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ある小説家の日常  作者: 静かな野人
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第4話 怪人との出会い

 不意に声をかけられた私が驚き、声を出せないでいると、その茄子のような顔をした怪人が自らの顎をさすりながら、私の顔をまじまじと覗きこんでくる。

「フムフム、なるほど」

 顔を覗きこみながらそんなことを口にする年齢不詳のこの怪人。私の顔がそんなに珍しい顔だとでも言うのだろうか。自分で言うのも何だが、私は特に特徴のある顔をしている訳ではない。むしろ特徴が無さすぎて困るくらいの顔のはずである。にもかかわらずこの怪人は私の顔をまじまじと覗きこんでいる。

「いきなり何ですか!?」

 私は、自分でも気づかぬうちに思わずすっとんきょうな声をあげていた。


「私にかかれば、君の小説を賞に入選させることができる」


 ・・・ この怪人が唐突に発したこの言葉の意味を、理解するのに暫く時間を要した。

  今この男は何と言った? この私の落書き同然の小説を賞に入選させることができる。有名作家にさせることができる。そう言ったのだ。

 だがそれよりも驚くべき事がある。なぜこの男は私が "売れない小説家" であると知っているのだ。何とも奇妙だ。この怪人はもしや新手の詐欺師か、はたまた最近流行りのストーカーか!?

  私が頭の中でぐるぐると妄想を膨らませていると、茄子のような顔をした怪人が再び喋りかけてくる。

「君は私を詐欺師やストーカーだと考えているようだが、何と阿呆なことを考えているのか。実に嘆かわしい。」

「そもそも、君のような金のない人間を騙したところで私には何の徳もない。更に、20代半ば、そろそろ30に突入しようとしている男をストーカーするような趣味は私は持ってはいない。」

 怪人の言葉に一瞬胸が痛くなったが、なるほど考えてみればその通りである。いつもかつかつの日々を送っている私には騙し取られるような金など一銭もない。更にこんな20代半ばのむさ苦しい男をストーカーするような世にも珍しい男もいまい。しかし、ならばなぜ、まるで神話の世界から飛び出て来たようなこの"怪人茄子男"はここまで私のことに詳しいのだ?

 その疑問を男にぶつけようとしたが、男は急に立ち上がり

「とにかく、もし君が小説で何らかの賞を取りたいと言うのなら、ここに電話してくれたまえ。 」と言って、小さな紙切れ一つを残し颯爽と去って言った。



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