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第12話「魔法都市マジーアルノ」

[魔法都市マジーアルノ]

凶暴な魔獸の闊歩する危険地帯、魔獣の森。

その奥深くには巨大な結界に守られたマジーアルノという魔法都市が存在する。

そこでは、日々様々な魔法研究が行われているが、その際に出る大量の廃棄物は魔法都市の外の森に捨てられ続けている。

廃棄物には、研究目的で造られた魔法生物も含まれる。

こうして捨てられた魔法生物は野生化し魔獣となるのである。

そう、この都市を取り巻く魔獣の森とは、この都市の繁栄の代償として産み出された負の創造物なのである。


そんな危険地帯を駆け抜けたSnow expressとWideview Зимаは都市の入口のひとつである地下道を通り、マジーアルノステーションに駆け込む。

ステーションはマジーアルノの地下に広がる魔導図書館の一角に存在する吹き抜けとなっている書庫の中央に作られている。

書庫は4線5面のホームを中心に円形の階段状に並んだ本棚がそびえる巨大空間で、魔法使いの格好をした長い耳をした人達が分厚い魔導書片手に歩いている。


そんな魔法の世界的な空間をぶち壊すかにように、場違いなミュージックホーンを奏でながらSnow expressとWideview Зимаが場内に進入してくる。

ちなみに、Wideview Зимаが先頭なので、ミュージックホーンを奏でているのは、並結面のSnow express先頭車である事を付け加えておこう。


当然、騒音を嫌う図書館利用者からは冷たい目線が向けられているが、スノウはお構い無しにミュージックホーンを列車が停車するまでならし続けた。

数にしてフルホーンが4コーラス・・・

普通の図書館なら間違いなくつまみ出して良いレベルである。

まぁ、幸いな事に一応ここは駅の施設でもあるので、つまみ出される事はない。

しかし、ミュージックホーンの自主規制の引き金にならないかは心配なところである。


駅員

「2番線に到着の列車はルイーネフリーレンから参りました、Snow expressとWideview Зимаです。当駅止まりですので、ご乗車にはなれませんのでご注意ください。」


列車が停車すると、ランプを持った魔法使いの格好をした駅員が、拡声の魔法で案内をする。


~♪アルプスの牧場(オルゴール)♪~

スノウ

「ご乗車ありがとうございます、Snow expressの扉は内側に折り畳んで開きます。扉付近のお客様は、開く扉にご注意くださ・・・」

ジマー嬢

「ちょっとスノウ!!何よ今のへっぽこチャイム!!なんでそんなの・・・(プツン)」



スノウの車内放送の途中でジマー嬢が割り込み、放送が途中でプツンと切れた。

まぁ、旧式気動車のオルゴールタイプのチャイムを鳴らされれば、鉄道ファンなら喜ぶかもしれないが、新型の高性能車としてプライドの高いジマー嬢は当然ブチッ切れるだろう。

なにせ、彼女は、旧式気動車と同等に扱われるのをこれ以上ない屈辱と感じているのだから・・・


ギム

「やれやれ、また始まったか・・・」


その放送を聞いたギムは、ため息混じりに立ち上がると、近くの乗務員室に駆け込み扉操作を行う。

どうやら、ジマー嬢がヘソを曲げた時の車掌業務はギムの担当らしい。

ちなみにスノウは、並結部分の乗務員室でジマー嬢に首を絞められ行動不能になっている。

遠隔操作車掌業務を行う事もできるが、今のスノウのAIにそんな余裕はない。


とりあえず扉が開くと乗客とそれに混じって、負傷者がルイーネフリーレンの職員に担がれ列車を降りていく。


ギム

「これで、一段落だな・・・そっちはこれからどうするつもりだ?」


乗降が終わり、一息ついたギムは近くでフィロの相手をしているリアンに今後の予定をたずねる。


リアン

「そうだな・・・とりあえずコイツの主人とやらに会わないとな・・・」


ギム

「荒事になりそうだな・・・ジマー嬢とスノウも連れていった方が良いな、列車の整備は俺がやっておく。」


フィロを抱き上げ答えるリアンの様子から、彼女が何をしようとしているかを悟ったギムは、安全を優先してTCAIインターフェースの二人を連れて行くように提案した。


ギム

「それと、この子の"トラベラーズパス"を作ってから行けよ、いざって時の理由になるからな・・・」


リアン

「分かってるって、スノウに作らせてから行くに決まってるだろ!」


ギムの忠告にうっとおしいと言わんばかりの表情で答えるリアン。

彼が言う"トラベラーズパス"と言うのは、シュバルツアークロイツが管理している旅行者管理データベースに登録する事で支給されるカードの事である。

このカードを所持している者は、シュバルツアークロイツの鉄道利用者としての身分が証明され、その生命の安全を保護する義務をシュバルツアークロイツ職員は負っているのである。


フィロが主人に会った場合考えられる対応は次の二つ。


1 追い出される

2 処分される


1の場合は、問題無いが、2の場合はリアンの性格上必ずフィロを護るだろう。

しかも、戦闘に不向きなフィロを魔獣の森という危険地帯に棄てた行動から考えれば、のたれ死ぬ事を前提に棄てた可能性が考えられる。

・・・技術的な情報が漏れないように。


そう考えると、フィロを護るための戦闘になる可能性が極めて高くなる。

しかし、シュバルツアークロイツ職員が理由も無く戦闘を行う訳にはいかない。

そこで役に立つのが先程の"トラベラーズパス"である。

フィロを"トラベラーズパス"を持つ乗客にしてしまえば乗客保護という立派な大義名分ができるのである。


リアン

「とりあえずスノウを探すか。」


フィロ

「スノウ探すぞぉ♪」


リアンと彼女に抱き抱えられたフィロは、後ろのSnow expressの車輌に向かう二人だったが、その先が修羅場となっている事など知るよしも無いのだった・・・




ジマー嬢

「ぜったい貴方わざとやってるでしょ!!そうとしか思えないわ!!」


スノウ

「わざとじゃな・・・グギギギ、首ジベダイデ・・・」


ジマー嬢

「うるさい!!」



スノウに馬乗りになったジマー嬢が、力任せにその首を締め付けている。

どうやらさっきのアルプスの牧場は超弩級の地雷だったようだ・・・



[ルイーネフリーレン局地ターミナルステーション]


ラビ

「な・・・何があったんや姉ちゃん!!」


フェルム中央ステーションから帰って来たSuper cielを見たラビが驚きの余り飛び上がる。

無理もない、列車の全面が血に染まっていたのだから・・・


シエル

「途中で動物を跳ねただけ・・・問題ない・・・」


ラビ

「問題大有りやろ!!ええ加減にせぇやこのボケ女!!」


シエル

「血塗られたヘッドマーク・・・」


ラビ

「アホ言うとらんで、はよ洗わんかいなボケぇ!!」


シエル

「掴みはOK・・・」


夕刻のルイーネフリーレンは平和であった・・・



…To be continued


Snow express車内チャイム装置は、特注品で、車内チャイムを何種類も記録する事ができます。

スノウの車内チャイムの悪ノリはこの装置が原因だったりします。

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