死んだ後ってどうなるんだ
刺激のない毎日。
平和な日常。
生きてる実感もイマイチ湧かない。
地方の町で中の下の高校に通い、成績も中の下。
ブサイクじゃないけどイケメンでもない。
友人関係に問題は無いが、親友がいるわけでもない。
女の子と付き合ったこともあったけど、特に楽しくも無いので、ってか面倒くさくなって自然消滅。
親は俺の事、覇気がないって言うけど、今の世の中そんな覇気のある奴なんているんだろうか? 少なくとも俺の周りにはいないけど。
テレビに出て来るスポーツ選手とかスーパーキッズとか、そう言う小さい頃から英才教育受けてた奴と比べられても正直萎える。
だったら、俺にも英才教育させてくれたら良かったんだよ……あ、やっぱりそれは遠慮します。
そんなわけで、今日も駅から徒歩で登校中。
もう少しで学校だってのに、今更ながらサボりたい。
ここまで来たのに往生際が悪いって? 大丈夫、これは毎日の事で結局はサボる覇気もない。
俺だって毎日に刺激があったり戦う必要があったりすれば、それこそ覇気だって何だって自然と湧いて来るって思うけどな。
ああ……いっその事、異世界にでも転生したい。
剣とか魔法とか、そう言うものの実在する世界ならそりゃあ本気も出せるに違いない。
現状に大した不満も無いけど、残念ながら未練もない。
トラックにでも轢かれればめでたく転生、なんてシステムの世の中だったらそれでもいいかもしれない。
おお! おあつらえ向きのトラックが来た。
と言ってもまさかホントに飛び込んだりしない、自殺するにも覇気がいるのだ。
えっ⁉
ヤバイ! 子猫が飛び出しやがった!
何でだろう。何で、俺はこんなにも機敏に動いてるんだ?
特に動物が好きなわけでもないし、正義感だってないって言ったらおかしいけど、命懸けで猫を助けるタイプじゃない。
らしくない行動。
そういう時って時間がスローモーションみたいに流れるって言うけど、今まさにそんな感じだ。って事は俺、死ぬのかな……
よく見ると子猫はすんでの所ですり抜けていた。
当然、猫の方が俺より機敏だ。
なんか間抜けだ、これじゃあ単なる飛び込み自殺。
やっぱり俺らしくない事はするもんじゃない……
―――意識が無くなってからどのくらい経っただろう。
気が付くと俺は自宅の和室で布団に寝かされていた。
あれは悪い夢だったのだろうか……いや、そうじゃない。そもそもここは俺の部屋じゃないし顔に布かかってる。なんか、線香とかロウソクとか見慣れない物も並んでる。
両親は横たわる俺に取りすがって号泣しているし、たいして仲がいいわけでもない姉ちゃんまでもが大泣きしてる。
―――これはマズイ。マジで死んでる。
その証拠と言っては何だが、その光景を俺は俯瞰で眺めていた。
別に、家族に疎まれているって思ってたわけじゃない。でも、こんなに嘆くなんて想像もしていなかった。
この世に未練が無いなんて、浅はかだった……
でも、もう遅い。
二日後の葬儀が終わると俺は荼毘にふされた。
そして、再び意識が消えた。
次に気付いたのは大きな病院の待合室の様な所だった。
知らぬ間に大勢の人達と長椅子に腰かけ、俺は係りの人(?)に呼ばれるのを待っていた。
「初めてですか?」
突然右隣の八十過ぎの老人が声をかけて来た。
ここまでの成り行きからして、多分今俺たちは死後の世界の入口辺りにいるんじゃないだろうか? 初めてじゃない場合があるのか? ここで帰れれば臨死体験で済むとか?
「おじいさんは初めてじゃないんですか?」
俺がそう言うと彼はちょっと照れたように頭を掻いて。
「これは一本取られましたな。
お若いのに、お気の毒です。ご病気ですか? 事故ですか?」
俺は何かで彼から一本取ったらしいが、良くは分からないので流す。
「事故です。トラックに轢かれて異世界にでも行きたいと思っていたら、ホントになっちゃって……
まぁ、今んとこ轢かれて死ぬ所までですけど」
「ほぉ。トラックにですか。
昔から〝牛に引かれて善光寺参り〟と言いますが〝トラックに引かれて伊勢参り〟とは、さすがお若い方は斬新ですねぇ」
話が全く噛み合わん。耳が遠いのか? これがジェネレーションギャップってやつなのか?
すると左隣の四十代くらいの男性が『ぷっ!』と吹き出して『失礼』と言った。
「何か、面白かったんですか?」
「ああ。お陰で久しぶりに笑わせて貰ったよ。なにぶん長い闘病生活の後での死だったからね。
君は異世界に転生志望なの?」
このおじさんにとって、いったい何が面白かったのかは分からないが、今の食い付き所はそこじゃない。
「異世界に転生ってマジでアリなんですか⁉」
「らしいよ。実は僕、生死の境をひと月近く彷徨っててね。色々と情報収集出来たんだけど、噂によると天国と地獄の真ん中に即転生ってのがあるらしい。その行き先って言うのが君の言う異世界かどうかはよく分からないけど、行き先にはいろんなパターンがあるらしいから、それもあるんじゃないの?」
―――そんな事が?
そうなったらいいと思っていた事なのに、いざとなるとにわかには信じられない。
だが、死んだ後どうなるかなんて誰も知らない事なんだ。現にこうしてここに並んで座っている事だって前もって知っていた訳じゃない。
「おじさん、その話詳しく聞かせてくれませんか?」