076 最大多数の最大幸福
クロエです!
「春眠暁を覚えず」という奴ですね!眠いのは、きっと春だからだよ!
市庁舎。
総務部長官室。
そこは市の情報が集まる場所である。
エメリックの下には、現在の市の最大問題である、増税による市民感情悪化とその対応策の状況が集まりつつあった。
(ふん、予想通りというところか)
彼は、まず苦情処理の件数、内容をまとめた報告について考えた。
報告は、短期的には増税を受け入れたものの、長期的には不穏な動きに発展しかねないとの所見でまとめられていた。
(それはそうだろう。生きるか税金を払うかの二者択一となれば、税金不払いしかないからな。そういった事情の市民に税金を取り立てようとすれば暴動になりかねん)
また、別の報告では、魔法院の新二年生による活躍で、マナ不足による市政の懸案事項が解消される傾向が報告されていた。
農業増産による税収増、医療体制の強化による人口減少への歯止め、水害予防による水害対策費の減少予想などだ。
(これをみれば、増税を一時対策として告知し、市政の改善とセットで市民感情の慰撫につなげられることになる。市庁のどの部門にとっても、反論の余地はないと断言できるな)
当然、この対策の限界も見えてくる。
(この対応策で、増税を期間限定とするためには、誰もが、魔法院での新二年生と同じような実力を一年生にも付与しなければ成立しないという結論に至るであろう)
魔法院の報告では、二年生が市のあちこちに散らばったため、従来実施されていた課外活動も休止になったという、小さなコメントもあった。
(しなければならないことをこなした結果、少女の周囲の人間関係が疎遠になったというわけだな)
(最大多数の最大幸福というわけだ)
エメリックは窓の外に目をやりつぶやくのだった。
「さて……猫の首に鈴をつけるのは誰の役目かな……」
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週末の1限は防御魔法の時間だけど、2限の専門魔法(今はアンチグラビティ)のレポートをバルに提出した。
2限から治癒院へ行くので、この時間に見てもらわないといけないのだ。
他の3人にウィンド・ウォールの指示を出した後、バルが私のレポートを読み込んでいる。
ふわ~
じっとしていると眠いかも。
ふわ~~~~
大あくびが出たところでバルに睨まれた!
ギロ!
やばっ!
「……
健康管理については、注意したはずだが……」
!
「すみません!」
「お前の考えでは、所謂前世知識と、この世界の物理法則に基本的に相違がないにも関わらず、魔法現象が発現できることには疑問があるというところでレポートが終わっている」
「アンチグラビティの発語がなぜ成立するのか、また代替的な発語があるのかについての検討が書かれていない」
(磁力の応用は考えがまとまらなかったんだよね)
「また、成立した発現現象の中断詠唱への検討も見られない」
ふっ、(だめ!がまんできない)ふわ~~~~
ギロリ!!
「やはり土コースの現場研修はやめ――」
「おねがいします!続けさせてください!みんな困ってるの!」
私はバルの言葉を思わず遮ってしまった。
…………
…………
…………
バルは静かに言った。
「まず、防御魔法はお前の安全につながる魔法であり、緊急性があることを自覚せよ」
「はい」
「専門魔法はそこまでの緊急性がないため、お前に関しては一時中断する。
レポート提出も取りやめとする」
(ほっ)
そこまで言うと、バルはいったん教室から出て行き、長い間席を外していたが、やがて、パオロ先生とアリシア先生を連れて帰ってきた。
「私は緊急の用事ができたため、しばらく王都に出張する」
え?
「その間、風コースの授業はパオロ先生とアリシア先生にお任せする。
パオロ先生はもともと風コースの教鞭を執っておられた。また、アリシア先生は魔法大学で風属性魔法を極めた碩学である」
ええ?
「クロエが市外に出る場合は、これまで通りアリシア先生に同行をお願いし、授業はパオロ先生にお願いすることで了解を得られた」
えええ?
「パオロ先生、あとはよろしくお願いします。
アリシア先生、クロエのことをよろしくお願いします。」
「クロエは自分の安全と健康を第一に考えよ。では、私はこれで失礼する」
バルは振り返らなかった。
あっという間にいなくなってしまった。
パオロ先生は呆然としてアリシア先生を見る。
アリシア先生もおんなじだ!
「私、魔法院の先生じゃないんだけど?
いいの?」
ルーカスは全く動揺を見せずに、
「一限の授業、どちらの先生に教えてもらえばいいでしょうか?」 にこっ
さすがルーカスだ!
パオロ先生
「この後市長が来るんだ。アリシア君、頼むよ……」
パオロ先生がしぼんで見えるよ、がんばれパオロ先生!
アーサーとマリィ
「やった!」「うれしい!」
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フェデリーコ市長
「パオロさん、このところの魔法院の活躍には目を瞠るものがありますね。市としては大いに感謝しております」
パオロ副校長
「いやいや」
「このままご支援を頂ければ、数年のうちに増税を取り止め、もとの税率に復帰できる旨、市民に告知できるでしょう」
「それはよかったです」
…………
「つまりですね」
「つまり?」
「増税をやめるためには、魔法院の支援を数年続けて欲しいというお願いに来たのですよ」
パオロは、なかなか論点が飲み込めてないようだった。
「こんなことができるのは今の二年生だけですよ?
ですから二年間でおしまいですよ」
「それだと増税を止めることができずに、市民不安が広まりますね」 と、市長は問題点を指摘する。
「つまり?」
「もう少し長いスパンでこのやり方を考えてもらいたいのですよ」
「しかし、今の二年生は卒業してしまいますぞ?今の一年生はマナ値があまり高くないのです!」
「そこに改善が必要ということになりますね」
!
パオロはやっと市長の言いたいことが分かった!
「まさか! クロエさんに一年生へのトランスファーを指示しろというのですか!」
市長
「クロエさんに一年生の状況を見学してもらい、自発的に申し出てもらえば、我々が責められる筋合いはないというものです」
パオロの背筋に冷たいものが流れるのだった。
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治癒院で。
治療が一息ついた際に、アノックさんに聞いてみる。
「飴?」
「はい」
バルのキュア入り治療水の話をする。
「その助祭は、とんでもないことをさらっとするね!
まず、それは付与魔法だろう?しかもキュアのような魔法を付与するなんてねえ」
ヒールやキュアを「もの」に付与するという発想はなかったし、できるものかも分からないそうだ。ましてや、効果がどれだけ続くかも見当がつかないという。
私たちは顔を見合わせた。
エリス 「バルディーニ先生は謎が多い」
クララ 「きっと、とても高位の魔法師なのよ」
私 「助祭だけどね!」
とりあえず、試作の飴を次の週にアノックさんに見てもらうことになった。
「じゃあ、明日朝にうちに来てね!」
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夜、手つかずの美容魔法についても考えてみる。
談話室にはキラキラ会+さち+アリシア先生。
うーん、キラキラ会では土魔法が弱いな。クロードの土魔法がすごくても、この分野では女性土魔法師が欲しい。
ということで、土コース魔法力3位(女子1位)のジャンヌを召喚する。
「呼んだ?」
ノエミもついてきた。「私も入れてよ」(土コース魔法力4位(女子2位)
二人とも商会の子だ。ちょうどいいかも。
いろいろな製品を説明したが、初めて取り組む上で、簡単かつ手に取りやすいもの……
「最初は、お試しでリップクリームかな?」
「リップクリーム?」 ノエミ
材料、作り方、用途を説明する。
蜜蝋、植物油、アロマオイル
ノエミ 「蜜蝋はうち(食材商)では取り扱ってない気がする。おとうさんに聞いてみるけど」
エリス 「蜜蝋は薬剤師の可能性が高い。アノックさんに紹介してもらうルートも調査が必要」
私 「私は、来週初めは土コースだな~」
クララ 「私とエリスちゃんで聞いておきます」
ノエミ 「植物油はどんな油?」
私 「ホホバの木から採れる種からつくるオイルがいいみたい」
エリス 「それも食材商と薬師のルートから調べないと」
ノエミ 「そうだね。これは植物だから、ルーカスにも聞いた方がいいよ」
ルーカスのところ(風のみち)は穀物商だ。植物全般に詳しい。
エリス 「なら、それは私の仕事」
お~ 嫁っぽいな!
「アロマオイルは、ラベンダー、カモミール、ローズウッド、ゼラニウム、レモンがいいらしいね」
ここら辺の知識はさち経由。
ジャンヌ 「ラベンダーとカモミールの精油はうち(雑貨商)で取り扱っていると思う」
「やった!一つ解決だね」
マリィ 「どうやって売るの?」
「あ~ ほんとはスティック状の容器があればいいんだけどね」
ペンで唇に塗る真似をする。
「でも、使うに従ってせり上がるような容器は難しいから、小さな缶や瓶かな?」
ジャンヌ 「そこもうち(雑貨商)だね」
ノエミとジャンヌのおかげで、私の魔法なしでもうまくいくかも!
ノエミ「私とジャンヌもキラキラ会に入っていいのかな?」
エリス「準会員」
「私はクララと同室で土コースの子の連絡係だし、ジャンヌも含めて商会とコネができていいじゃない」
ジャンヌ「婚約披露式でドレスも買っちゃうよ?」
エリス「考えとく」
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