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第9話「Crazy train」

[亜空間軌道ルイーネフリーレン信号所]


ルイーネフリーレンの入口に存在する信号所には、ルイーネフリーレン局地ターミナルステーションに停車する予定の列車や、亜空間軌道線が空くのを待つ列車が停車している。

その列車の中で一際異彩を放つ列車があった。

牽引する機関車は193tの巨体を持つEMD SD 90 MAC電気式ディーゼル機関車の重連(機関車2機を連結した状態で使用すること)で、その後には全長1キロ弱の貨物列車が連なっている。

この列車こそが、アイアンベルドからの長距離貨物列車である。


大男弟

「兄者!!そろそろ出発予定時間だぜヒャッハー!!」


大男兄

「焦るな弟者、ここはアイアンベルドではない!!」


前の機関車に乗り込んでいるのが兄(製造番号的な意味で)のアイン=グロフ、後ろの機関車に乗り込んでいるのが弟(製造番号的な意味で)のツバイ=グロフである。

二人はグロフシリーズという安価型TCAIのインターフェイスデバイスでその外見は、トサカ頭の某世紀末世界に出てくるような格好・・・どうみても三下やられ役ですありがとうございました的な格好である。


ツバイ

「兄者、弱気は良くないぜヒャッハー!!」


アイン

「なんだと?この俺様が弱気だと?良いだろう、時間通りに出発してやろうじゃねぇか!!」


そして、彼等グロフシリーズは、頭が余り宜しくない・・・いや、ハッキリ言って相当悪い。

理由は搭載スペースの問題と設計者は言い張っている・・・が、どうみてもわざととしか思えない悪意が感じられるのはきっと気のせいに違いない。

そして、信号無視や速度超過を日常的にやらかしているのも、システムの不具合が原因で彼等が意図的にやっている筈がない・・・。


ともあれ、ルイーネフリーレン信号所の出発時間になった貨物列車は、ゆっくりと動き始めた・・・停止信号を無視して・・・

これは鉄道用語で冒進というんだ、覚えておこう。

ATS?コイツら速攻で開放状態にしやがったさ・・・




[ルイーネフリーレン局地ターミナルステーション]


ギム

「落ち着けリアン!!ホームが空かない限り信号所で貨物列車は止まるはずだろう!!」


構内を全力疾走するリアンを追いかけるギムが彼女を落ち着かせようとする。


リアン

「相手はアイアンベルドの列車だぞ!!そんな常識が通用する相手か?」


しかし、リアンは足を緩める気配はない・・・


ギム

「だが、いくらなんでもs・・・」


ファァァァァァン!!


ギムが信号無視は無いだろうと言おうとした瞬間に、威圧するような5連ホーンが響き渡った。

その”無いだろう“が現実となってしまっているようだ・・・


ギム

「ばかな・・・アイアンベルドには閉塞運転(一定区間毎に線路を区切り、1区間に1列車のみしか入れないようにして衝突を防ぐ運転方法で現実の鉄道でも使用されている)という概念は無いのか?」


リアン

「呆れる暇があったら走れ!!」


唖然とするギムを尻目に、リアンは更に足を速め、常人では考えられない速さで4番線のホームに続く階段をかけ上がっていく。

さすがバンパイア・・・


しかし、彼女が階段を登り切った時には、既に4番線を貨物列車がとんでも無い速度で通過している最中だった。


貨物列車の先では、先頭のEMD SD 90 MAC電気式ディーゼル機関車が丁度バリケードを粉砕しているところであった。

大音響とともに木造客車はバラバラの木屑と台枠の残骸となり、小型の蒸気機関車は車体を大きく変型させながら撥ね飛ばされ、その衝撃でボイラーが破裂し高温の蒸気が撒き散らされた。

更に、吹き飛んだ鉄の塊は周囲の列車を巻き込み被害を拡大させる。

どうみても大惨事である。

その大惨事の中、貨物列車は速度を緩める事無く通過していった。


その後には、木と鉄でできた残骸の山が作られていた・・・まるで4番線に停車していたSnow expressの運命を伝えるかのように・・・


リアン

「そんな・・・嘘・・・だろ?」


リアンの悲しい問いには誰も答えない・・・


リアン

「スノォォォ!!」


スノウ

「ひぃぃぃ!なんかよく分かんないけどごめんなさい!!」


悲しみの余り絶叫したリアンだったが、その瞬間背後から声がした。


リアン

「へ?・・・スノウ?」


そして、振り返ったリアンはそのまま思考が停止した。

何故なら、列車と共に吹き飛んだ筈のスノウがそこに立っていたからだ。

更に、よく見るとその後ろには、Wideview Зимаと並結した状態でSnow expressが停車していた。


スノウ

「ジマーさんと行先が同じだったので、並結してしまった方が運行管理が楽かなと思ったので、勝手にやっちゃいました♪」


けろっとした表情で今の状況を説明するスノウだが、ポカンとした表情のまま固まったリアンの耳には届いていないようだ。


どうやらスノウは、あの後ラビの「どうせ行先同じなんやし、並結してしもうた方が楽でっしゃろー。」という提案で自分の列車をWideview Зимаと並結していたらしい。

そのお陰で、4番線を駆け抜けた災厄の化身、アイアンベルドの貨物列車の被害を受けずに住んだようだ。


リアン

「・・・成る程なぁ・・・」


頭の中の整理が終わり、状況を把握したリアンがむくりと立ち上がりゆっくりとスノウに歩み寄る。


リアン

「・・・てぇ事はだ、お前がちゃんとこっちに連絡してれば、私が全力疾走する事もなかったって事だよなぁ・・・」


リアンの顔は笑顔だが、目が笑っていない・・・


スノウ

「あ・・・すっかり忘れちゃってましたテヘッ♪」


リアン

「やかましぃ!!」


そして、いつも通り可愛く誤魔化そうとしたスノウが、リアンに頭をコツかれうずくまる。

その仲の良い二人の様子を列車の窓越しに眺めていたジマー嬢だったが、その表情は目線の先にある微笑ましい光景とは対照的に不機嫌極まりないといった感じだ。


ジマー嬢

「バカみたい・・・」


彼女が呟いた一言は二人に対してなのか、自分に対してなのかは分からない。

ただ、スノウと仲良くしている存在が気に食わない・・・自分が素直になれない分余計に・・・


ギム

「ジマー嬢、負傷者の収容をするから準備をしてくれ。」


ジマー嬢

「っ!!」


心の中に黒い感情が渦巻くなか、不意に話し掛けられ、驚いて思わず跳び跳ねるジマー嬢だったが・・・

その腹いせにギムの弁慶の泣き所をおもいっきり蹴飛ばしてから、その車輌を出ていった。


ギム

「っ・・・な・・・なぜ?」


残ったのは、突然の出来事に状況を理解できず、足を抱えうずくまる、ギムだけだった。






その後、バリケードが粉砕された際に負傷した機関区の労働組合員達の収容作業を終了したSnow expressとWideview Зимаは、この世界で唯一本格的な医療技術を持つ魔法都市マジーアルノに向かい出発するのだった。




…To be continued









これぞアメリカ!!という機関車といえば、EMD SD 80 MAC やEMD SD 90 MAC 等の大型の電気式ディーゼル機関車でしょう。

この、エンジンで発電機を回しモーターで駆動する重量級のモンスターは、日本では絶対に走れない車輌です。


まず、無駄に頑丈な車体は、事故の際の相手の安全は一切考えられていませんし、日本の鉄道で重要視される軽量化との相性も最悪です。

次に、その強力な牽引力で牽引される貨車の重量が原因で制動距離が数キロ必要となることも当たり前で、法律で定められた制動距離制限を余裕を持ってオーバーしてしまうレベルです。

もしも制動距離制限以内にするとすれば、牽引する貨車を減らすしかありませんが、それではこの機関車のパワーが無駄になってしまいます。


以上の理由を見るだけでも日本の鉄道に導入するメリットが見当たりません。

もし得られるメリットがあるとすれば、その粉砕能力で踏み切り事故=死亡事故という図式が完成され、その恐怖で無理な横断が減る程度でしょうね。

しかも、列車は大破せずに必ず車が大破するので、列車の運転士が怪我をする事は無いでしょう・・・


もしかしたら、JR北海道が行っている運転士を守る車輌の高運転台化より有効かもしれませんけどね♪(皮肉)

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