第31話「王家の存亡」
[王都ハイランド]
ハイランド王国の首都である王都ハイランドは、ダーク元帥率いる第3列車総隊とリック元帥率いる第6列車総隊の混成部隊の制圧下にあった。
城塞都市ウロでほぼ全ての兵力を失ったハイランド王国にこの強大な戦力を防ぐ手立てなどあるはずもなく、残された王族と遠征に参加出来なかった弱小貴族達は、王都の中心に位置する王城に立て籠るのが精一杯だった。
放送
「まもなく第13滑走軌道に列車が到着致します!!危険ですから線路から離れてください!!」
放送
「135留置線列車がまもなく出発時間です!!積み込み作業を急いでください!!」
市街地には仮設の留置線路や滑走軌道等の鉄道輸送用の施設が作られ、戦闘列車達が忙しく離発着を繰り返しこの王国にトドメを刺す準備をしていた。
ダーク元帥
「王国からの回答は?」
ローザ中将
「何も無しだ、残念だったな痛元帥閣下♪」
ルイーネフリーレンからこちらに移動していた第3列車総隊の旗車ヴェファリアⅡの中で、ダーク元帥がこの場の指揮をとっている。
当然彼の忠臣?であるローザ中将も一緒である。
現在、王城に立て籠る王族や貴族に対し降伏を勧告しているのだが、未だに何の回答も無く時間だけが過ぎているといった状況である。
ダーク元帥としては、速やかに王城を制圧し邪神様達の到着に備えたい所だが、総帥から王国の降伏を待つように指示を受けているため迂闊に動け無いのである。
まぁ、彼としては王都を制圧できた時点で面子は保てているので全く問題は無いのだが・・・
ダーク元帥
「できれば、王城制圧の手柄も欲しい所ですね・・・」
ローザ中将
「勝手に制圧して、王族が自決したらどうすんだよ?痛元帥閣下♪」
ダーク元帥
「うむ・・・確かにローザの言うt・・・」
ローザ中将
「さんはどうした?変態仮面野郎!!」
ダーク元帥
「・・・・・・確かにローザさんの言う通りですね。もうしばらく待ちましょう。」
ローザ中将
「さすが痛元帥閣下♪」
とりあえず、痛元帥閣下はローザ中将に手綱を握られ、平常運転中?のようなので問題は無いだろう・・・たぶん
バンッ
兵士
「報告します!!」
一人の兵士が列車内の指令室に慌ただしく駆け込み、ダーク元帥に敬礼をした。
ダーク元帥
「何事ですか騒々しい・・・」
兵士
「申し訳ありません、城門前に展開中の部隊から王族を名乗る一人の少女が投降してきたとの報告が・・・」
ダーク元帥
「ほう・・・少女とな?ッッッ!!」
少女という単語に反応したダーク元帥の足に、ローザ中将のハイヒールのかかとが容赦なく突き刺さる。
しかも、足の小指を正確に狙った一撃が・・・
当然、ダーク元帥は悶絶・・・することもできずその場に硬直してしまった。
蒼白になったその顔の額からは脂汗が・・・
ダーク元帥
「・・・は・・・話を・・・聞く・・・通して・・・ください・・・」
兵士
「了解しました!!」
絞り出す様に何とか返事をしたダーク元帥に対し、兵士は敬礼をし足早に指令室を出ていった。
兵士
「こちらでお待ち下さい。」
ヴェファリアⅡの最後尾の展望車に案内された青い髪の少女は、案内してくれた兵士に会釈し、近くの椅子に腰かけた。
少女は黒地に控えめな金糸をあしらった質素だが高貴な雰囲気を醸し出すドレスを見に纏い、一目で一般人では無い事が解る。
彼女の名は、プリンセス=サーラ=ハイランド。
そのプリンセスの称号とハイランドのファミリーネームが示す通り、このハイランド王国の姫である。
因みに、年齢は14歳と、ダーク元帥が最も好むお年頃である。
ガチャリ・・・
扉が開き、ダーク元帥が現れると、彼女は緊張の余り、その身を強ばらせる。
ダーク元帥
「お初にお目にかかります、ハイランド王国の姫君。」
ダーク元帥は部屋に入ると、深々と頭を下げ挨拶するなり、彼女の手を握りしめ
ダーク元帥
「おお、何と麗しい姫君だろうか、まるで私の荒んだ心の闇を照す太陽n・・・ウボァっ!!」
・・・そして、背後に控えていた満面の笑みのローザ中将に釘バットで殴り倒された・・・
もちろん、フルスイングで・・・
そのぶっ飛んだ状況に理解が追い付かないサーラ姫は、唖然としたまま固まっている。
ローザ中将
「いきなりつまみ食いとは、流石です痛元帥閣下♪」
ダーク元帥
「ローザさ・・・ぶべっ・・・今日は一段と・・・ぶらっ・・・激しい愛情表現で・・・ぶべらっ」
これ以上無い、満面の笑顔で倒れているダーク元帥に追い討ちをかけるローザ中将。
もちろん、釘バットで・・・
ローザ中将
「よう、初めまして、ローザ中将だ。見たところ、国王の娘のサーラ様とお見受けしますが?」
サーラ姫
「は・・・ハイ!私はプリンセス=サーラ=ハイランド、国王の娘です・・・(ひっ・・・何この人達・・・怖い)」
何処か遠い所へ行っていたサーラ姫の意識は、ローザ中将の声で呼び戻された。
しかし、その目の前では、満面の笑みで釘バットを打ち下ろすローザ中将と、それを愛情表現と言う変態仮面男という常軌を逸した光景が・・・
その常軌を逸した光景に怯えて萎縮してしまった彼女を誰が責められようか。
ダーク元帥
「で・・・では・・・要件を・・・聞きましょうか・・・」
サーラ姫
「ひぃ・・・」
ボロボロのダーク元帥が、生ける屍のごとく這い上がる様に、机から顔を出す。
そして、その行動が容赦なくサーラ姫のSPをえぐり取っていく。
サーラ姫
「いやぁぁぁこないでぇぇぇ!!」
バキッドカッゲシッ
どうやら、彼女のSPが尽きたらしい・・・
狂乱状態に陥った彼女は、ダーク元帥を殴る蹴る・・・手がつけられない状態となってしまった。
数分後・・・
ローザ中将
「落ち着いたか?」
サーラ姫
「は・・・はい、申し訳ありません・・・」
ローザ中将
「キニスルナ♪悪いのはそこの変態仮面野郎だからナ♪」
ダーク元帥
「(何この状態・・・まぁそれは後にして)要件を聞きましょうか。」
諸悪の根元の様に扱われるこの理不尽な状況に不満を感じながら、ダーク元帥はサーラ姫に要件を尋ねた。
サーラ姫
「はい・・・王都を占拠している軍隊を即刻引き揚げさせて下さい!このままでは市民の生活もままなりません!!」
ローザ中将
「は?」
ダーク元帥
「それは無理な相談ですね。」
サーラ姫の要件は、王都からの退去であった。
当然、ローザ中将は何言ってるの?バカなの?死ぬの?という表情をし、ダーク元帥は拒否する意向を彼女に伝えた。
サーラ姫
「何故ですか!民がこんなにも苦しんでいるというのに!!」
ローザ中将
「コイツの頭・・・沸いてる?」
ローザ中将が不快感を露にするのも無理はない。
現在のこの状況は、王族そして貴族達が誤った判断で国を動かした結果であり、民が苦しもうがそれは判断を誤った彼らの責任である。
それを、現在王都を占拠している自分達に責任を転換して、退去を求めるなど筋違いも甚だしい。
ダーク元帥
「そうですね・・・あなた方が無条件降伏すれば、国民生活は我々の元で元通り・・・いや、今以上に豊なものになりますよ。」
サーラ姫
「それは不可能です。ハイランド王国は王家によってのみ統治されるべきもので、王家による統治こそが民の幸せだからです。」
ローザ中将
「もう意味分かんねぇよコイツ・・・DQN認定確定ダヨ」
ダーク元帥の優しい降伏勧告も、とんでも理論を展開する彼女には全く意味を成さないようだ。
ダーク元帥
「おめでたい人だ・・・では交渉決裂です、お引き取りください。」
サーラ姫
「な・・・」
ダーク元帥
「一応言っておきましょう、我々は何時でも王城ごと吹き飛ばす事ができます、総帥のご命令ひとつで何時でもね・・・、その事はお忘れ無き様に、国王にお伝えください。」
サーラ姫
「そんな事をすれば民が・・・」
ダーク元帥
「反乱を起こすかもしれませんね。その時はこの地の住人を駆除し、更地にした後、国土を望む民族を移民させれば良いだけです。我々シュバルツァークロイツはそうやって反発する民族を駆除しつつ従順な民族を増やしてきました。反乱を起こし消えるのも、従順な民族として生き残るのも自由ですよ?」
サーラ姫
「この悪魔!!」
ダーク元帥
「私は夢魔と呼ばれる種族、悪魔とも呼ばれますがね・・・話しは以上です。おい!城門までお連れしろ。」
兵士
「はっ!!」
サーラ姫
「ちょっと!離しなささい!!この無礼者!!」
サーラ姫は、兵士に引きずられ、展望車から出ていった。
ダーク元帥
「疲れますね全く・・・」
ローザ中将
「今紅茶を淹れてやるから待ってろ、痛元帥閣下♪」
ダーク元帥
「適温で頼みます。」
ローザ中将
「チィッ・・・」
…To be continued
本当にDQNの平和主義者ってムカつきますね。
サーラ姫にはこの後地獄をみてもらいましょうか♪