033 土魔法の社会科見学
「かなりやばいんじゃないのか?」
合同お茶会と「魔法のかご」ゲーム(合コン+フルーツバスケット)はみんなに強い印象を与えたようだ。
お昼休み
マリィが種明かしをしてくれた。
「じつはね、テオドールさんに会った日にね、ルーカスに聞いたのよ」
あ~あの「こそこそ話」か。
「私ってどうかってね!」相変わらず迷いがないな~
「そしたら残念!エリスのことがいいなって言われてね!」
エリス ぽっ
「エリスもルーカスいいなって言ってたでしょ」
「だったら、友人の仲を取り持たないとね!」とウィンク
「事前に話してくれたらよかったのに」エリス
「いや~上手くいくかどうかわからなかったし」
クララ「もしかしてあのときの席順って?」
「そう、私とルーカスでね、画策したんだよ。
二人がどうすれば話せるようにできるかってね」
「そうなのね」
マリィ「問題は二人の席よりも、二人の邪魔をしないように、誰を近くに座らせればいいかが難しかったわ」
私「なるほど!アンヌとアルフォンスなら、恋バナにならないもんね!」
ぱかーん!
私はアンヌをじっと見て、「実際火魔法と衛士の心得を語ってたじゃない!」
マリィ「それでその後はどうなの?」
エリス「ルーカスが家に挨拶に来て、私もルーカスの家に挨拶に行った」
「それでそれで?」
「どっちの家でも喜んでくれた」
「ルーカスの家では私の水魔法の発語練習を聞いて驚いてた」
クララ「そうでしょうね。このままいくと、私たちの学年は大変な成績を残すことになりますね………」
私「すごいね~みんな優秀なんだ!」
………
………
マリィはみんなを見回すと、声を落とした「どう思う?」
エリスも声を落とす「危険」
?
クララも同調する「クロエちゃん、属性魔法を使えませんから」
アンヌ「あ!」
???なんで私が出てくるの
マリィ「続きはソフィさんの家で話した方がいいわ」
?????
その日は平日だったが、5人でおかあさんの家に行った。
私「おかあさん、平日は働いてるから悪いよ!」
クララ「いえ、早く相談に乗ってもらった方がいいです」
「あら?みんなで遊びに来てくれたの?
夕ご飯の支度をするからちょっと待っててね!」
クララが代表し「いえ、少しご相談があって………」
「………そういうわけで、私たち学年のマナ増加と魔法習得ペースはとても高いのではと思うのです」
エリス「ルーカスの商会でとても驚かれた」
マリィ「私たちマナ譲渡以外でも、クロエと一緒にいるからね」
アンヌ「実際、孤児院時代から一緒のクララとアタシを見ればわかるよな~」
おかあさん「確かに、私もマナ譲渡を受けたときに気づくべきだったわ」
あ~なんか深刻そう
「みんな一体何を気にしてるの?私としてはトランスファーを習得できたから、聴講生とはいえ一定の地位を確保できて安心しているんだけど?」
クララが代表して説明する。
うん、こういう話はやっぱりクララがいいね。
「クロエちゃんよく聞いて。
この国ではね、マナが足りなくて人が死んでしまったり、作物が十分に育たなかったりするの」
「うん、だからみんなマナ増加のために聖堂で瞑想したり、魔法院で勉強するんだよね?」
「そうね。それで国中に十分なマナが行き渡ればいいのだけど………
もし生きるか死ぬかの選択肢になったとき、マナを確保する方法があれば?」
「あ~ 私がそこに行ってマナ譲渡の魔法を使えばいいんだね」
一同ため息
「え?違うの?」
クララは続ける
「もしトランスファーが使えて、マナをいくらでも与えられる相手が12歳の女の子で、力もなく属性魔法での抵抗もできなかったら?」
えっ
胸がひやっとした。
「うそっ 誘拐とかあるの?」
マリィ「この前、バルディーニ先生が、今年の授業は王都教区の試験的な教育方法を取り入れているため、魔法院外どころか他学年にも口外禁止って言ってたね………まさか?」
アンヌ「かなりやばいんじゃないのか?」
おかあさん
「この前漠然と不安に思ったけれど、なんでこんな大事なこと思いつかなかったのかしら………」顔を青くしている。
結局、よい考えも思い浮かばず、私は一人での外出が禁止された。
「でも、神殿と魔法院の行き帰りは一人になっちゃうよね」
孤児院・神殿の出入りに問題がないアンヌとクララが交代で送り迎えすることになったよ………
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晩夏となった。
そろそろ私が目覚めてから一年が過ぎようとしている。
私が目覚める前、一体どんな存在であったのか。
そもそも、存在していたのか。
前世と比べこの世界がなんなのか。
私がどうしてこの世界で生きていけるのか。
答えのない問いはいくつもあるけれど。
アンヌやクララと出会い、リナちゃんの魔臓を受け継ぎ、おかあさんと呼べる人ができた。
魔法院での学びの場や、神殿や孤児院という働く場も用意してもらった。
例え普通の赤ん坊として生まれ、普通に育ったとしても、
私のように変わった経歴だったとしても、
今を懸命に生きることしかできないのではないか。
私はこの世界のことを「悪くないのかも?」と、受け入れつつあった。
今日は「魔法使用状況の現地説明の日」(三回目)だ。
今日の社会科見学は土魔法の番だ。
これで全属性の見学が終わる訳だけど、職業を変えて現地説明会は続くそうだ。
高学年になると見学だけでなく、簡単な体験授業もあるらしい。
前世のインターンシップのようなものかもしれない。
引率はまたまたパオロ先生だ。
前回同様生徒38名、先生4名の総勢42名。
バルは不参加だ。毎回休んでいるから意図的なものなのだろう。
今回は北門を出て、農場に行くのだ。
「やあやあ、みなさん、こんにちは。
私は農場主のアクセルといいます。
毎年、この時期は春小麦の刈り入れ前の時期でしてな、
この時期を逃すと、説明の時間がとれんのですよ。
なにせ、明日から9月、刈り入れで大忙しとなりますからな!」
ほえ~秋小麦じゃなくて春小麦なんだね。
でも、明日から刈り入れにしては、ちょっと元気がないかも?
「今年は、そうですな、例年並みの作柄といったところです。
病気や倒伏もなく、一安心といったところですな。」
あれで作柄は「並」ってことか………
「小麦の収穫は、一気にやらないといかんのです。
ほら、こんな風に、全体的に色が抜けてね、穂先が少し湾曲しとるでしょう?
穀粒は硬いですが、若干爪跡がつく。
こんな状態になったら、村総出で一気に刈り入れですな。
それで、村の主なものが集まって、人手を調整して、明日朝から始めるんですわ。」
なるほど~
「今日は、生徒さんたちに、一日前倒しして、ちょっとだけ刈り入れの様子をお見せしますよ。」
アクセルさんはそう言うと、おそらく1畝分の小麦を刈り取って見せた。1アール(100㎡)ほど
『風よ、主神アルテミスに信仰を捧げる、万物をマナの命ずるまま切り裂き給え、ウィンド・カッター【WIND CUTTER】・ロウ』
すると、小麦はその背丈の半ばほどで二つに分かれていった。
「「「おおー」」」生徒一同感心している。
農家以外は見る機会がないのかな?
「この魔法の難しいところはですな、切り取る力が強すぎると、せっかくの麦が散らばってしまうのです。
だからといって、弱すぎればそもそも刈り取りができませんな。
そういうわけで、魔法の強さを調整する能力が問われますな!
ここにも風魔法の生徒さんがいるでしょうが、なかなか熟練を要しますぞ」
魔法院3年になると、就職活動も具体的になる。農家志望の生徒は実際にウィンドカッターを試させてもらうそうだ。
いつもはオチ要員のアーサーも、農家のことでは黙って頷いている。
「農業ではですな。正直、魔法がなけりゃどうにもならない、そういう作業もあります。
しかし、魔法があってもどうしようもない作業も多いですな」
そういうと
「おい!!出番だぞうぅ!!」
と大きな声を出した。
すると、数人の成人男性が切り取られた麦穂を荷車に載せ運んでいった。
「このように、刈り取りはできても、その後工程は人力頼りなんですわ」
「そういうわけで、農業は魔法と人力の合わせ技でやっとります」
そうか、農業に人手は不可欠なんだね………
次に畑を見学させてもらった。
およそ三圃式農業といったところだったが………
アクセルさんは言う。
「小麦は土の栄養とマナを食いますのでね。
刈り入れが終わった畑には豆を植えるんですわ。
そうしますとですな。豆が土地にまた、栄養をくれるんですわ。
先人の知恵といったところですな!」
「しかしですぞ、豆もマナがなけりゃ生きていくことはできませんぞ。
豆を収穫した畑ではマナの回復が重要となりますな。」
「ここで、最も土魔法師として重要な出番となりますぞ!」
『土よ、主神デーメーテール様に信仰を捧げる、マナを集めこの土地に注ぎ給え、ファーティライズ【FERTILIZE】・ロウ』
と発語し、ごく小さな魔法を発動した。
すると霧のように薄くマナが集まり、目の前の土に吸い込まれていった。
「明日から大量のマナが必要となりますからな。
本日の魔法はこれで勘弁してもらいますぞ。」
土地へのマナ充填は、人へのトランスファーとはだいぶ趣が違うようだ。
トランスファーが単体魔法なのに対し、ファーティライズは範囲魔法といったイメージだ。
それに、発語者のマナではないように見えた。
アクセルさんは、その他にも農業で使用する魔法をいくつか挙げてくれたが、マナ節約のため発語はせず、言葉での説明となった。
うん、神殿に帰ったら色々と考えてみよう。
エピソード031でクロエが聖歌を歌っています。
曲は悪くないけど、J-POPは神殿向きじゃありません!
作者もバルに一票!
https://www.youtube.com/watch?v=Hfae3iR5vNU




