだよ」

 レインとリークが争っている中、エルナはシエルに問いただす。

「で、どうするのよ?」

「う〜ん、そうだなぁ・・・」

 シエルは親指と人差し指の間であごを支えながら考え込む。

 だが、宿のほうから出てくる人だかりに気づき、その仕草を中断した。

「どうしたんですか、こんな所で。俺達に用事でもあるんですか?」

 宿から出てきた人だかり・・・宿の営業者達にシエルは笑顔で問う。

 営業者の一人は憤怒の表情をしながら

「さっきの話は聞かせてもらった。生きて帰しはしねえぞ」

「あ、聞こえてたんですか。これはすみませんでした」

 シエルは微笑しながら頭を下げた。

「それにしても、ベッタベタな台詞だね。決まり文句とも言うのかな」

「そうね、もうちょっと捻った台詞はないのかしら?」

「ならこれとかいいんじゃないのか、“帰ることができないような身体にしてやる”とか」

「リークさん、それあまり変わりませんよ」

 レイン達が全く関係のない話をしていると、さっきの営業者が

「なにごちゃごちゃ言ってんだ! お前ら、かかれェ!」

 そんなことを叫びつつ、部下と見られる営業者達にシエル達を襲うように指示する。

「またベッタベタだね、改善の余地なしといったところかな」

「ところでお前ら武器持ってきてるか?」

 襲ってくる中、リークは余裕の表情でほかの皆に武器の有無を確かめる。

 そして敵が襲ってきても、その攻撃を避けながら会話を続ける。

「残念ですが、部屋に置いたままです」

「奇遇だね、ボクもだよ」

「あっははーあたしも」

「なんだお前らもか、ちょうど俺も忘れてきたところだ」

「じゃ、あそこの木の棒で代用しましょう」

 シエルが木の棒の束を指しながら言う。

「んだな。お前ら、もう自由にやっていいぞ」

「「「オールライト」」」

 リークが指示を出すと、シエル達は木の棒の束の方向へと向かっていく。

 …もちろん、襲ってくる敵の攻撃を避けながら。

「いっちばん乗りぃ!」

 エルナが真っ先に木の棒を手に入れた。その後、シエル、レイン、リークと続いて木の棒を手に入れる。

「やっぱり早いなぁエルナは。今度コツでも伝授してもらおうか」

「へへん、これにコツなんてないわよ」

「酷いなあ」

 やはり、この時も相手の攻撃を避けながら会話をしている。

 そしてエルナは両手で木の棒を持ち、臨戦体勢に入っていた。すでにリークとレインは敵と剣を交えている。

 シエルも早々と木の棒を構え、敵と剣を交える。


「そこのちっちゃいお嬢ちゃん、その身体に傷をつけたくなかったら離れてたほうがいいよ」

 敵の男が、ニヤニヤしながらレインに話しかけていた。

「うん、そうだね。ボクは傷をつけたくはないよ」

 そう言った後、レインはため息をつきながら

「じゃ、傷つかないように戦えばいいんでしょ?」

「へ」

 疑問符を浮かべる間もなく、その男は地面に倒れこんでいた。

「あ、ごめん。君に傷をつけちゃったよ、精神的と身体的、両方にね」


 一方その頃、リークは三人の男に囲まれていた。

「おいおい。オレはいつからむさ苦しい男組にリンチされるようになったんだ? せめて可愛い女の子にしてくれよ、というかそれを願いたいぜ」

「るっせぇ!こっちは自分達の生活かかってんだよ!てめぇらみたいな気楽な旅人とはわけが違う!」

 男の一人が激しく激怒しながら叫ぶ。

「気楽・・・ねぇ」

 リークはクスリと微笑する。

「何笑ってやがる!ここで死ねぇぇぇぇぇええぇぇッッ!!」

 男達は木の棒の先に包丁をくくり付けたもので、リークを襲おうとした。

 だが、一歩踏み出すその前に男達は

 ・・・うつ伏せの状態で倒れた。

「こちとら、そんなヤワなもんでやってんじゃねぇんだよ。出直してきやがれ」


 エルナは、一人の長身な男と対峙していた。

「すまねぇな、俺は家内の生活を守る義務がある。いた仕方のないことだ」

「そっか。でもあたし達もここの村人を守らないといけないの」

 男とエルナは武器を構えたまま、話していた。

「だがそれはただの自発性に従っただけだ、義務もへちまもないだろう。しかも、その齢で」

 男は落ち着いた口調でエルナに話している。

 それに対してエルナは、顔を笑顔にさせながらそれに答える。

「ふふっ、ならあたし達がなんで助けようとするか、教えてあげよっか?」

「断、ッる!」

 男は間髪入れずに、エルナを攻撃しようとしていた。

 だがエルナは余裕といった表情で、それを避け、男の後ろに回りこむ。

エルナは、手刀で男の首を叩き気絶させた。

「じゃ、教えてあげない♪ ・・・大丈夫。家族のほうは、心配しないで」


 残った一人、シエルの方は二人の男を相手にしていた。

「俺、こういった武器を使うのは慣れていないんですよ。困りましたねぇ…」

 シエルは木の棒を弄びながら二人に言った。

「そんなこと言っても俺達ぁ変わんねぇぞ!」

「そうだぜぇ!?謝るなら今の内。だったら許してやらんこともねぇぞぅ?」

 二人の男は、笑いながらそう言った。

 するとシエルもそれに釣られて、少し声を出して笑っていた。

「…何が可笑しい」

「いや、もっともだなぁって思ったんですよ。確かにそう言われても変わりませんよね」

「ふん、だったら早く金出して負けを宣言しやがれ!」

「あははっ、そう言われましても」

 言葉の続きを言う前に、シエルは二人の後ろに回りこみ、木の棒で一閃した。

「こっちもそう言われましても、容赦もなにも変わらねぇ・・・ですよ」





「お、お前らなぁにモタモタしていやがる!?たった四人だろう!」

 頭と思われる男が部下達に渇を入れる。

 だが部下達はその声を聞くこともできず、ただただシエル達に翻弄されていた。

「そういえばシエルは剣技演習でいつもボクに負けてたね、勝ったことってあったかな」

 レインが男達と剣を交えながらシエルに話しかける。

「お、俺でもレインに勝ったことはあるよ! レインが強すぎるんだよ・・・」

「そうかな、ボクはリークに時々負けてたよ」

「あー、そうだったな。時々オレ勝ってたわ。でもエルナには五分五分ってところだったか」

「そうね、大体半分半分くらいだったわ。でもあたしシエルによく負けてた」

 シエル達は男達と戦いながら、余裕で話し掛け合っていた。

「いつもの武器があればもっと楽に倒せていたのかもしれませんねッと!」

 シエルが敵を叩きながらリークに言う。

「いっつも持ち歩くのも物騒極まりねぇってあのクソ皇帝陛下からの命令だろう・・・っと!」

「リークさん、皇帝陛下には礼儀正しくしましょうよ」

「あいつが別にいいつったからいいんだよ、つーかあっちから絡んで来たんだ・・・しッ!」

 リークも同じように叩きながら話し合っている。

「でも皇帝陛下からはナンパをしてもいいって言ってなかったよ」

 レインがリークに皮肉をこめて言う。

「うっせーなァ、別にやるなともいってねぇだろうが!」

「今度王国に帰ったときに検討しとくよ」

「…すみませんでした」



「ふぅ。大体片付いたわね」

 エルナが汗を拭き取りながらそう言う。

「いやまだだよ。まだ頭を残してる」

 シエルが冷静に状況を把握し、エルナに伝えた。

「うし、んじゃ最後の一人やっつけたら王国に報告して、報酬の取り分を聞いとこうぜ」

「賛成だね。多分あいつは宿の中じゃないかな。逃げてたのが見えたよ」

 レインが宿の方を指差す。シエル達もそれに頷いた。

「って宿の中のどこにいんだよ、迷ってたら逃げられちまうぜ?」

「あはは、解ってますよあいつが居る場所は。汚い人間の考えが解るのは不愉快ですけど」

 シエルが苦笑しながら、宿の中に入っていく。



「はい、見ーつけた。観念してリザインしなよ、そうすれば村人に突き出すのはやめてあげる」

 レインが頭に棒を突きつけながら、頭にそう言う。

 部屋はシエル達が居た部屋。頭はシエル達のものを盗んで逃げようと考えていたのだ。

「盗賊の精神は判りませんね、いや…流石は盗賊といったところでしょうか」

 シエルはいつになく真面目な顔で頭を睨んでいた。

「ふんッ!これがあったらお前らなんて怖くもなんともねぇ!」

 頭はそう言うと、シエル達の荷物から何かを取り出した。

 …銃である。

「なんでてめぇらがこんなに強ぇのかはわかんねぇが、これの前にはどうにでもできねぇだろ!ハハハ!」

 頭はすでに勝ちを見据えているかのように高らかに笑った。

 しかしそんな頭を見ていて、レインは溜め息をついた。

「あーあ…一番駄目な物に手を出しちゃったね。もうボクは知らないよ」

 レインがわざとらしくプイと頭の反対側を向いた。頭は「へ?」というような顔になっている。

 …その頭に、シエルがゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと歩み寄ってゆく。

「それを、返せ」

 いつもの穏やかな顔から一変し、怒りをあらわにしている顔で頭にそう言う。

 その声は迫力、圧力が頭の心を揺るがしていた。だがしかし、頭は汗を垂らしつつも

「な、何マジになってやがる!う、撃つぞ!」

 頭は手をわなわなと震わせながら、銃口をシエルに向ける。

 しかしその銃口を向けられても、シエルは全く動揺しなかった。

 痺れを切らした頭は指を銃に掛け、銃を構えた。

「う、撃つぞオォォォォオオォォ!」

 意を決した頭は引き金を引こうとする。

 …が、しかし

「ほいっと!」

 エルナがすぐさま頭の方に走り込み、頭の手を蹴って銃から手を離させた。

「シエル、今よ!銃を取って!」

 シエルは言われるがままに銃を取った。そしてその銃口をさっきまで持っていた頭に向ける。

 なんと皮肉なことだろうか、自分が主導権を握っていたはずの銃を、取り返されてほぼ同じような仕草で銃口を向けられているのだ。

「チェックメイトだね」

 レインが冷静に、そして静かにそう言った。

「クソッ!なんなんだよてめぇら!しかも武器にはその銃にナイフに刀に・・・そして鎌まであった!いったいなんなんだよ!」

 そこまで言った頭は、ハッとしたような顔でシエル達が何かということに気がついた。

「ま、まさか…お前ら…」

 頭はわなわなと人差し指を震わせ、シエル達に指す。

「ふぁ、ファイバー王国皇帝直属聖七星騎士団第二星団特別班、………」

 頭は、口も腕も足も震わせながら、おどおどとしながらその言葉を発する。



「特別班、『セインアフター』!?」

「じゃ、じゃあそこのお前は『死神の策士リーク』『閃きの魔術剣士レイン』『神速の竜巻エルナ』『精巧の銃士シエル』!?」



「なんだ、知ってるんですか」

 シエルは笑顔に戻った顔で頭に問いかける。

「し、知ってるぞ!各地を飛び回り盗賊を討ったりする・・・」

 そこまで言ったところで、頭は気力を失くした。

「そうそう、それだ。にしても『セインアフター』なんてだっせぇネーミング誰が付けたんだよ」

「皇帝陛下ですよリークさん」

「…このことは内緒な」

「す、すまなかった!あ、謝る!俺達の負けだ!だ、だから村人達に突き出すのはたやめてくれ!」

 頭が額を地面に擦り付けながら、そう謝罪している。

「あ、そういえばそういう約束だったね。大丈夫、ボクは約束を守る主義だよ」

 そう言うとレインは頭に歩み寄る。

 そして少し笑みを見せながら頭に言う。

「うん、突き出すのはやめてあげる。でもね?道のど真ん中で倒れている宿の人達、そして後からボク達が見つけて道のど真ん中に置く予定の作物や金。これを見たら村人達はどう思うかな?」

 レインは笑みを残しつつも、皮肉を混ぜた声で言う。そんなレインを見てリークは同情の声で

「あーあ、ひっでェなァ…。当然のことなんだろうけど」

「リーク〜、後で覚えていてね」

「…お、オレの第二の人格が…」

「…はいはい」

 レインは溜め息をつくと、シエルに先を促せた。

 シエルはレインの心情を察し、銃口を頭に向け直した。

「い、いやだ!や、やめてくれ!お願いだぁぁ!嫌嫌嫌嫌嫌だ!死にたくねェ!死にたくねェ!うわぁぁぁああっぁぁああ!!」

 頭は両手をかざして、生き永らえようと必死に抵抗する。

「ジ・エンド、終了だね」

「シエルを怒らせたからいけないのよね」

 そして…シエルは引き金を引いた。



「もしもし? あぁそうだ、取り分は幾らくらいだ? …あぁ分かった、ありがとよ」

 リークは携帯型の電話で、王国と連絡を取り、報酬の取り分を聞いていた。

 用件が終わって電話を切ったところで、シエル達にそれを報告した。

 シエル達は予定通りに報告された分の金額を、盗賊達が奪っていたものから差っ引いた。

 その量の少なさにエルナは不満を漏らしたが、シエルに「最小限に抑えろとの命令だから」と咎められてその口を閉じた。

 そして余ったものを別の大きな袋四つに分け、全員に持たせた。

 全てを取り戻したところで、シエル達は荷物を確認し、別の部屋へと移っていった。そこで夜を過ごすことにした。


 

 …翌日

「では、ありがとうございました」

 シエルが村長に頭を下げ、今までこの村でお世話になったという感謝をこめて礼をした。

 同じように昨日案内してくれた村人にも頭を下げる。

「もう帰ってしまわれるのですか・・・。名残惜しいですが、あなた達がそういうならお見送り致します」

「どうしても用があるので。では…。あ、後で宿屋の前に行ってみてください、面白いものが見れますよ」

 シエルはもう一度頭を下げて、皆と一緒に村長の家を出て行った。

 出て行ったのを見届けると、村長は手を合掌して

「彼らの旅に幸あらんことを・・・」




 リークは荷物を車に詰め込み、皆を車の座席に座らせてエンジンをかけた。

「んー…昨日の疲れがまだ残ってやがる…」

 リークが片手で運転をし、もう一方の手で体を伸ばす。

「リークさん、ちゃんと運転してくださいよ。危ないですから」

 シエルがリークに注意する。

「あーでもよォ…この暑さになればやる気も失せるっつーの…」

 渋々とハンドルを持ち直しながら言った。

 するとレインは小さな声で何かを唱えていた。

「あーーー!魔術は駄目ぇーー!」

 レインがやろうとしていることを察したシエルはその行動を止める。

「ライオット・ウォータ[暴動の雨]くらいやれば疲れも吹っ飛ぶかなと思ったんだけど」

「いや疲れは嫌でも吹っ飛ぶだろうけど!」

「あんた達うっさい!もっと静かにしなさいよ!」

「だぁぁ!てめぇら黙ってろ!」


「それにしても、何で殺さなかったの?」

 落ち着いたところでエルナがシエルに問いかける。シエルはそれに笑顔で答えた。

「あの人はまだFランクだよ、規定で殺人は認められてないよ」

「はぁ…甘いのねシエルは」

「あはは、ごめん」

 そして車は進んでゆく…

お久しぶりです。光虎です。

ここまででどうでしたか、つまらないと思った方もいらっしゃるでしょうが僅かな希望の光を俺は信じています。

世界観などはまだ分かり辛いでしょうから、そのことについては次回記させていただきます。


では、また次回…(手抜きあとがきですみません)

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