036 あの少女には触れるな
エピソード031でクロエが聖歌?を歌っています。
クロエちゃん、それはね、聖歌とは言えないんだよwww
https://www.youtube.com/watch?v=Hfae3iR5vNU
円陣の光が消えていく様をみんなで見送っていた。
しばらく、身じろぎもせず、みんなで夕空を見守っていたが、
ヴィクトールさんは我に返ると、みんなのマナ値を測定し出した。
まず、マナの譲渡を受けた4人が全員上限まで回復していることを確認した。
次に私のマナを確認した。
「減っていない…………
風コースはマリィか…………マリィ、魔法院での実技訓練時もこうなのか?」
「ええ、クロエのマナ量は未確認のままです。
バルディーニ先生が、なにか負荷装置のようなものを作成して測定上限を上げたのですが、今のところクロエのマナ上限値は不明のままなんです」
「そうか…………これはバルディーニ助祭に面会する必要があるな…………
その上で、司祭とも話し、市長に報告することが必要だ」
え、思ってたよりおおごと?
「明日は平日だ。みんな送っていくから、魔法院に帰りなさい。クロエは神殿に俺が送っていく」
「みんな、わかっていると思うが、この話は口外無用だ。
魔法院でも話すなよ。
それと……クロエ。
……この力は、むやみに人前で使うな」
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【閑話・あの少女には触れるな】
ヴィクトールは、少女たち、それにソフィを送りながら、先ほどの光景を思い出していた。
クロエの手からあふれ、少女たちを包み込み、
夕闇に消えていった光の奔流を。
トランスファー自体、あまり見慣れない魔法だ。
なぜなら、自らのマナは自分の属性魔法に使われてしまい、他人に譲渡するような状況はあまり発生しないからだ。
加えて、魔法といえば、単体魔法が中心である。
なぜなら一対多への魔法は、マナのロスが大きいし、大規模戦闘自体があまり発生しないからだ。
王国は単一の政治形態で安定しており、長い間内乱は発生していない。
戦闘と言えば、一つは犯罪者の取り締まり、一つは境界門におけるマナ異常種の討伐だからでもある。
――――先ほどのトランスファーは、発語自体は「トランスファー」であったが、エリア魔法ではなかったのか?
ヴィクトールは4人の少女とソフィをそれぞれ送り届けたあと、クロエと神殿に向かった。
夕べの祈祷は終わっていたため、クロエは夕食のため孤児院へと引き上げた。
ヴィクトールは神殿に向かうと、バルディーニに面会を求めた。
バルディーニ「こんな時間に突然何の要件だ?」
「クロエのマナについて聞きたい」
ヴィクトールがそう言うと、バルディーニは無言で神殿の主賓室へ案内した。
「それで?」バルディーニが問う。
「クロエの周囲の友人や保護者から要請があって、クロエのマナ量・魔法の発動状況を調査し、また治安上の懸念について聞き取りをした」
「ふむ」
「クロエの法律上の保護者は誰だ」
バルディーニは黙考すると、
「何の権限でそれを問う?」
「市の治安責任者としての権限でだ。
クロエは略取誘拐の被害に遭うリスクがあると判断した。この聞き取りのあと市長への報告が必要であると考えている」
「なるほど…………合理性のある見解だ
我々もその危険性には同意する。
……クロエの保護者は、最終的には教皇および国王となる」
「なに!」
「市の治安責任者としての正式な権限による調査と理解した。
そのため、こちらとしても、証拠書類を見せよう」
バルディーニはそう言うと、金庫から豪華な装飾を施した書状箱を二つ取り出した。
片方には王家の印、もう片方には教会の印がつけられている。
中には羊皮紙がそれぞれ納められていた。
「教皇の命令書には、次の内容が記されている。
①クロエと呼ばれる、経歴不明の少女の生命・健康・安全を完全に確保すること。この命令は教会のあらゆる命令に優先する。
②クロエの思想、信条、判断等に何らかの影響を与えることを極力排除すること。クロエは、第一項における、自身の生命・健康・安全が確保されている限りにおいて、完全な行動の自由が与えられる。
③クロエの行動の自由のため、教会は必要に応じあらゆる支援を行うこと。ただし、その支援は、第二条に定めるクロエの思想、信条、判断等に影響を及ぼさないよう、十分な注意を払うこと。
内容に相違がないか確認し、教皇のサインがあることを確認せよ」
ヴィクトールは注意深くその命令書を確認し、内容に相違ないことを認めた…………
「次に国王の命令書だが、
教会の命令書の内容が真実であり、その命令は国王を含む国のあらゆる命令に優先することが記されている。
また、王国も、教会の要請がある場合には、あらゆる支援を行うことが記されている。
内容に相違がないか確認し、国王のサインがあることを確認せよ」
ヴィクトールは国王命令書も確認し、大きくため息をついた。
「一体何なんだ……………………」
それは独り言だったが、バルディーニは聞きとがめて言った。
「命令書にあるだろう。いかなる詮索も許されてはいない。お前にも私にもだ」
「わかった。
しかし、現実的にはクロエの安全が脅かされるのではないのか?」
「衛士には気づかれなかったかもしれぬが、クロエの安全のため監視がついている。現地説明等で魔法院外や市外に外出する場合には、私自らが監視を行っているのだ」
ヴィクトールはさらに食い下がる。
「なるほどな。しかし、突発的な暴漢や計画的な誘拐には遠隔からの監視では防止しきれないのではないか?」
「ほかにも防止策は講じているが、それはここでは明かすことはできない」
「そうか…………クロエに身体強化魔法を学ばせるのはどうか?」
バルディーニはやや意表を突かれたようだった。
しばらく考えると、
「先ほどの命令書にもあっただろう。周囲の影響ではなく、本人の自発的意志であれば妨げるものは何もない」
こうして二人の会話は終わった。
ヴィクトールは命令書の趣旨に基づき、ここでの会話は口外を禁止された。それだけでなく守秘義務魔法まで課されることに同意せざるを得なかった。
その結果、この会話は司祭にも市長にも、もちろんクロエ本人にも伝えられることはなかった。
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さちとの夜の言葉遊びの時間
さち
「クロエの魔法は、とても『きれい』だった」
「そう?ありがとう~ さちも一緒にできたらよかったね!」
「黒パンは、とってもまずかった」 初めて食べたとき、えろえろしてたもんね!
「黒パンはね~ なんとかできたらいいんだけどね~」 私も酸っぱい顔になる。
「クララのうちで食べたハンバーグは、とてもおいしかった」
「じゅる~ また食べたいよね!」 いつになく饒舌だな。
「クロエのマナのたたき売りの話は、面白い、と教えられた」
うんうん
「クロエがいない夜に眠ることは、とても怖い」
あたまなでなで
「でも、クロエが一緒に寝ると、とても暖かい」
わたしも暖かいよ
「きれい」「まずい」「おいしい」「おもしろい」「こわい」「あたたかい」
「この言葉は…………この語群は、なに?」
「それはね。形容詞という、気持ちを表す言葉たちだね。
生きていると、そういう気持ちを言葉にしたくなるのかも」
「『形容詞』は、生きるという気持ち?」
たしかに!
「そうだね!
生きるということは、そういう形容詞を集めることかもしれないね!」
「私は今日見たクロエの魔法、そういうきれいなものを見たいと思った」
そうだね。
私たちは、その夜、「形容詞」を集める言葉遊びをした。
このお話を読んで頂いた方へ
試験勉強をすると言っておきながら、つたない小説を書いております。
まずしなきゃいけないことをしてから、したいことをやるんだよ~
意志薄弱の作者に愛の手(ブクマや評価)をいただけると嬉しいです。(._.)オジギ




