030 風魔法の社会科見学
「どうですか?風魔法もなかなかいいものでしょ?」
エピソード018でクロエが歌っています。聴いてね!
https://www.youtube.com/watch?v=WN2IvDfrpPU
おかあさんは、朝、目覚めると恥ずかしそうにクララの家を出た。
「クララちゃんとっても楽しかったわ。また呼んでね!」
「はい」
「クロエちゃん、魔法院のおやすみ日で、特に用がないなら、毎回うちに来なさい。
できれば前の日に泊まりがけで来てくれると嬉しいわ。」
そして思い直したのか、
「いえ、ちょっと違うわね。
うちに帰りなさい。孤児院も神殿も仮の住まいに過ぎないわ。
私のところがクロエちゃんの家なのよ。
だから、用がないときはうちに帰るのよ。いいわね?」
こくん
家。
そういえば、前世では「家」は「帰るところ」だった。
でもひとつだけ。
「サチも連れてきていい?」
「もちろんいいわ。さっちゃんもうちの子になればいいわね」
おかあさんはそう言い、肩たたきの約束して帰って行った。
「ソフィおばさん、肩たたきにはまったみたいだな~」アンヌが言う。
「そうね」とクララ
その後、お昼にクララの手料理(煮込み料理。ポトフとシチューのあいのこのような料理)をみんなで食べた。
クララの家に残しておけないので全部おなかに入れたよ。
クララ「はやく『ピュリファイ』を覚えたいわ」
飲水の浄化だけでなく、食材の保管や料理の作り置きにも使うのだそうだ。
冷蔵庫いらないじゃん。
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季節は夏。
とはいえ、気温は25度くらいだろうか。湿度も高くなく、毎日気持ちのいい日が続いている。
なんかヨーロッパの夏みたいだな。
今日は「魔法使用状況の現地説明の日」(二回目)だ。
今日の社会科見学は風魔法の番だ。
前回は二属性だったけど、土属性は市外の農場に行く必要があるため、今日は風属性のみ。
近くの商家での、倉庫見学に来た。
引率はまたパオロ先生だ。
前回同様生徒38名、先生4名の総勢42名。
またバルは不参加だ。風属性の見学でお前が休んでいいのかよ!
パオロ先生
「今日は王都との取引をほぼ一手に引き受けている、『風のみち』商会に無理を言って見学させて頂くことになりました」
なんか、日本の田園風景と大きな木が頭に浮かんだぞ?
「パオロ先生、お久しぶりです」
と商会の若手、テオドールさんは挨拶し、ルーカスの頭をくしゃっと撫で、さらにマリィに笑いかけた。
魔法院の最近の卒業生なのだろう。
「みなさん、おはようございます。『風のみち』商会のテオドールと言います。よろしく」
「今日は、王都に納入する小麦を倉庫から馬車に積み込む様子を見学してもらいます」
そう言って、大きな倉庫の一階部分にある扉を開けた。
そこには直径1メートルもある、巨大な布製のホース?が折りたたまれていて、テオドールさんと助手の男性は、二人がかりでホースを伸ばし、馬車の荷台に取り付けた。
「みなさんは、給水塔で水魔法と風魔法の複合魔法で揚水する説明を受けたと思います」
「同様な魔法を小麦にかけるなら、風魔法師が二人がかりでウィンド【WIND】とプッシュ【PUSH】をかけることが想像できるでしょう」
と言って、テオドールさんがプッシュ、助手のひとがウィンドをかけて見せた。
すると倉庫から小麦がゆっくりとホースを伝わって移動し始めた。
テオドールさんは手を下ろし魔法を止めると、
「ごらんのように、小麦は水のようには流れませんね?
これでは時間と魔力ばかりがかかってしまいます。
そこで、このような場合にはより強力な魔法が必要となります。」
と、今度は一人で魔法を見せてくれた。
『風よ、主神アルテミスに信仰を捧げる、万物をマナの命ずるままに吸い寄せ給え、サック・イン【SUCK IN】』
すると、今までとは桁違いのスピードで小麦がホースの中を動き始めた!
「どうですか?風魔法もなかなかいいものでしょ?」
そうウィンクすると、さらに魔法を強化した。
『風よ、………万物を吸い寄せ給え、サック・イン【SUCK IN】・ハイ!!』
ゴゴー!!!
轟音を上げて馬車の荷台が瞬く間に小麦でいっぱいになった!
「うぉー、カッケー!!」「スゲェー」
と男子たち
「きゃー!」「テオドールさん、すてきぃ!」「結婚してー!」
と女子たち
ついでに
「さっ、流石だ!テオドールくん!短縮詠唱もすばらしい!!」と顔を真っ赤にしてほめるパオロ先生。
あれ?もしかして、バルがいなかったらパオロ先生が風コースの担任だったのかも??
最後にルーカス「に、にいさん、さすが!」
あ~お兄さんだったのね。
テオドールさんは、さらに、
「小麦粉を一度に大量に運ぶためには大きな馬車が必要ですよね?
でも、この荷台の小麦粉って、馬たちには重すぎると思いませんか?」
と言って、浮動魔法【FLOAT】も披露してくれた。
『風よ、主神アルテミスに信仰を捧げる、万物をマナの命ずるままに浮き上がらせ給え、フロート【FLOAT】』
お、おー?
浮いてはいないけど?
「ちょっと、一番前の男子」
風魔法ということで最前列にいたアーサーに声をかける。
弟くんを除けばアーサーしかいないからね。
「お、俺?」
「そう、ちょっとこの馬車を押してみてくれるかい」
アーサーの一押しで、空荷の時よりもさらに軽く馬車が動き出した!
アーサー「お、おお!軽い、信じられねー!!」
「この強度で、常時フロートをかけ続けるわけではないけどね、風魔法コースでも努力次第で十分働けるよ」
「ハイ!ありがとうございます!」
最後に経済の授業。
「このモデルテ市ですべての生活必需品を生産することはできません。
どうしても、王都など外部から購入する必要があります
どんなものを取り寄せる必要があると思いますか?」
「宝石?」
「酒だろ!」
「うーん、もっと大事なものだよ」
「医薬品でしょうか?」クララ
「うん、いい線いってるね。薬を含む医療関係用品、綿花などここで生産していない繊維材料、石炭など燃料、鉄鉱石などの原料、みんなが暮らしていくには色々なものを商会が買ってくるんだよ。」
「では、そういったものを買うためのお金はどうしたらいいと思う?」
生徒一同???考える。
「そうだね。この小麦が購買するためのお金になるんだ。
それで、残念だけど、モデルテ市ではライ麦製の黒パンや、大麦で作るオートミールを主食としているんだよ。
市長の朝食もオートミールなんだ」
「ええー」
「白パン食べたいー」
「ははは、ぼくも同じさ!
でもね、小麦って効率が悪くて大量に生産することが難しいんだ」
「でね、お金が足りなくなっちゃうんだけど、みんなはどうしたらいいと思う?」
どの生徒にも換金作物なんて思いつかない。
「不足したときに必要となる商品は人間なんだよ………
つまり、
………
………
労働契約者、通称『農奴』だね」
!!!
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今回の社会科見学は前回よりも遙かに考えさせられた………
低生産性かつ高信頼社会を築く前提として、想像以上に魔法技術基盤が影響を及ぼしている。
孤児院で私がぼけっとしていたときに、アンヌやクララが血相を変えて怒ってた理由がやっと納得できた。
マナを育て、属性魔法を習得し、社会に貢献する………
そのことで互いに協力し合い、信頼し合う社会が成立する。
だから職業の違いはあっても、身分制社会にならないんだ。
だけど、
マナの少ない、魔法が使えないものは、社会からはじかれてしまう。
それは、この社会に属していればやむを得ない措置であるし、魔法を使える立場からすれば、魔法を使えないものは社会に寄生していると考えてしまうのだろう。
私は次の、土魔法の社会科見学を思い、背筋に冷たいものを感じた。
農場。
つまり――
『農奴』の現場だ。
このお話を読んで頂いた方へ
つたない物語にお付き合い頂き、誠にありがとうございます。
読み専をやめて初めてわかったんですが、ブクマとか評価って、とっても大切だったんです!
それで、厚かましいことですが、皆様にもブクマや評価をお願いしてもよろしいでしょうか?よろしくお願いします。(゜゜)(。。)ペコッ




