024 風属性の授業
「だから!美術は苦手なんだってば~」
エピソード018でクロエが歌っています。聴いてね!
https://www.youtube.com/watch?v=WN2IvDfrpPU
夜明けの鐘前、薄暗いうちに起床。孤児の服のまま身廊に行く。
朝の奉仕(掃除)の開始だ。
全体の配置はネロに任せ、私はサチを連れ燭台磨きだ。単純作業はわかりやすいのでサチ向きだ。
「こっちの手で燭台を持って。反対の手で布を持って。ホコリや汚れを取るんだよ。」
ふきふき。
「この布きれにこの水を少しつけて。燭台をくるんて覆って。そっと磨いてね。」
こしこし。
みんなで孤児院の食堂に移動する。
朝食は、定番の黒パン+スープだ。
「パンをこうやってスープにつけるの…………そうそう」
「食べやすくなったら、50回かまなくていいよ。…………柔らかくなったら、ゴックンてやって」
朝食後はシスターの説話と瞑想だ。
以前、バルがシスターに説話のやり方が悪いんじゃないか?と文句をつけていたが、シスターも聖堂に戻って朝の礼拝準備がある。グズグズできないのだ。
私は朝食が終わると、シスターを待たずに先に聖堂に戻る。
そこで、身なりを整え、魔法院へ登院するための服に着替える(以前ソフィさんに買ってもらったローブなど)。
そして自らの祈祷、瞑想を行う。
朝の礼拝のために祭壇を整えているとシスターが戻ってくる。
私は礼拝準備をシスターに引継ぎ、魔法院へ登院する。
こうしてみると、朝はなかなか忙しいな……
さあ、魔法院だ。
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午前の鐘が鳴ると、講義開始となる。
一限は、属性別の神さまに関する講義
風コースは、男子:アーサーとルーカス、女子:マリィと私の4人だけ。
初日の昨日、空き時間に少し雑談することができた。
アーサーは農民の子、第1希望は土属性、第2希望は水属性だった。
「風じゃなー……正直農民は続けられないかも。兄貴の下で農奴みたいな生活になっちゃうよ。」
確かに農業に風は微妙かもしれない。
ルーカスは商人の子、不人気の風属性でも問題ないようだ。
「商人に風は悪くないよ。一番の使い道は荷物の積み下ろしで楽ができることかな。
馬車の負担を減らしたり、馬に楽させたりもできるし。
アーサーも農作業で役に立つんじゃないの?」
アーサー「それって労働力として使われるってことだろ?
土魔法で畑を耕したり、麦に滋味を与えたりするのに比べるとなぁ……」
マリィは官吏の子だという、風魔法より大事なことがあるようだ。
「あなたがクロエね!
クララから『くれぐれも、くれ・ぐれ・も!』と頼まれてるの!
クララがそこまで言うなんて、あなたって何者?」
「義理の妹?みたいな?」
「わかったわ!私に任せなさい。」
マリィはクララと幼なじみらしい。
風魔法は?と聞くと。
「官吏には魔力より学力の方が大事ね!」
あまり気にしていない様子だった。
バルがきた!
「では、授業を始める。
お前たちには、風の主神アルテミス、またはその眷属の絵を描いてもらう。」
一同あっけにとられる。
絵? 絵画? ほわっと?
「筆記具はペンでも良いが、画材を持ってきたので、必要ならこれを使え」
「制限時間は30分とする。はじめ!」
そう言って、自分は教壇で専門書を読み出した。
……
……
……
「よし、止めろ。
これから自分の描いた作品の説明をしてもらう
まず、アーサー、お前からだ」
……
アーサーは顔を真っ赤にし、涙目で自分の絵を説明する。
「これは、アルテミス様が、若い男に裸を覗かれちゃったところで……」
「続けろ」
「見られたアルテミス様が『きゃー』って言ってます」
アーサー君ごめん、でも君のおかげでみんなのハードルがとても低くなったよ。
「ふむ。絵も下手だが、神話の内容、主神への理解が足りん。精進せよ。
次、ルーカス」
……
「これは、戦争への出陣を控えた王がアルテミス様の怒りを買い、
その結果、港には風ひとつ吹かず、何百隻もの軍船が動けないまま足止めとなった様子です。」
「よろしい。題材の選択にこの授業への理解が見られる。また、主神アルテミスへの理解が明確だ。
合格とする。次に絵画を取り上げる場合には、同様の意図で別の題材に挑戦してみよ」
「はい!」
……
マリィ
「眷属のアウラ様が野生の熊を仕留める様を描きました。」
「よろしい。絵画自体はルーカスに劣るが、神話への理解は非常に高い水準にあると思われる。
この授業への理解も正しい。お前も合格とする。」
エリート二人の後かぁ
……
バルは私の力作を睥睨し、
「この絵は何だ?」
紙には異なる長さ、異なる方向の矢印が三本書かれている。
「矢印が分かれると、その間に二つの力が合わさった矢印ができる絵です……」
……
バルのため息
「まず、これは絵ではない……
次に、ここでは神々への理解という意味が見事に欠落している……
『魔法選別の儀』からの進歩が一切感じられないな」
そうだよね!これじゃ数学だもんね!でも!美術は不得意なんだよ!
(神さまを描けって言われて、ベクトル書いちゃだめかぁ……)
こうしてバルの(たぶん)スペシャル授業が終わった。
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昼休み
アンヌ、クララと合流。マリィに水属性のエリスが加わって5人でお昼だ。
アンヌ 「なんと言っても魔法院だとお昼が出ることだよな!」
クララ 「一日2食はちょっときついですからね」
マリィ 「こうやってみんなで集まれて嬉しいね!」
エリス 「クララ、アンヌ、良かった……」
「マリィちゃん、クロエちゃんは大丈夫でしたか?」クララが心配そうに聞く
「いや、どうだろね? 独創的な絵を描いてバルディーニ様に叱られていたかな?」
クララ・アンヌ ふぅぅぅ~
エリス 「どんな絵か見たい……」
いやです!ふるふる
クララ 「クロエちゃん、見せられますよね」にっこり
私はクララの圧力に負け、絵を見せた……
クララ・アンヌ ふぅぅぅ~
だから!美術は苦手なんだってば~
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午後の鐘が鳴ると三限開始だ。
三限は一般教養講義。主に読み、書き、算術となる。
ここで授業終了。
みんなは寮に帰るが、私は孤児院に帰り、雑務が残っていれば孤児たちの手伝いをする。
続いて夜の礼拝の補助だ。
夜の礼拝が終わって孤児院に帰れば、子供たちの夕食はもう終わった後だ。
厨房から夕食を分けてもらい、神殿に戻る。
貴重品の蝋燭を支給してもらっているので、この後の時間を利用して神殿図書室で勉強する。
魔法院の予習や復習もあるが、どちらかと言えば、自らの疑問に対する手がかりを探すためだ。
こうして新たな生活が始まっていった。
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バルディーニは長期観察対象の授業について思いを馳せていた。
ふむ。
『魔法選別の儀』といい、今日の授業といい、対象への積極的干渉を抑えることに若干の自制を要したな……
トントンと人差し指で机をたたく。
言うまでもないことだが、我々の『グランド・プラン』達成のためには、長期観察対象の喪失懸念にある場合を除き、あらゆる積極的関与は避けるべきだ。
さもなければ、我々の恣意的な関与が長期観察対象のパラメーターに悪影響を与えるリスクがある……
その意味では、ベクトルに関する概念図への評価は、やや過剰であったかもしれぬ……
また、報告書はマナ保有量の有用性にとどめておくべきかもしれぬ。
バルディーニは、保留中の報告書を一部書き直すのだった。
神殿提出用報告書(写)
提出先:王都教区 神殿学術局
提出者:王都教区助祭 バルディーニ
件名:魔法選別の儀における例外事例について
対象個体識別符号:K-07(通称:クロエ)
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対象個体クロエは、
魔法選別の儀において属性魔法の発現を確認できなかった。
一方で、
マナ放射量は基準値を大幅に上回り、
計測器の飽和(削除:および聖具反応)が観測された。
本事例は、
従来の発現モデルに照らして(修正:分類不能である)マナ保有量増加モデルとして有用と思量する。
よって、
当該個体を魔法院進学対象とはせず、
神殿預かりとしたうえで継続観察を提案する。
本提案は、
将来的な再測定および制度改善のための
参考事例確保を目的とする。
以上。
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対象個体の行動傾向は、依然として予測不能。
しかし——
極めて興味深い。
このお話を読んで頂いた方へ
つたない物語にお付き合い頂き、誠にありがとうございます。
読み専をやめて初めてわかったんですが、ブクマとか評価って、とっても大切だったんです!それで、厚かましいことですが、皆様にもブクマや評価をお願いしてもよろしいでしょうか?よろしくお願いします。(_ _)




