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第11話「フォマー駅長の意図」

[通常軌(道魔獣の森線)]


女の子

「も・・・も゛う゛た゛へ゛ら゛れ゛な゛い゛・・・」


排ガスを吸い続け、風船の様に丸々と膨らんだ女の子は、満足してその場に寝転がる。


リアン

「おお、予想以上に膨らんだな。」


その様子を見て、半笑いの表情で感心するリアン・・・


スノウ

「呑気に見てないで、この子を屋根から下ろすの手伝ってください!!」


丸々膨らんだ女の子を抱えながら怒りをアピールするが、リアンはお腹を抱えて笑い転げている。


ジマー嬢

「バカやってないでさっさと出発して頂きたいものね。」


呆れ顔で列車に戻るジマー嬢を余所に、このコントのワンシーンはしばらく続くのであった。




[ルイーネフリーレン局地ターミナルステーション]


先のバリケード粉砕事件から数時間、ステーションでは残骸の処理作業が続いていた。

そんななか、亜空間軌道線から次々と通常軌道用の列車が甲種回送(電車や気動車を機関車で牽引する回送方法)されて来ている。

亜空間軌道甲種回送用の機関車に牽引されている車輌たちは、キハ58系気動車、キハ40系気動車、キハ80系気動車とどれも今まで投入されてきた高性能気動車とは異なり、出力不足で運用に難のある車輌達である。


更にこの列車達は、スノウやジマー嬢といった高性能型のTCAIではなく、簡易型のTCAIを装備している。

簡易型TCAIには人形のインターフェースデバイスは無く、車掌の乗務が必要なタイプである。

高性能型の様に状況に応じて自由自在に対応することはできないが、製造コストが安価になる利点を生かし、大量生産され高い性能を要求されない局地路線に大量投入されているタイプでもある。


機関車から切り離された列車達は、黒煙を噴き上げ、次々とエンジンを起動させていく。


ステーション内がカラカラカラ・・・という低出力エンジン特有のトラックの様なエンジン音で満たされていく。

列車達は、しばらく暖気をした後、待避線に次々と移動していく。


駅職員

「随分旧式の車輌達ですね・・・昨日までのモンスター列車と比べるとかなり見劣しますね。」


駅長らしき男

「君は自動化列車がなぜここまで機関区労働組合に拒絶されたか分かりますか?」


駅舎の窓からその様子を眺めていた駅職員の一人の感想に、何か含みを持たせ答えるのは、このルイーネフリーレンの駅長、フォマー=ウームである。

びっしりと着こなされた赤い制服に綺麗に切り揃えられた髭を生やした片眼鏡の初老のその男性は、どこか貴族的な気品を感じさせる。


フォマー駅長

「機関区労働組合は自動化列車で自分達が不要となり切り捨てられる事を怖れているのです。もっとも、基幹線用の自動化列車を呼び寄せそういった不安を感じるように仕向けたのは私ですがね。」


なぜ?と首を傾げる職員を見て、更に彼は今回の意図を説明する。


フォマー駅長

「職員の権利を主張する事は大切です・・・しかし彼等は自分達が運行の全てを掌握していると思い込み、やり過ぎました。そこで、彼等に教える必要があったのです。彼等が居なくても運行は成り立つと・・・私が呼び寄せた自動化列車達はその役目を十分に果してくれました。・・・ただ、このままでは彼等は引き下がれない状況に追い込まれてしまいますし、私も以前の様な機関区主体の態勢に戻す気はありません・・・だからこそ、双方の妥協点が必要なのです。」


駅職員

「なるほど、だから旧式の気動車なんですね。」


フォマー駅長の説明を聞いて納得する職員だが、彼の表情は明るいものではなかった。


フォマー駅長

「乗務員としての逃道・・・彼等が賢明な判断を下す事を祈ります。(シュバルツァークロイツの力はこの世界の力ではどうしようもない・・・もう彼等の一部になるしか道は残されていないんですよ・・・)」


そんな彼の想いを気にする事無く、キハ58系気動車の様な顔でキハ80系気動車の様な特急塗装をまとった車輌がSnow expressと同じ旋律の少し音程のずれたミュージックホーンを奏でながらホームに入っていく。


[通常軌(道魔獣の森線)]


女の子が飛び出してきた事で、緊急停車していたSnow expressとWideview Зимаは、手早く安全確認を済ませ再び曲がりくねった路線を疾走していた。


リアン

「フィロかぁ、ギリシャ語で葉の意味だな・・・」


フィロ

「主人がつけてくれた、良い名だろ♪」


スノウは食堂車の仕事で手が離せない状態なので、代わりに怪我人の手当てが一段落したリアンが女の子の相手をしている。

彼女はフィロと言う名前で、彼女を造った魔術師が着けてくれたらしい。

しかし、彼女を造った魔術師は、彼女が不完全だと解ると、廃棄処分をしたらしい。

無論彼女は「起きたら森の中に居た」としか言っていないが、恐らくそういう事だろうとリアンが推測した。


リアン

「一応聞いておくが、この列車はマジーアルノに向かっている。到着してからはどうするつもりだ?」


フィロ

「主人を探すぞ♪」


リアン

「・・・そうか・・・」


リアンは目を閉じフィロの頭をやさしく撫でた。

しかしフィロは、その意味を理解できずにただ首を傾げるだけだった。


~♪ワイドビューチャイム♪~

ジマー嬢

「本日はSnow expressとWideview Зимаにご乗車頂き、誠にありがとうございます。まもなく終点マジーアルノに到着いたしますのでお忘れ物などございませんよう今一度ご確認ください。」

~♪ワイドビューチャイム♪~



…To be continued









今回は、国鉄形の気動車に混ざってキハ8000系気動車がちょっとだけ登場しています。気付いたかな?

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