035 衛士の訓練所でお披露目
エピソード031でクロエが聖歌?を歌っています。
この曲を聖歌として披露するクロエのぼけぶりを想像して楽しんでください。
https://www.youtube.com/watch?v=Hfae3iR5vNU
ヴィクトールさんが市に戻ってきた。
場所はアンヌのおうち。
アンヌの家、クララの家、それにおかあさんの家は同じ路地のアパルトマンだ。
だからアンヌとクララ、それにリナちゃんは幼なじみ。
マリィとエリスの家も、このすぐ近くにある。
というわけで、ヴィクトールさんに初めて挨拶するのは、私とさちだけだ。
私「ご挨拶するのは初めてになります。クロエです。このたびはお世話になります」
それから、さちも私から紹介
「この子はさちと言って、孤児院で私と似た境遇で暮らしています」と頭を下げた。
「ヴィクトールだ。クロエのことはアンヌからよく聞いている」
その上で、帰宅してすぐに、あらましはアンヌから聞いたと語った。
「詳しい話は後回しにして、まずはみんなのマナや魔法の状況を知りたい。
衛士の訓練施設で見せてくれ」
そう言うと、市南門近くの衛士関連施設に案内してくれた。
「今日は休日だ。基本的に誰もいない。
当直にも機密事項として、こちらの訓練場には来るなと言ってある」
「クロエは、トランスファー以外に属性魔法が使えないと言うことでいいんだな?」
「はい」
「さちも『魔法選別の儀』を迎えていないため除くとして、
残りの四人に、属性魔法を発語してもらいたい」
「ではまず、火属性はアンヌ………発語位置に立て」
「はい!」
「威力調整の補助発語は習ったか?」
「はい!」
「よし、では基本発語「ファイアー・ロウ」を3回発語してみろ!」
『火よ、主神アーレスに信仰を捧げる。勇気ある火を現し給え、ファイアー・ロウ』
アンヌは3回立て続けに発語した。
「次!ファイアーを通常強度で3回!」
これも問題ない。
「次!ファイアー・ハイを3回!」
これも大丈夫。
「まだいけるか?」
「まだまだ」
「では、構築系にいくぞ!ファイアー・ライン【FIRE LINE】・ロウだ!」
ファイアー・ラインは炎を線状に構築する魔法だ。
慣れれば方向も自由に変えられる。
ファイアー・ラインも強度を変えて計9回発語された。
「次もいけるか?」
「全然!」
「そうか?次はファイアー・エリア【FIRE AREA】だぞ?マナの消費量も大分多くなるが?」
「大丈夫だって!」
そう言うとアンヌは、ファイアー・エリアも9回成功させた。
「次はファイアー・キューブ【FIRE CUBE】だぞ?もう2年生の課程になるぞ?」
ファイアー・キューブも問題なし。
………
こうして、アンヌは次の形質変化系魔法や防御系魔法など次々と発語していった。
「………正直驚いた。
一年生でここまで発語できるとは思わなかった」
構築系でシリンダー【CYLINDER】や、トライアングラー【TRIANGULAR】までいくと、正確性に欠けるが、それはマナ量の問題ではないからな………」
「ほぼ2年次の魔法発語カリキュラムを網羅しているぞ………」
次は風属性でマリィが魔法を披露した。
構築系はウィンド・エリアまで、形質変化魔法ではホット・ウィンド【HOT WIND】コールド・ウィンド【COLD WIND】も成功させた。
「防御系はまだ教わっていません」
戦闘に関連する分野は火属性の進み方が早いのかな?
「ありがとうマリィ。よく頑張っているな」
次は水属性でエリスの番。
こちらは構築系はウォーター・キューブに成功、形質変化魔法もホット・ウォーター、コールド・ウォーターだけでなく、アイス【ICE】も成功させた。
同じく防御系は未習得。
「『風のみち』商会でアイスを発語したら、とても喜ばれた」
「そうだろう。輸送できる商品が増えるからな」
最後にクララ。
もうみんなわかってるよね~
クララは専門の水魔法で、基本系・構築系・防御系・形質変化系をすべて成功させ、副コースの土魔法でも基本系・構築系を成功、習っていない風魔法でも基本形をやってのけた。
ヴィクトールさんとおかあさんは絶句している。
………
しかも構築系では、ウォーター・シリンダー、ウォーター・トライアングラー、ソイル・シリンダー、ソイル・トライアングラーまでやってのけたよ。
………
………
「早くピュリファイを覚えたいんですが、カリキュラムがまだ先なんです」
「驚いた………クララは王都の魔法大学に行った方がいいな………」
「アドリアンさんとイリスにも見せてあげたかったわ………」おかあさん
アドリアンさんとイリスさんはクララのご両親なのだそうだ。
さて、ここからが本番だ。
バルが所持しているのと同様のマナ測定具が衛士訓練施設にも配備されているのだ。
やっぱり軍事拠点は優先権があるんだね。
4人のマナ保有状況を測定したところ、大体60~70%残といったところだった。
「1年生が入学半年の段階で、あれだけ魔法を発語してこの残量とは………」
絶対量でいうと、4人のマナ基礎値は、一般的な成人の保有するマナ基礎値の50人分くらいになるそうだ。
「通常、マナ量が基礎値の半分以下になると体調不良になると言われている。
だから、これから50人分×40%で、最大20人分のマナ補給となるわけだが………」
「父ちゃん、いつもクロエは40人近くのマナを譲渡してるんだよ?」
「いや、魔法院一年ではそもそも譲渡相手のマナ上限が低い。一般成人対象と考えれば、この4人に譲渡するマナは、一年生換算では40人を大きく超過するだろうな………」
「クロエ、できそうか?」
「はい、やってみます」
「そうか」
「あ、でも、ひと工夫してもいいですか?」
そう言って、アンヌ・クララ・マリィ・エリスと円陣を組み、私の手の上にみんなの手を乗せてもらった。
「なにこれ?」アンヌ
「みんなで元気になれるようにって、考えたの」
要は野球の円陣だね!
「いい?みんなは、私がトランスファーを発語したら、『オー』って、大きな声で返してね!」
じゃあいくよ~
『風よ……マナ譲渡を実行・対象アンヌ・クララ・マリィ・エリス、トランスファー!!』
みんなで「「「「オー!!!!」」」」
私の手から光があふれると、それぞれの腕から光の帯がみんなの体に流れた。
やがて、円陣全体が光に包まれて、きらきらと夕闇に消えていった。
きれいだなー
……本当に。




