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第15話「馬鹿息子の私兵」

[魔法都市マジーアルノ]


都市の中心部にそびえる巨大な塔・・・

この都市に住む者はこの巨大な建造物を賢者の塔と呼ぶ。

賢者の塔には多くの賢者達が住まい、この都市国家の政治中枢を担っている。


魔法近衛団団長

「どうやら、逃げた実験体はシュバルツァークロイツが保護したようです・・・」


年老いた賢者

「厄介なのが絡んできおったのぉ・・・」


若い賢者

「ふん!!シュバルツァークロイツといっても、戦闘部隊では無い、ならば簡単に撃破できたであろう!!これは怠慢でしかないな!!」



年老いた賢者

「馬鹿者!!そんなことをすればこのマジーアルノが廃墟になるのじゃぞ!!そんなことも判らんのか!!」


賢者の塔の一室では、先のフィロの一件の報告のため魔法近衛団団長が二人の賢者に謁見していた。

白髪で長い髭を蓄え、金色の杖で身体を支える灰色のローブの年老いた賢者がこの都市国家の元首である大賢者ジョセフ=ケトムで、その傍らに居るブラウンの髪のにやけ顔の黒いローブの若い賢者がその息子エセフ=ケトムである。

ジョセフは慎重な性格で、無謀な事を何よりも嫌がるのに対し、エセフは細かい事を考えるのが嫌いで、力任せに行動したがる・・・

当然二人の意見は衝突していた。


エセフ

「人生守りに入ったご老体の弱腰にしか見えぬな。」


ジョセフ

「何じゃとこの馬鹿息子が!!これは大賢者であるワシの判断じゃ!!しばらく監視を続け様子を伺う・・・絶対に勝手な真似はするでないぞ!!」


双方の意見は平行線をたどり、結果ジョセフが強引に自らの意見を通す形になった。

そしてジョセフはそのまま部屋を出ていってしまった。


エセフ

「ちっ・・・くそジジイが・・・」


残されたエセフは舌打ちと共に不満を露にした。

そして、何かを思い付いた様に頷き魔法近衛団団長の方を見た。


エセフ

「おい!お前!!」


魔法近衛団団長

「はっ!」


エセフ

「お前は俺の直属の部下だったよな?」


魔法近衛団団長

「はっ!魔法近衛団はエセフ様の私兵であります!!」


エセフ

「だよなぁ(ニヤリ)」


魔法近衛団団長

「も・・・もしや!!なりませんぞ!!先程大賢者様から・・・」


エセフ

「あぁ?あの老いぼれがどうしたって?お前は俺の部下だろ?」


魔法近衛団団長

「し・・・しかし大賢者様に逆らっては・・・」


エセフ

「老いぼれはこの後、ルイーネフリーレンに向かうだろ、つまりここには居ねぇ・・・って事はだ、俺様が一番偉いんだよ!!」


実はジョセフはこの後、ルイーネフリーレンの通商連合本部に向かう予定があったのである。

それで、先程の去り際に「絶対に勝手な真似はするな」と釘を刺していたのだが・・・


エセフ

「実験体を誘きだす・・・そうだな・・・あの拘束したジジイを餌にするか。」


魔法近衛団団長

「なりません!!そんなことをすれば向こうに奪還のチャンスを・・・」


エセフ

「うるせえんだよ!!このヒゲ!!それとも何か?騎士が主に逆らうってのか?ええ?」


魔法近衛団団長

「そ・・・その様な事は・・・」


エセフ

「だったらてめえは俺様の言う通りに動いてりゃ良いんだよ!!分かったか!!」


魔法近衛団団長

「・・・・・・わ・・・分かりました・・・」


どうやら、ジョセフの刺した釘は意味を成さなかったようだ・・・



[とある宿屋]


リアン、スノウ、ジマー嬢、フィロ、イブトの5人は、表通りから離れた怪しげな店が立ち並ぶ裏通りの一角にある一件のぼろぼろの宿屋で今後の計画を話し合っていた。


イブト

「問題はアブト(フィロの主人)が捕らえられている賢者の塔の厳重な警備じゃな・・・」


ジマー嬢

「それより重要な事を忘れていないかしら?」


イブト

「重要な事じゃと?」


ジマー嬢

「私達の力を使う理由よ!!トラベラーズパスを持っているフィロを守る為なら何の問題もない・・・でもフィロの主人を助ける為に使うには何らかの理由が必要になるわ。」


スノウ

「ああ!!そうか、フィロの主人はトラベラーズパスを持って無いんだ・・・困ったなぁ・・・」


腕を組み、考え込む一同だったが、リアンだけは違った。


リアン

「私達の力を行使する大義名分を作ることは可能だ・・・」


リアンは、フィロの方を見て、更に詳しく説明をする。


リアン

「私達、乗務員には乗客を守る義務がある・・・万が一、乗客が連れ去られた場合は、救助する義務が発生する・・・」


ジマー嬢

「つまり、フィロを囮にしてそれを助ける為に私達の力を行使するって事・・・本末転倒ね・・・」


仕方が無い事だが、納得ができないジマー嬢の頭を撫でながらリアンは説明を続ける。


リアン

「それしか方法が無いのだから仕方が無い・・・後はそのドサクサに紛れてついてきてしまう・・・と。」


ジマー嬢

「・・・完全な茶番劇ね・・・まぁ、それしか方法は無さそうだから反対はしないけど・・・どうもスッキリしないわね・・・」


リアンの手をうっとおしそうに振り払ったジマー嬢は、納得はできないものの、それ以外に方法が無いため、賛同の意志を示した。


リアン

「後は、フィロの意志次第だが・・・囮として一旦賢者の塔に捕まって貰うが問題ないか?」


フィロ

「助けに来てくれるなら問題ないぞ♪」


リアンの問いに、ぴょんぴょんと子供の様に跳び跳ねながら無邪気に答えるフィロ・・・

危険が無いとは言えない場所に、こんな子を向かわせるのは、非常に心が痛むが、他に方法が無いのだから仕方が無い・・・

リアンはそう自分に言い聞かせ、ゆっくりと頷いた。


イブト

「後は、賢者の塔の警備をどうするかじゃな・・・」


その様子を伺っていた、イブトが議題を元に戻した、その時・・・


宿屋のおばちゃん

「大変だよイブトさん!!」


宿屋のおばちゃんが青ざめた顔で部屋に駆け込んで来た


イブト

「ノックも無しに入って来るとは、一体何事じゃ?」


宿屋のおばちゃん

「それどころじゃ無いよ!外を見とくれ!!」


宿屋のおばちゃんに言われるまま、宿屋の窓から外の様子を見た5人は、その光景に驚愕した。

街の表通りを、魔法近衛団の隊列が十字架に張り付けにしたアブトを連れ練り歩いていたのだ。


イブト

「なんと言う事を・・・」


リアン

「私達を誘き出すつもりだな・・・だがこれは好都合だ、賢者の塔に乗り込む必要が無くなった。」


ジマー嬢

「その様ね・・・それと、あいつら(魔法近衛団)ボコボコにして良いかしら?フィロを護衛するのが目的なら大丈夫よね?」


取り乱してるイブトとは対称的に、リアンは冷静に状況を分析している。

そして、余り乗る気では無かったジマー嬢が、うって代わり殺る気満々になっている。

彼女は、良くも悪くも真っ直ぐな性格なので、この魔法近衛団の行いは彼女の怒りを爆発させてしまったようだ。


スノウ

「ボクもこれは許せないです・・・暴れても良いですよね。」


ジマー嬢

「あら、珍しく意見が合ったわね。それじゃあ・・・」


リアン

「二人とも落ち着け!!」


リアンはすかさず、飛び出して行こうとしたスノウとジマー嬢の首根っこを掴み、それを阻止する。


スノウ

「ちょ、リアンさん!!」


ジマー嬢

「ちょっと、何で邪魔するのよ!!」


首根っこを捕まれた状態で、じたばたする二人・・・一見すると、駄々をこねる子供の様だが、二人とも機能制限が解除されているのでその力は半端では無い・・・

それを一人ずつ片手で止めてしまうリアンはさすがバンパイアと言わざるえないだろう・・・


リアン

「まずは頭を冷やせ、今出ていっても奴等は準備万端で待ち構えている、仕掛けるのはもう少し待て。」


リアンは、魔法近衛団の連中が待ちくたびれ、緊張が途切れるのを待って仕掛けるつもりの様だ。

その意図が理解できた二人は、渋々だが暴れるのを止めた。


それを確認したリアンは、二人から手を離し、腕を回す。


リアン

「痛ってぇ・・・お前ら何て馬鹿力なんだよ・・・腕が抜けるかと思ったぞ。」


ジマー嬢

「それを片手で止めてしまう貴方も相当だと思うわね・・・」


リアンとジマー嬢がお互いに笑っている。

どうやら、最初の険悪な関係から随分と改善している様だ。


スノウ

「それじゃあ、範囲型光学迷彩で姿を隠して様子を伺ってみましょう。」


一同が頷くのを確認してスノウは範囲型の光学迷彩のスクリーンを展開する。

5人は再び、風景に溶け込む様に消えてしまった。



…To be continued

賢者の塔の支配者ジョセフ、そしてその馬鹿息子のエセフ。

穏便に事を進めようとする父に対し、過激な馬鹿息子がそれをぶち壊すお約束パターンでした。

実はシュバルツァークロイツは、この世界を武力侵攻をしたい防衛局と物流での実効支配に留めたい運行監理局とせめぎあいが続いていたりします。

今回の一件で、関係で関係が悪化すれば、防衛局が間違いなく動きだし最悪の結末となるでしょう。

ジョセフはそれを恐れて要るので、穏便に事を進めようとしていたにです。

さて、今後はどうなる事やら・・・

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