ドッペル子さんとの会話
現在、俺は深愛さんと二人っきりになっている。さて、どうしましょう?
A、話しかけるのを諦める。
そう、こんなもの相手と話そうとするから気まずいのである、気にしなければ問題ない。他には場の空気を読むのをやめるのもグッドである、逃げてることに変わりはないが。
というわけで、少し考え事をすることにした。
「もっと『親が心配してるかも』とか考えないんですか?」
先ほど田原さんにそう言われてしまったが、
どうだろう。
俺は向こうに未練がないのか?
ないことはないだろうが未練の内容がゲーム、アニメ、ラノベの時点で未練というほどでは無い気がする。
そして親については……………………………………………………………びっくりするぐらい何も感情が湧いてこない。
考えてみれば『産んでくれてありがとう』とか一度も思ったことが無い。
やっぱり俺って薄っぺらい
そんな自虐に落ち着い「ねえ」
「なんですか?」
突如深愛さんに話しかけられた。
「なんでそんなに落ち着いてるの?」
深愛さんの怪訝そうな表情が目にはいる。
なんで、ね。
「もともとこういう性格なんですよ、危機感が欠けてるのか人間味が欠けてるのか知らないですけど、あとあんまり元の世界に未練が無いのもありますね」
「…………未練………無いんだ」
深愛さんの目が悲しいものを見る目になった、気の所為だと思いたい。
「あなたは、何かあるんですか?」
「親に会えないこと、それも永遠に」
普通の人はこうなんだろうな。
そんな感想しか浮かんでこないあたりがまさに俺だった。
「もう一つだけ聞いてもいい?」
「どうぞ」
なんだろうか?
「今までに事件とか事故に巻き込まれたり、周りの誰かが重い病気にかかったことある?」
「いえ、無いですよ」
そういえば本当に全く周りに不幸な話が無いな、平和なのはいいことなんだろうけど。
それよりも
「なんでそんなことをきくんですか?」
異世界に来てすぐ、田原さんにそんなことを聞かれたが、あの人ががそんなことを聞いたのは、妙に冷静な俺を訝しんで精神が壊れてるのでは無いかと疑って聞いたことではないかと思っている。が、深愛さんはそれを疑うほど俺が何処か変だと思っただろうか。というよりそんな余裕が無いように思える。
深愛さんは少し躊躇うような表情を見せた後、こう言った。
「私は父親が刺されたことがあるから」