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緑の騎士の物語  作者: かなえ&るうき
10/13

10

 時間は少し遡る。

 レーヴェン・フェアトラークの一行は、村の入り口で馬を止めた。

 拠点に一番近いこの村は普段なら人の往来も賑やかなのだが、いま外には誰も居ないうえ、異様な空気が漂っている。民家から人の気配はするものの、突き刺さるような視線の多くに、明らかな敵意がこもっていた。

「さすがに様子が、…うん?」

 少し離れた民家から扉の開く音、言い争う声、飛び出した人影で、部隊に緊張が走る。

 けれども現れたのは、

「ヤツらじゃねぇ、フェアトラーク様だ! どうか…どうか、お願いします!」

 まだ少年といえそうに年若い、村の青年だった。

「どうした、何があった?」

 全速力で走ってきたのだろう、青年は肩を上下させて膝に手をついた。

「実は、あぁ…よかった、これから一揆を起こそうってんで、血の気の多い連中が準備を始めてたんです。もう耐えられないって…!」

「そうだったのか、…間に合って良かった。皆を広場へ集めてくれるか?」

「はい!」

 青年はもと来た道を駆け戻っていく。レーヴェンは仲間たちと顔を見合わせ頷くと、入り口に見張りを残して村の広場へ向かった。


 少し待てば、続々と村人たちが広場に姿を見せはじめた。みな不安げに、苛立ちを隠せずに一行を見つめている。

 村人が揃ったところで、彼は馬から下りて全員を見渡した。声を張り上げる。

「皆、よく集まってくれた。実はムアルメ拠点における此度の隊長と隊長代理に係る事案で、国から令状が出され、調査するようにとの命が下された。なので、代表者を数名連れて行きたい。」

 広場はいっとき騒がしくなるも、その中から三人が進み出た。

「俺たちがお供します!」

 一人は三十代と思しき男性で、自らを自警団の代表だと名乗った。

「隊長代理が就任してから、あいつらに好き放題されて…もうまっぴらだ!」

 一人は恰幅の好い中年の女性で、女たちを代表して付いていくと言った。

「私らに良くして下さったフェルス様が、謀略なんて企む筈がありません!」

 一人は年輩の男性で、白髪をひっつめた、背筋のよく伸びた村長だった。

「騎士様…何があったとしても、儂らは受け入れますぞ。」

 彼は頷きを返し、手勢の半分を村の警戒に割り当てる指示を出す。

「他の皆は自宅で待機していてくれ。もしもの時に備えるんだ。」

 もしも。その言葉にまたも広場が騒がしくなる。彼は違うと首を振る。

「無いとは思うが、小競り合いにならないとも限らないからな。」

 そう言うと、子供を持つ親たちが表情を強張らせる。

「大丈夫だ、近隣の村にも手は打ってある。…なぁ、坊や。」

 彼は前列に居た幼子へ屈んで目線を合わせると、快活な笑みを浮かべた。

「好い子で留守番できるな?」

「…うん!」

「よし、好い返事だ! お父さんと一緒に、お前がお母さんを守るんだぞ。」

「ん!」

 小さな頭をひと撫でし、両親らしき夫婦に頷いてみせて、レーヴェンは馬を引く。

「お待ちください!」

 人の散り始めた広場で、なお立ち去らぬ男たちが訴えかける。

「自分たちも行きます。」

「多少の男手なら足手まといにはなりませんでしょう?」

「なんなら鍬でも鋤でも持っていきますよ。」

 そんな男たちの様子に、代表の一人の中年女性がそれなら、と付け足した。

「私は箒でも持っていくかね。日頃から使い慣れてる得物なら、振り回す甲斐があるってもんだよ。」

 そんな軽口の応酬で、広場は和やかな笑いに包まれたのだった。


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