対面 わかるけど知らない人と2
当社比三割増しでお送りします
目の前の少女が目を見開く。どうやら気づいたようだ。こっちは自分がどんな表情をしているかすらわからない。
何度見ても、何度も、何度も何度も何度も見ても、その顔は自分に似ていた。髪を伸ばして目つきを変えれば直ぐにでもその顔になれるぐらいに。
そして決定的なのが
匂い。
……………………友人知人に「変態!」と言われないためにも弁明しておくが、決して人の匂いを嗅ぐのが趣味という訳では断じてない。五感が鋭いだけだ。
物に匂いがあるように、生き物にも匂いがある、当然「人」にも。
相手からも匂いがするが、その匂いは
まさしく自分のものだった。
「どうしまし………た……………え?…」
田原さんも気づいたようだ。
少し冷静さが戻ってきたので、質問してみることにした。
「僕の名前は前崎宗人です、あなたは?」
さて、どう返ってくる?
全く名前が違えば単なる偶然の可能性が増えるが…………相手の反応を見るにそれはなさそうだ。
「 …………私は前崎深愛です」
ドッペルゲンガー説に一票が入った………………いやいや、まだ決めてはいけない。
「失礼ですがおいくつですか?僕は14です」
「私も14です」
………………なにかが埋まっていく気がするのは気の所為だろうか。
ともあれこれが最後の質問だ。
「…………両親の名前は」
「母が」
ゴクリ
「前崎響華、父が前崎鋼太です……………………………」
ふぅ、これで晴れて肉親が一人増えた訳か。
んなわけあるか!
は?どゆこと、容姿年齢両親の名前が同じ人間がいる確率なんて絶対確実に天文学的数字になるだろ!しかも俺異世界きたんだぜ、もうこれ本当にドッペルゲンガーだろそれ以外何があり得るっていうんだよ!」
………………………………………………………………………なんか途中から心の声がだだ漏れしてたけど気にしない、気にしてる余裕なんてない。もう寝込みたいぐらいには「もう…………やだ……………」ん?
見ると俺のドッペルゲンガー(仮)がへたり込んで泣いていた。
「変なところに連れてこられて、逃げたら追いかけまわされて、こんな気味悪いもの見せられて、なんだっていうのよ…………」
とかブツブツつぶやいてる。それと気味悪いもので悪かったな。
もう本当に寝てしまおうか、と考えていたら、
「あのぉ、すみません」
「なんですか、田原さん」
田原さんが話しかけてきた。
「あくまで仮説なのですが、先ほど世界がいくつもあるといいましたよね」
いきなりしゃべり出したがとりあえず「はい」と相槌を打っておく。
「その世界の違いというのが結構細かいんですよね、つまり、あの娘はあなたの性別が女だった世界からきたのではないでしょうか」
なるほど確かにそれならあり得る………………のかよ。
その辺は田原さんの方が詳しいだろうから信じて良さそうではあるが、
どうしよう、このあと。