過去は墓場まで持っていきたい3
「強盗事件の半年後なんだけどね、従兄弟と歩いていたら、通り魔に襲われて、取っ組みあいになったあと」
刺されたというわけですか。
うん、納得出来ない。
「ナイフとかは」
「うん、持ってたよ、あの事件からは常に持ってたから」
見つかったら速攻でお巡りさん呼ばれてただろうな。
「でも、結局刺せなかったと」
「そうだよ、なんで刺せないんだろうね」
「常識人だからでしょう。そんな進んで人間殺そうとしないで下さい」
口ぶりからして深愛さんはどう考えても本気なようだ。
「でも辛いんだよ、自分の周りの人が自分の所為で死んでいくって」
「だからあなたの所為じゃないでしょう」
「じゃあただじっと見てろって言うの?」
「それは………まぁ………」
つぎの言葉が見つからなくて言い淀む。確かにそれも一理あるし、自分だったら刺していそうだし。
とはいえ
「そんなこと出来る人なんて一握りですし、大抵そういう人は録でも無いですから」
例えば俺とか母親とか強盗とか通り魔とか。
「そんな人間には憧れないほうがいいんですよ」
「……………………」
一応伝えることは伝えたからとりあえずはよしとしよう。これ以上喋っても単なる議論になりそうだし。
と言ってもまたそんな刃物沙汰にならない限りは深愛さんがおかしくなったりはしないだろうけど。あ、そうだ。
「なんでこんなにいろいろ話してくれたんですか?」
「母親が同じだから。こういえば分かる?」
「十分分かりました」
つまりは
あの母親の息子なら自分の満足する答えが、自分と同じ答えが返ってくるだろうと思った訳か。
良かったね、
俺たち気が合うかもしれないよ。
遅れてすみませんでした。
何か付けた方がいいタグなどあったら、教えていただけると助かります。