コップと水
前に投稿させてもらいました水とコップという詩を元に短編小説風に書いてみました。元となった詩も読んで頂きたいです。
蝉の声と日差しが降り注ぐ夏色を感じる暑い日
喉の渇きを覚え目の前にあったコップに目をやり
「このコップに水を一杯くれないか」
僕は君にそう伝えると、まだ途中だった足の指の爪を再び切りはじめた。
パチンパチン・・・・と爪が勢いよく新聞紙の上に転げ落ちる。
コトン・・・光輝く水の入った透明なコップがテーブルの上に置かれるのに気づき
僕は爪を切るのをやめた。
「ありがとう」
と君に一言礼を言うと君は不思議そうな顔で微笑んだ。
この暑さのせいかゴクンゴクンと水を一息で飲み干す。
僕はなぜだか幸せな気分に浸った。
空のコップに映るあなたを見つめて
僕は水が喉に通る感覚が愛に似てるか悩む
君から渡されたコップの中に愛なんてないと思った。
けれどその水を飲んだ瞬間幸せになったんだ。
喉の渇きを潤す事で得られる感覚なら知っている。
それとも違うもっと別の感覚
君の透き通るような笑顔を見れるだけで幸せだ。
当たり前にもらった水の入ったコップ
君の愛がそんな所にもあったなんて今まで気が付かなかった。
「水をもう一杯下さい」
僕は知らずに君に敬語を使っていた。
「ふふ」と笑うと
君は空のコップを持ち台所へと足を運んだ。
愛に色はない事も知っている
水に色はない事も知っている
でも確かにそこには色鮮やかな日常があるんだ。
詩を中心に書いているので、字数に悩まされました。
小説を書かれている方をとても尊敬します。
詩ブログみたいな物もやっています。良かったらお越し下さい。
http://tsirot.exblog.jp/