045 Happy birthday, The day you woke
「アンヌです!」
「クララです」
「「みなさん、クロエ(ちゃん)のお誕生日を一緒にお祝いしてください」」
ぺこり
鴨のコンフィ(油で煮込む保存食)を作る
1.市場で鴨肉、にんにく、ハーブ(タイム、ローリエ)、ジャガイモを買う。
おかあさん「こんなに買うの?」
「うん、ほんとは何日か漬け込んでからの方がおいしいから」
2.ファイアーで毛をあぶり、大きいものは毛抜きで抜く。
アンヌ 「ファイアー・ロウでいけるか?」 アンヌ、ファイアーの火加減上手になったね。
3.塩をまぶし、こしょうをしっかりふる。にんにくも擦りつける。
「おかあさん、この間アイスバインを作ったときの黒こしょうがあるから、持ってきたよ」
4.たまねぎ、にんにくを薄切りにする。タイム、ローリエを用意する。これらを鴨肉の両面にのせ、油紙で包む。
「これをね、冷暗所で一晩寝かしたいんだけど」
「アイスで氷を当てると、お肉の味が落ちちゃうのかしら?」
「たぶん」
おかあさんの指揮で、冷水の瓶に二重に包装したお肉を入れ、ときどきコールドウォーターをかけ直すことになった。
ここからは翌日の作業だ。
……なんだか、すごく楽しみ。
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10月19日夜
「みんなお誕生日おめでとう」
テーブルを囲んだみんなに、おかあさんが声をかける。
「「「「「ありがとう」」」」」
「アンヌちゃん、クララちゃん、気がつかなくてごめんなさいね」
「いいよ、ソフィさん。あたし自身もすっかり忘れてたし」とアンヌ
クララ「本当に。孤児院に二年以上いましたから」
マリィ「私たちまですみません」(4月生まれ)
エリス「私はまだ12歳。得をした」(12月生まれ)
さち「私は?」
「さち、私が孤児院で目覚めるまでどうだったか誰にも分からないでしょ?だから、みんながね、10月15日、去年目覚めた日を誕生日にしてくれたんだよ」
「さちが生まれた日が分からないのなら、私みたいに決めてもらう?」
こく
クララ「さっちゃんが孤児院に来た日は、私たちが入学する直前、3月28日ですね」
「その日が私の誕生日………」
その日の夕食は、おかあさんがお仕事をおやすみしてごちそうを作ってくれた。
なんとお魚料理なのだ!
もっとも内陸のモデルテのことなので、川魚なのだけど。
でも、前世で言ったらフランス料理の「クネル」(魚のすり身を成形した団子にザリガニソースをかけ、さらにオーブンしたような料理)で、とってもおいしいのだ!
「う、うめー!!」第一声はいつもアンヌだ。
マリィ「おいしい!こんな料理初めて食べた」
エリス「カワカマスのクネルという。食材集めも手間だし、料理も大変と聞く」
クララ「ソフィさん、すごいとしか言い様がありません。お料理の先生になって欲しいです」
「あらあら」
「おかあさん、とってもおいしいよ!わたしもおかあさんの料理覚えたい!」
「まあ!おかあさんもうれしいわ!」
さち もぐもぐ………
いや、この料理ほんとにおいしいし、すごいよ!
魚を三枚におろすところから初めて、すり身を成形するのも大変だし、この世界のエビ?ザリガニ?からソースを作るのも大変だ。
さらに最後はオーブンにかけるんだもの………
おかあさん一人で、朝から大変だっただろうに。
ぽろ。
私のために。
ぽろぽろ。
こんなに大変なお料理を。
涙が頬を伝わる。
「っ、おかあさん」
「クロエちゃんは泣き虫ね………」
頭を優しく撫でてくれた。
ぽろぽろ
「うん」
泣き虫なんだよ、おかあさん。
「今度は一緒に作りましょうね」
「うん」
おかあさん
なんか一人で感極まってしまってとっても恥ずかしい………
「クロエはな~ やっぱり妹って感じなんだよな~」 アンヌ
「ええ、私も。もう会ったときから妹みたいって思いました」 クララ
「確かに誕生日は私の方が後だけどさ」
マリィ「それ分かるわ、なんだろ、表情?かな」
「精神年齢はサチより低い」エリス
さち ?
む、そんなことないよ!
「それ、その表情」アンヌ
「目覚めるまでの思い出がないからか、感情が小さな子に似ているのかしら?」クララ
アンヌ「なんかさ、『おねーちゃーん』って呼ばれている気がするんだよ」
「「「わかる」」」
いいけどさ。
アンヌとクララのことおねえちゃんって呼んでたし。
おかあさん「そうね~ もちろん滑舌は違うし、クロエちゃんは色々なことを知っていてお利口さんだとは思うけど、ほんとにリナが生まれ変わった気がするわ~」
じゃあ、これが私の家族なんだ。
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直近の話題を話す。
「男の子ってほんとにしょうがないわね~」
アンヌ「衛士の子だから、昔から何となく知り合いだけど、ホント、ガキって感じ」
「ちなみに、あの後の3限に一発ずつ叩いといたから」
「ありがとう?」
「今後の練習はどうするの?」
「うん、先生も私も神殿に帰るから、孤児院の庭でやろうかって言われた」
「お、じゃあアタシが神殿についてくときは、一緒に練習するか」アンヌ
おかあさん「ベルナール君のことはちょっと心配ね」
クララ「バルディーニ先生のエリア・トランスファーで納得しましたけど」
「ベルナール君のお父さんは総務長でしょう?お父様に伝わって、魔法院の教育方針に影響がないといいけど………」
「魔法院の所管は神殿なのに、市庁で教育方針を変えられるのでしょうか?」
「………そうね。
心配しすぎかもしれないわ」
私「なんか、私の教育方針って、全部バルが握ってるみたいだよ。
司祭様も「一任している」ってヴィクトールさんに言ってた」
「そのお話。
バルディーニ様の魔法って、とても高いレベルにあるのね。エリア・トランスファーなんて聞いたこともないわ。
王都でも高い地位にいたのじゃないのかしら?」
みんなそう言うな。
確かにトランスファーでさえ珍しいのに、それの範囲魔法、しかもハイ(高出力)付きだもんね。
「いい、クロエちゃん、学校でのことはもっとバルディーニ様にお願いした方がいいわ」
「はーい」
「それと、ブラジャー?
どういう仕組みになっているのかしら?」
ここはさちに聞いてみよう。
『検索 ブラジャー パーツ』
さちのスキルも向上して、検索の後ろに二つの言葉をつけられるようになったのだ。
【代表的なブラジャーのパーツ
ブラジャー1着につき約40種類のパーツで出来ている。
正面:ブラジャーを正面から見た時のパーツ(部位)。
①カップ
カップはバストを包むように立体的な縫製がされた部分………
………
………
「難しそうだけど………これ、作れないかしら?」
「おかあさん、大変だよ?」
「クロエちゃんにも作ってあげたいけど、私も使ってみたいわ………
やっぱり、このカップを丸く作れるかどうかね。さっちゃん、また、今度詳しく『検索』してくれる?」
さちは、こくっと頷いた。
私以外ともお話しできるようになるといいね。
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夜もだいぶ更けた。
最後に1限授業で歌った「四柱のクレド」の話題になった。
マリィのレポートinお誕生日会だよ。
「バルディーニ先生が仰ったの!」
マリィのレポートはバルのものまねがデフォだね。
「バルディーニ先生がね、頭を振って、
『その歌唱は一体何だ?
つまづくように歌い出したかと思えば、声がひっくり返る
曲名をなんとつけたか言ってみなさい』
ってね!」
「クロエが
『四柱へのクレド(信仰宣言)』って曲名を言ったら、
クレドじゃないって、ダメだしされたのよ!」
いい曲だもん
おかあさんもひとしきり笑った後、
「そうだわ、クロエちゃん、今即興で何か歌ってくれない?」
おかあさんにリクエストされると断れないんだよね。
「へただよ?」
「かまわないわ」
「ヘンテコかもしれないよ?」
「クロエちゃんの歌なら、どんな歌でもかまわないわ」
じゃあ、即興でやってみようかな。
誕生日だから、こんな感じはどうだろう。
♬
目を開けたら 知らない天井
名前さえも まだ遠くて
この世界の 息の仕方も
うまくできず 震えていた
マナの気配も 感じられない
私はここで 生きていけるの
それでもそっと 差し出された手
その温もりを 私は覚えてる
♬
アンヌ「いいじゃないか!」
するとクララが「そうね、じゃあ続きはこんな感じでどう?」
♬
あなたは突然 この世界に来た
迷子のような 瞳をして
何も知らずに 立ち尽くして
冷たい風に 揺れていた
だから思った 私たちに
できること それはなに
せめて今日は あなたのそばで
笑っていよう
♬
おかあさん「素敵ね………」
マリィもエリスも肯いた。
さちはじっと耳を傾けていた。
♬
偶然でもいい 奇跡でもいい
この世界で 出会えたこと
Today we celebrate
The day you woke
君がここで 生きている
それだけで ここは優しい
Happy birthday
The day you woke
♬
「読者のみなさん、クロエです。いつも私のお話を読んでくださりありがとうございます。」ぺこり
今日のお話で私たちが歌った歌をyoutubeで公開しています。
どうか聞いてください(・_・)(._.)
https://www.youtube.com/watch?v=LnJuAtDgCBo




