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第16話「軍靴の足音」

[ルイーネフリーレン局地ターミナルステーション]


皐月

「密着自動連結型の共通規格連結器と密着連結型の共通規格連結器を繋ぐコネクターなんやけど・・・」


ラビ

「んで、これをどうせい言うんや?」


皐月

「そら、スノウ君との連結のためやおまへんどすか♪」


ラビ

「だから、何でそないな事せなあかんねや?」


皐月

「そんなん決まっとります♪ かいらしいスノウ君とやんちゃなラビ君の連結・・・うっすい本のネタに・・・」


ラビ

「何を考えとんねんこの変態女!!」


皐月

「ええやおまへんか。 減るもんやおまへんどすし♪」


ラビ

(あね)さんの頭ん中がどうなっとるんか、カチ割って見てみたいわ・・・」


留置線に停車するSuper rabbiの屋根の上では、ラビと皐月が漫才トークを繰り広げていた。


ズンズン・・・ズンズン・・・


その横を、重たいジョイント音を響かせ、パシナ型を思わせる流線形の蒸気機関車に牽引された全身を装甲板で覆った戦闘列車が次々と走り抜けて行く。

強風と吹雪の世界ブリザッドを拠点に路線の防衛をする防衛局第3列車総隊に所属する軽戦闘列車達である。

軽戦闘列車という種別ではあるが、通常の車輌とは桁違いの重量の車輌であり、列車が走る度に局地路線の貧弱な軌道がミシミシと悲鳴を上げる・・・


皐月

「やっぱり戦争になるんどすなぁ・・・あないな車輌はあんまり見たくあらへんどす・・・」


皐月はそんな戦闘列車を悲しそうに見つめながら呟いた・・・




[魔法都市マジーアルノ]


エセフ

「シュバルツァークロイツのクソ共に告ぐ!!強奪した実験体を連れ速やかに投降しろ!!さもなくばこのクソジジイが死ぬ事になるぞ!!」


エセフに率いられた魔法近衛団の一団は、イブトの兄でありフィロの主人でもあるアブトを十字架に張り付け、街を練り歩いている。


エセフ

「ちぃ・・・全然出てこねぇじゃねえか!!誰だよジジイを囮にするってぇ言い出した奴ぁよぉ・・・」


魔法近衛団団長

「はっ!!エセフ様ご自身であります!!」


エセフ

「うるせぇよヒゲ!!で、どうするよ・・・」


魔法近衛団団長

「・・・どうすると申されましても・・・相手が誘いに乗らぬ以上、一旦戻って策を練り直すのが得策かと・・・」


エセフ

「だよなぁ、それしか無ぇよな・・・てか誰だよこんなクソ作戦考えた奴ぁよぉ・・・」


魔法近衛団団長

「はっ!!エセフ様ご自身であります!!」


エセフ

「だから、うるせぇって言ってんだろヒゲ!!」


団長を怒鳴り付けたエセフは、手で魔法近衛団に合図を出す。

それに合わせ魔法近衛団兵は、一斉に進行方向を変え、最短コースで賢者の塔に向かって歩き出す。



スノウ

「引き返すみたい、今が仕掛けるチャンス!!」


リアン

「待てスノウ!!ジマー、この先で仕掛けるのに最適なポイントは?」


ジマー嬢

「ルート予測だと、1ヵ所細い路地があるわね・・・そこなら上手くやれば第1撃でかなりの数が減らせる筈よ。」


リアン

「よし、そこへ先回りして待ち伏せだな・・・」



リアンの指示に全員が頷き、裏路地を走り出す。



[ルイーネフリーレン通商連合本部]


貴族風の男

「大賢者ジョセフよ、そちの言いたい事は理解できなくもない・・・」


ジョセフ

「ならば・・・穏便に事を・・・」


貴族風の男

「だが、私の利権の問題でもあるの・・・通商連合の馬車網、それにより築き上げてきた利権が新参者の何処の馬の骨とも知れぬ組織の鉄道網とやらに脅かされておるのだ・・・これを許せと申すか?」


通商連合本部の一室では大賢者ジョセフ=ケトムと通商連合の支配者、アルトゥール=マルシャノブル=ヴァレント公爵が会談を行っていた。

しかし、穏便に事を進め、シュバルツァークロイツとの摩擦を避け、ウェストハイトの平和を維持したいジョセフと自ら築き上げてきた利権を守る為なら、シュバルツァークロイツとの戦争も辞さぬ構えのアルトゥール公爵との隔たりは大きく、双方の意見は並行線をたどっていた・・・


ジョセフ

「じゃが、シュバルツァークロイツと戦えばこの世界なんぞ一瞬で呑み込まれるのじゃぞ!!なぜそれが分からぬ!!」


アルトゥール公爵

「お言葉だが、シュバルツァークロイツにその様な力があるのならば当の昔にそうなっておるのでは無いのか?それが無いという事は、それを行うだけの力が無いという証では無いのか?」


ジョセフ

「あの組織は、まだ本気でこの世界を侵攻しておらんだけじゃ!!あの組織の今見せている姿はほんの一部でしかない・・・」


アルトゥール公爵

「ほう・・・それは何処の情報ですかな?」


ジョセフ

「ルイーネフリーレンの駅長となり内情を探っておるフォマーからの情報じゃ!!奴ならば、ワシ等が掴めぬ情報を持っておる・・・」


アルトゥール公爵

「それならば、機関区長のダヒドとて同じ・・・彼からの情報では、一部得体の知れぬ技術を使用している様だが、ほとんどの技術力では我等と同程度と聞いているがな・・・」


ジョセフ

「ダヒドじゃと?奴は組織に半ば反旗を翻しておる人物じゃぞ!!そんな奴に正確な情報が掴る筈が無いという事が分からんのか?」


アルトゥール公爵

「やれやれ、これ以上お話しても時間の無駄の様だ・・・我等通商連合は利権を守る為ならシュバルツァークロイツとの戦争も辞さぬ覚悟で事に臨んでいます。これ以上の邪魔は温厚な私でも何をするか分かりませんよ?」


ジョセフ

「ぐぅ・・・」


通商連合職員

「アルトゥール公爵!!ルイーネフリーレン局地ターミナルステーションにシュバルツァークロイツの兵力が集結中です。」


アルトゥール公爵の静かな圧力に押されたジョセフが、次の言葉を失い考え込んだ時、青ざめた表情の通商連合の職員が部屋に駆け込んできた。


アルトゥール公爵

「どの程度の戦力だ?」


通商連合職員

「それが、未知の兵器で武装していてどれだけの戦力なのか全く把握することが・・・」


アルトゥール公爵

「ぬぅ・・・具体的にどの様な兵器なのだ?」


通商連合職員

「全身が鉄で覆われた車に、轟音を上げて飛び回る鉄の鳥と回転する翼を持った空飛ぶ鉄の箱など、今まで見たことも無い様なものばかりです・・・」


ジョセフ

「済まぬが、その形を絵に書いて貰えるかの?」


通商連合職員

「はい、覚えている範囲でなら・・・」


ジョセフの頼みに躊躇いながらも、見てきた未知の兵器の絵を描いていく職員だった。

その上手いとは言えない絵を元に、フォマーから受け取った情報と照合し、結論を導きだそうとするジョセフ・・・

そして、程なくして結論が導きだされた。


ジョセフ

「これは、主力戦車といって、この筒から高速で弾丸を打ち出し攻撃するもの、これはトラックといって、馬車より大量の荷物や人員を運ぶもの、これは戦闘機といって、音より速く飛び回り空から敵を攻撃するもの、そしてこれが攻撃機といって、戦闘機を地上攻撃に特化したもの、そしてこれが攻撃ヘリコプターといって、空中で静止できる攻撃機と言って良い。そしてこれらは馬や魔法生物と違い、心を持たず疲れも痛みも知らぬ・・・どうじゃ?勝てそうか?」


アルトゥール公爵

「そ・・・そのような物、この世界に存在するはずが・・・」


ジョセフ

「この世界には存在せんじゃろうな・・・奴等は異世界からこちらに来ておるのじゃからな・・・今矛を納めればフォマーが上手く穏便に事を進めるじゃろう・・・奴等と戦うというバカな考えは捨てるのじゃ!!!」



アルトゥール公爵

「み・・・見くびって貰っては困るな・・・この様な世迷い言だれが・・・」


ジョセフ

「じゃが現に・・・」


アルトゥール公爵

「黙れ!!」


ザシュッ・・・ゴロン・・・ドサッ


アルトゥール公爵は腰の剣を抜き放ち、ジョセフの首をはねた。

胴体から切り離された首が地面に転がり、少しの間をおいて首から血を吹き出しながらジョセフの体が崩れ落ちる。


通商連合職員

「ひぃぃぃぃぃ!!」


悲鳴を上げる通商連合職員の目の前には、吹き出した血の水溜まりができ、その真ん中では首を失ったジョセフの体がビクンビクンと脈打つ様に死後の痙攣をおこしていた・・・


アルトゥール公爵

「シュバルツァークロイツと一戦交えるぞ!!直ぐに準備にかかれ!!」


剣を鞘に納めながら、目の前の光景を凝視し続ける職員に指示を出すアルトゥール公爵だが・・・


通商連合職員

「は・・・ひ・・・あ・・・」


職員は目の前の光景を凝視し続けるだけで、何の反応も示さない・・・


アルトゥール公爵

「聞こえなかったのか!!直ぐに準備にかかれ!!」


通商連合職員

「は・・・はひ・・ただいま!!」


それに気分を害したアルトゥール公爵の一喝で、職員は我に帰り慌てて部屋を出て行く。


アルトゥール公爵

「この世界は私の物だ・・・誰にも渡さぬ・・・」


床に転がったジョセフの首を掴み上げ、それに向かって話し掛けるアルトゥール公爵・・・

その眼には、狂気が宿り怪しげな光を放っていた・・・




…To be continued



とうとうダーク=キット元帥率いる防衛局第3列車総隊の登場です。

皐月が防衛局に好意的で無い理由は彼女の過去にあるのですが、それはまた後のお話で・・・


それでは久々に、ジーク・シュバルツァー!!!

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