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保険の契約

 小野妹子はパンフレットを手に、満面の笑顔で説明を始めた。

「大概の方が大待合室での噂話によって、天国、地獄の他に即転生コースがある事をお知りになられますが、お客様はご存知でしょうか?」

「はい」

「ありがとうございます。では、本題に入らせて頂きます」

 何で、ありがとう?


「お気付きの事と思いますが、ここは転生コースの待合室になります」

 いつ、なるんだ。今は違うのか。


「これから個別に診断室に呼ばれますと、現世からの紹介状に照らし合わせつつ担当の診断士があなた様の問診を行い、適正な転生先を決定。と言う運びとなる訳ですが、これが決まってしまいますと覆す事は不可能となってしまいます。

 そこで! 転ばぬ先の杖、保険の加入をお勧めしている訳です」

「はぁ」

 俺は段々と不安になって来た。

 いろんな意味で天界っぽくない。

 話している内容以外、あまりに俗っぽい。


 もしかして、俺は死んだんじゃなくて精神を病んで病院に連れて来られたんじゃないかとさえ思えて来た。

 しかし、こんな幻覚を見る程の重篤な病状なら生きていた事を素直に喜ぶことも出来ない。


「お客様? どうなさいました? もしかして、お疑いですか? 最近、そう言う方が増えているんですよ。でも、私共『チート保険』は決して詐欺などではございませんのでご安心ください」

 既にネーミングが怪しすぎる。


「お客様。ご自分のお名前は覚えてらっしゃいますか?」


 あれ? そう言えば、俺の名前って何だっけ?


「覚えておられないのも転生の準備期間だからです。信じていただけましたか?」

 そうだよな。やっぱり俺は死んだんだ。


「次は記憶です。貴方様の魂はプロのクリーニングを受け、転生後は現在の記憶の一切を失う事となります。新しいお身体に宿られる際には前世のリサイクル魂などという事は感じさせない見事な新生児仕上げだそうですよ」


 えっ⁉ 記憶無しに新生児って、ただの生まれ変わりじゃん!


「おっ! 俺! トラックに轢かれて死んだんですよ! 何で普通に生まれ変わるんですか!」

「落ち着いてください。

 そう言う方も最近急激に増加しておりますが、トラックに轢かれても軽自動車に轢かれても結果は同じです。どうしてそんな噂が広まったのかは存じませんが転生のルールに死因は関係致しません。

 ただ……そう言う方こそ『チート保険』にご加入いただくメリットがございます。

 天上界、地上界、異世界のありとあらゆる動かし難い習わしに唯一抗える手段が〝チート〟と呼ばれる不せ…いえ、技なのです」


 不正って言おうとしたよな?

 じゃあ、チートってやっぱりアレか?

 異世界転生してチート使ってって……こういう仕組みだったのか!


「チートって、最強の武器とかHP減らないとか?」

「そう言う商品もございますが、少々お値段が……」

「お金、取るんですか?」

「お客様。何を得るにも対価が発生するのは、どの様な世界でも習いでございますよ。

 ……でもご安心ください、お支払いは分割払いですので。

 転生先で得たお金から相応の物を毎日分割で自動引き落としとなります。お客様には気付かれない内に収入額が減額されるシステムですのでご負担も感じません」

「なるほど! 知らない内に徴収されていれば取られた感が無い!」

「はい! その通りでございます。お客様はご理解がお早いです! では、早速ご契約を。

 お勧めは〈記憶保全〉〈言語理解〉の基本セットに〈年齢固定〉〈性別選択〉〈戦闘能力〉などの特約を付帯する終身コースでございまして、ほとんどの方はこちらのコースをお選びになります」

「終身? 一生涯って事ですよね。支払いはどうなるんですか」

「それも終身となります。

 途中で記憶障害にでもなられたらお困りでしょう? お支払頂けるうちは保証もしっかり致しますが、滞納が一定期間を過ぎますとその後の保証はお約束できませんので、無理なご契約はお勧め致しません」

「基本セットでいくらくらいなんですか?」

「転生先の通貨が解りかねますし、レートも違いますので何ともお約束出来ませんが、基本セットのみでしたらそれ程大きな負担ではないと思います。

 何より、異世界への転生でしたら保険に入りませんと、そこが異世界であると言う認識もお持ちになれませんので、非常に残念な転生となってしまわれる事でしょう。

〈記憶保全〉の保証があれば前世のお名前とご家族の名前、容姿以外の記憶は失う事無くお守りします。失われる記憶に関しましては、万が一現世に転生なさった場合のトラブル回避の為とご理解下さい。

 お客様。小さな負担で大きな安心を手になさってはいかがでしょう」


 あれ?

 俺は重大な事に気が付いた。


「異世界でない転生もあるって事ですか?」

「まぁ! お客様はお若いのに大変しっかりなさっておいでですね。そんな頭のいいお客様でしたらもう既にご理解いただけていると思いますが、保険と言うものはリスク回避の為に存在致します。転ばぬ先の杖なのです。転生先が決まってからの契約では互助の意味を成しません。勿論、現実社会に転生なさったとしても基本セットの契約は有効です。ご心配には及びません。心配なのは何の備えも無しにいきなり転生なさることではないでしょうか? 丸腰で戦地に赴くような物ですよ。ではご契約を」


 何だか正直よく分からない。

 けど、頭がいいなんて初めて言われた。理解できなかったとは言いずらい。

 分かった事は、転生先が決まってからでは契約できない事と、異世界内の酒場や宿屋、大きな町、そう言った出会いの場所に出張所もあって、契約の変更も出来るらしいって事。


 だが! 

 なんと言っても記憶の無い転生なんて勿体ない!

 俺は小野妹子と契約する事にした。


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