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第2話「伝説のミュージックホーン」

[強風と吹雪の世界ブリザッド-文明レベル 近未来-]

風速40メートル以上の強風が常に吹き荒れる気温-40度の極寒の吹雪の世界。

当然、ほとんどの生物が生きていくことはできない死の世界である。

しかし、この死の世界にも生物が住める唯一の場所がある。

それでは地下である。


【ブリザッド居住地】

地下深くに作られたこの居住地は、極寒の世界から生物を守る唯一の場所となっている。

居住地は入り組んだ地下街の様な構造でブリザッド中央国際ターミナルステーションを中心とした地下リゾート都市になっいる。

年間を通して観光客で賑わうこの街には地熱を利用して作られた暖房用の蒸気を循環するパイプが張り巡らされていて、あちこちで蒸気が吹き出し街全体にモヤがかかっている。


[ブリザッド国際ターミナルステーション]

60線61面という巨大な地下ターミナルステーションの各番線には、出発を待つ列車が整然と並んでいた。

地下駅にも関わらずもうもうと煙を立ち上らせる蒸気機関車や大型のEMD型を思わせるディーゼル電気機関車の姿が多く見られる。

通常の地下駅でこんな事をすれば、たちまち駅構内にばい煙が立ち込め、利用客からの苦情の嵐となる。

しかしこの駅では、強力な換気システムを惜しみ無く設置する事でその問題を解決している。

そんな、もうもうと煙をあげるはた迷惑な列車達に混ざり、排気の少ないディーゼルカータイプの車輌や電車タイプの車輌の姿も数輌見られる。

キハ8500系気動車もその数輌のひとつである。

このキハ8500系気動車に与えられた列車名は「Snow express」

この列車は回遊特急と呼ばれる特殊な種別を持つ列車で、固定された運行区間を持たず、利用客の動向に合わせて運行区間が1日単位で変更され、まるで回遊魚の様に広大な鉄道網内を回遊する不思議な列車である。


スノウ

「御乗車のお客様にご連絡いたします。現在滑走軌道出口付近の除雪のため出発を見合わせております。今しばらくお待ち頂きますようお願いいたします。」


車内にスノウの清んだ声が響き渡る。

スノウは、車内放送を使わずに、1輌1輌の利用客に直接現状を伝えて回っている。

列車の出発時間は予定より既に1時間遅れている。

その割りに、乗客は慌てる様子も無く落ち着いている。

というのも、このブリザッドでは出発で遅れるのは日常茶飯事であり、ダイヤもそれを前提にある程度余裕を持って組まれている。

そのため、出発が数時間遅れても次停車駅までには定時で到着可能だからである。

問題は、目的地までの軌道予約がスムーズにできるかである。

この駅の状態を見れば解る様に、除雪が完了し通行可能になった瞬間に、滑走軌道、空中軌道そして亜空間軌道に列車が殺到し渋滞となる。

その渋滞に巻き込まれる前に、滑走軌道、空中軌道、亜空間軌道の軌道予約をして出発しなければならないのだ。

もしここでしくじれば、更に数時間の遅れが出てしまうのである。


そのとき、「Snow express 」が停車している43番線の出発信号機が「進行」に変わった。

他の番線のいくつかの出発信号機もそれに数秒遅れて「進行」に変わった。

どうやらスノウが最速で軌道予約を完了したようだ。

さすが戦闘列車用ベースの高性能TCAIである。(運行に関してだけは……)


合成音声

「オ待タセイタシマシタ、43番線、回遊特急Snow express 間モナク発車イタシマス」


無機質な合成音声の放送と共にプルルルルルルという発車ベルが鳴り響き、それが鳴り止む。


合成音声

「扉ガ閉マリマス、閉マル扉ニゴ注意クダサイ」



スノウはそれに合わせて笛を力一杯吹き、安全確認しつつ中間の3号車の乗務員室から列車の扉操作をする。

そして、車輌限界の都合で折り畳み式になっているドアが閉まるのを確認して・・・ミュージックホーンを鳴らした・・・しかも3号車の・・・


ミュージックホーン登載に関しては追い追い説明するとして、中間車輌からのミュージックホーンは無いだろう・・・

まぁとりあえず、明らかにおかしな場所から響き渡るミュージックホーンという違和感を振り撒きつつSnow express はエンジンを唸らせ急加速して、渡り線を次々と渡り目的の滑走軌道に向かう。


リアン

「またやったか・・・あのおバカ・・・」


苦笑いしながらリアンは腕を組み考え込む。

そう、スノウの中間車輌からうっかりミュージックホーンは今に始まった事では無い、みっともないから止める様に再三注意しているのだが、毎回これである・・・

更にわざとではないから更にたちが悪い・・・


リアン

「ミュージックホーン撤去するかな・・・」


リアンは一言呟き、歩きだした。

・・・3号車に向かって・・・。




そんな、死へのカウントダウンが始まっているとも知らず、スノウは満面の笑みで、発車後の案内放送を行っていた。

そして、放送が終わったのを見計らったかの様に、乗務員室の扉が勢いよく開けられた。


リアン

「よぉ、スノウ・・・ここは何号車だぁ?」


リアンそっくりの般若が・・・


それを見て思い出したのか、スノウは少し考え込んでから。


スノウ

「またやっちゃった、テヘッ♪」


可愛い仕草で誤魔化す作戦のようだ。


リアン

「ほぅ・・・なるほどねぇ」


当然、誤魔化せるはずもなく、イラッとゲージを振り切ったリアンは、ゆっくりと拳をスノウのコメカミにあてそして・・・


リアン

「そんなに地獄見たいんかワレェ!!!」


グリグリグリ・・・


スノウ

「ひぎゃぁぁ!もうしません!!もうしませんからぁぁぁ!!!」


某アニメの子供を叱る母親状態である。

それはさておき、Snow express は滑走軌道を加速しながら地上に向かうのであった。



…To be continued


中間運転台から車掌がミュージックホーンを鳴らすという伝説的ファンサービスは某大手私鉄の車輌で実際に行われた事があるそうですね。

動画で見てみましたが、やっぱり何か変というか、中間車でミュージックホーンって凄い違和感です。(面白いけどね)

後、キハ8500にミュージックホーン付いてるのかという質問には次のお話でお答えしたいと思います。



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