黒魔術はお好き?
世の中には変わった人が多い。とはいえ―。
「そこのかっこいいお兄さん達。あなた黒魔術サークルに興味ないかしら?」
大学内を友人の野沢敦と歩いていたら、こんな言葉をかけられた。
敦はこの言葉に思いきりひいた。当然だろう。普通はカルト勧誘か何かと思うよな。
「すいません。俺達興味「はい、興味あります。」オイッ!?」
敦をさえぎって俺は彼女に声をかけた。
「そう、じゃあ、今時間あるかな?」
「はい。」
「じゃあ部室に案内するから付いて来て❤」
ハートマークがつきそうなほど女性はいい笑顔で笑った。
「おい、何考えてんだ!?」
彼女が前を向いた途端敦が突っかかってくる。
「何って・・・。面白そうだから。」
「明らかにやばそうな臭いがするだろうが!宗教がからんでたらどうすんだ!」
「大丈夫だ。彼女は宗教系の人間じゃない。」
「初対面だろうが!彼女の名前も知らないだろうが!百歩譲って宗教がからんでないとしても、悪魔を呼び出すとか言って人骨を使った儀式を行うとか、血で魔法陣を描くとか、マトモに黒魔術を行うサークルだったらどうすんだよ!」
ガタイのいい男が本気で脅えているのは初めて見たが、はっきり言ってあまり見るもんじゃないな。
「何変な顔してるんだ!こっちはたった二人だぞ!襲われたらどうすんだ!」
「いや、お前本気で言ってんのか?」
身長180センチの元剣道部の副将を襲うって、どんな勇者だよ。
「―お前が主将になれなかったわけがわかるような気がするな。」
「ってなんでそうなる!?」
ごちゃごちゃと話し合っていると女性がこっちを振り返った。
とたんにビクッと敦が震えるが、それに構わず彼女は言った。
「着いたわよ。」
目の前にはあったのは細長いプレハブの建物だった。
扉には「ようこそ、黒魔術サークルへ★」と金属のプレートがかけられていた。
「ささ、遠慮せずにどーぞ!」
「いえ、あの「はい。おじゃまします。」ってええええ!」