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第14話「乗客を守るために」

[ルイーネフリーレン局地ターミナルステーション]


ラビ

「おお、MD84系レールカーゴやんけ!!」


留置線に引き上げていたSuper rabbiの屋根の上で寝転がっていたラビが歓声をあげ起き上がった。

その目線の先には、ステーションの横に併設されている貨物ターミナルに雪崩れ込むMD84という形式のレールカーゴ(分散動力式の貨物列車)の姿があった。

外見はM250とほぼ同じだが、この車輌は、ディーゼルタイプのレールカーゴでヨーロッパで活躍するレールスプリンターと同じ方式の車輌である。

その為、非電化区間でも問題なく運行ができるという優れものである。

当然TCAI化がされているが、車掌業務が必要ないため、簡易型を装備している。


????

「また、サボってあかん子やね。」


声がした方を見ると、油まみれになった整備用のツナギを着た、長い黒髪の少女が立っていた。

彼女の名前は、御藤(ミフジ) 皐月(サツキ)で、ラビの保守を担当している専属の技術員である。

彼女の黒髪に真っ白な肌と黒い瞳という外見は、着物を着せたら間違いなく日本人形そのものになりそうである。

しかし、残念ながら彼女はズボンやシャツといったラフな服装を好んでいるため、その姿を見ることはできない。


ラビ

「なんや?エセ日本人形はんか・・・」


皐月

「相変わらず失礼な子やねぇ・・・」


あぐらをかき、いかにもダルそうに耳をほしりながら答えるラビに、皐月は苦笑いしながら柔らかい口調で答える。


皐月

「まぁええや、ちょい相談がおますんどす♪」


ラビ

「何か、きしょいな・・・」


皐月

「そないなこといわんといて♪悪い話やないから。」


疑いの眼差しで見つめるラビに、全く気にする事なく皐月は相談の内容を話始める。

満面の笑みで話す彼女のポーカーフェイスは完璧で、何を考えているのかを伺い知る事はできない。


ラビ

「姉さんの"悪い話やない"はアテにならへんしな・・・まぁ、話だけやったら聞いたるわ。」





[魔法都市マジーアルノ]


フィロ

「おおお!!ここが主人のお店だ!!」


フィロは嬉しそうに古びた一軒の商店を指差した。

よく見ると、店の灯りは消え人の気配が感じられず、ショーウィンドウには売家の貼り紙がされている状態だった。


フィロ

「おーい主人!帰ってきたぞ!居ないのか?」


灯りの消えた商店の扉を、笑顔で叩くフィロだったが、徐々にその笑顔が崩れ、鳴きそうな顔に変わっていく。


リアン

「普通じゃないな・・・どうやらフィロの主人は何かの事件に巻き込まれた様だな。」


不気味な気配を感じ取ったリアンが警戒しつつフィロを抱きあげる。


そして、「二人とも、システムロック解除しろ。」とスノウとジマー嬢に告げた。


その瞬間、スノウとジマー嬢のイヤーユニットの発光部分と瞳の色が淡い青色から鋭い赤色に変化した。


スノウ

「システムロック解除したよ。」


ジマー嬢

「こっちも解除完了・・・でもこんな所で戦闘なんてしたら大問題になるわよ!」


スノウは、いつもの調子でロック解除完了の報告をし、ジマー嬢はここでの戦闘のリスクを警告する。


制限モードから通常モードにシステムが移行した二人は、イヤーユニットに搭載されている高感度多目的センサーで周囲の状況を完全に掌握している。


当然、リアンが警戒している存在を感知し、それらが自分達を包囲している事に気付いている。


リアン

「フィロが乗客なら問題無い、もっともコイツが向こうに行くのを拒んだ場合に限られるが・・・」


リアンの言っている意味を理解出来ずに首を傾げるフィロだが、スノウとジマー嬢は納得したようだ。


そこへ、剣を携え鮮やかな近衛兵を思わせる正装に身を包んだ十数人の男達が、4人を取り囲む様な形で、風景から浮かび上がる様に現れた。


近衛兵?(団長)

「我々は、賢者の塔を守護する魔法近衛団である。その魔法生物は我等賢者の塔の管理する物であるので、引渡して頂こう!」


その中でも一際鮮やかな装備をみに纏った一人の男が、高圧的な態度で話しかけてきた。


リアン

「随分と上から目線だな・・・どうみてもお願いする立場のヤツがとる態度じゃねぇな・・・」


魔法近衛団兵A

「ふん・・・これでも丁寧に頼んでいるのだぞ、貴様らに拒否権は無いのだしな。」


スノウからタバコを取り返し、火を点けながら、高慢な態度を指摘するリアンだったが、魔法近衛団兵の一人が更に高慢な態度で話す。


フィロ

「あ!!こいつら、この前押し掛けてきて、主人の研究試料をよこせと脅してた奴等だ!!」


リアン

「・・・なるほど、つまりフィロを研究資料として差し出せという事だな・・・」


魔法近衛団兵B

「そういう事になるな、まぁ素直に引き渡した方が身のためだと思うが・・・」


リアンはタバコをひと吸いして、その煙を吐き出すと、ニヤリと笑う。


リアン

「だーれが、てめえらみたいな高慢ちき野郎に引き渡すかバーカ!!」


リアンは中指を立ててゲラゲラ笑っている。

当然、魔法近衛団兵達は殺気立ち、武器を構える。

しかし、魔法近衛団団長はそれを手で制し、話を続ける。


魔法近衛団団長

「この街で我等賢者の塔と事を構えるのは得策とは思えんが・・・」


リアン

「だろうな・・・だがフィロはシュバルツァークロイツ発行のトラベラーズパスを持った乗客だ、乗務員は乗客の安全を第一に考え行動する・・・何か問題があるか?」


魔法近衛団団長

「なんだと?」


リアン

「理解できなかったか?簡単な事だ、フィロはシュバルツァークロイツの大切なお客様って事だ。もし手を出すんならシュバルツァークロイツとの戦争になる!!理解できたか?」


魔法近衛団団長

「ぬぅ・・・良いだろう、ここは一旦引き下がろう・・・だが、我等賢者の塔を甘く見ない事だな・・・」


優雅にきびすを返し、立ち去る魔法近衛団団長、そしてそれに続き「このままで済むと思うなよ!!」「覚えておれ蛮族どもめ」と口々悪態をつきながらこの場を後にする魔法近衛団兵達・・・


どうやら、当面の危機は回避できたようだが・・・


ジマー嬢

「まだ、周りにうようよ居るわね・・・」


スノウ

「隙有らばって感じだね・・・このままで済みそうじゃなさそう・・・」


やはり、見える兵隊を下げただけで周囲には無数の敵が潜み、虎視眈々と狙って居るようだ。


リアン

「二人とも制限解除のまま警戒を継続しといてくれ。」


リアンの指示にスノウとジマー嬢が頷き答える。


リアン

「後は、フィロの主人をどう探すかだが・・・」


抱き上げているフィロを見ながら考えるリアンだったが、当のフィロは状況が理解できず首を傾げるだけだった。




老人の商人

「はて・・・お主らこの店の主人に用があるのかえ?」


不意に一人の老人の商人が話掛けてきたため警戒する4人だったが・・・


老人の商人

「ふぉふぉふぉ、そう警戒しなさるな、ワシはイブト=ハラムというここの主人の弟じゃ、賢者の塔の奴等に連れていかれたと聞いてな・・・」


ジマー嬢

「ハァ・・・音声解析、信頼度89%・・・まぁ信じても問題ないと思うわ。」


リアン

「なるほど・・・じゃあ話が早いな、爺さんコイツの主人を連れ戻すのを手伝ってくれ。」


抱き上げているフィロを差し出しすリアンからそれを受けとったイブトは、ゆっくりと頷く。


イブト

「元よりそのつもりじゃ、手伝うのはお主らじゃ・・・まぁ立ち話も何じゃ、ワシがとっている宿で話すとしよう・・・」


リアン

「そうしよう、だけどその前に・・・」


目で合図を送るリアンに気付いたスノウが、範囲型の光学迷彩を展開する。

すると、その場に居た5人が風景に融けるように消えてしまった。



…To be continued



小説スタイルを変えてからの初投稿になります。

会話に重点を置いて、スピーディーに展開させるようにしてみました。

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