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ヒュプノランタン  作者: 雪麻呂
静かの海がやってくる
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遠い残響を聞いた

7.






 ようやく海を手に入れた。

 泳ぐための身体で生まれて、いくら探しても海がないなんて。

 こんな不幸があるかい。

 ずっとずっと探してた。広い海。果てのない、夏の海だ。

 どのくらいかって? そりゃあもう、長い間さ。

 誰に訊いてもこう言うんだ。陸で泳ごうとする方がおかしいってな。

 まったく、世間てやつは、俺に冷たすぎるんだ!

 君もそうは思わないか?

 どうして自分は、こんなにも息苦しいんだろうって。

 それはな、海がないからさ。

 かといって、陸で暮らすにも脚がない。

 あぁ、逆もあるだろうな。泳ぎの下手な魚だっているだろうさ。

 お互いの世界を交換したくても、それはできないとくる。畜生!

 なぁ君。

 だからって、自分が悪いなんて思っちゃいけないぜ。

 それは、己という存在の否定だ。

 脚のない身体を、水に浮かない心を。それでも誇るべきなんだ。

 だってそれこそ自分なんだからな。

 世界に、たったひとりきりの自分だ。

 同じ人間は何処にもいないんだぜ?

 それだけで君、なんて素晴らしいことだろうよ!







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