019 第3回女子会(緊急・検証回)
「クロエ……まさか、ことの重大さがわかってないんじゃないか?」
アンヌとクララが「やばい!」と思った歌がこちら。ぜひ聴いてね!
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今日の夕食は、ほんのちょっとだけ豪華だった。
私たちの『魔法選別の儀』のお祝いをしてくれたのだ。
前世からすれば大したメニューではないけれど、その気持ちがうれしいよね。
そんなわけで、第3回女子会のつまみには、干しいちじく、干しぶどう、干しあんずが並んでいる。
じゃあ、始めようか。
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アンヌ 「今日は驚きの一日だったな~」
私 「すごくびっくりしたよね。シスターの名前、初めて知ったよ!」
二人 がっくぅー
……
「マルティーナさんって言うんだね~」
「クロエ……まさか、ことの重大さがわかってないんじゃないか?」
「クロエちゃん、のんきすぎだよ! それにシスターのお名前今まで知らなかったの?」
「だって、みんなシスターとしか呼ばないんだもの」
教室に先生が一人しかいなかったら、生徒は「○○先生」ってよばないじゃん。
「なんか聞きにくくてさ。じつは知ってるふりしてた……」
アンヌは私の肩に手をかけ、「アタシはアンタが、ほんっとーーに、心配だよ」
クララ 「そうそう、4月になったら私たち魔法院の寮に行っちゃうんですよ~
クロエちゃん、ひとりで大丈夫?」と眉をひそめる。
実はかなり心細い。
孤児たちのお世話はアンヌが引っ張ってくれてたし、シスターや他の大人たちへの受け答えはクララがしっかり対応してた。
常識に欠ける私に、二人はいろいろとサポートしてくれてたのだ。
「うん……そこはやるしかないかも」
「困ったら、魔法院に行ったときに相談するよ」
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さあ、緊急会議の本題だ。
「昼間もアンヌに聞いたんだけどね、アンヌの属性魔法発現って、もしかするとすごく大きかったの?」
アンヌ 「ああ、アタシもびっくりだよ。昼間も言ったけど、聞くところでは瞑想の際に火が手の先にぽっとつくとか、水がぽたりと垂れるとかなんだ」
クララ 「そうですね。土もさらさら砂がこぼれ落ちるとか、風がそよぐとかですね」
私 「火と土は祈りの場にないものが出るからわかるけど、水は汗と間違ったり、そよ風なら見落としとかありそう」
クララ 「発現がわかりにくい場合は、瞑想時間が長くなりますね
それでも、発現が不明であれば、マナ値が不十分と言うことで農場行きになってしまうそうです」
私 「……シビアな話だね」
クララ 「そうですね。でもやむを得ない面もありますよ。 毎日の暮らしは、けっして楽なものではないので、属性魔法で社会に貢献しないとみんなの暮らしが成り立ちませんから。
それに、健康の維持はマナが一定以上必要と考えられています。属性魔法が発現しないほどマナが低い人は、農作業に携わることが健康維持にも、食事の確保にもなりますから」
アンヌ 「それでも、農場から逃げだそうとすると、拘束されちゃうんだ。逃げ出しても行き先がないのにね……」
私 「『お貴族様』とかいて、立派なお城に住んで、贅沢なんかしているのかな?」
アンヌ 「なにそれ?」と一笑に付す。
「『お貴族様』がなんだか知らないけど、みんな真面目に働いて、協力して暮らしてるよ。アタシの知る限りじゃ悪い人なんかいないね!」
クララ 「クロエちゃん、そういう耳慣れない言葉が私たちは心配なんです……記憶がないから仕方ないんですが、みんなが使わない言葉を思いついたら、使う前にアンヌか私にまず聞いてみてくださいね?」
つまり、こういうことだろうか。
・この社会では生産性がかなり低い。
・結果として、農業生産による土地所有から発生したと言われる階級分化は進まなかった。
「ねぇ、魔法院ってさ、一学年何人くらいなの?」
クララ 「最近の町の様子はわかりませんが、今年は……アンヌちゃん、たぶん少ないよね?」
「うーん、2年前の疫病で大分子供も死んじまったからなぁ……普通は一つのクラスが20人だとして、風属性が半分くらいだから……えーと……クララあと頼む!」
「20人3クラスと10人1クラス、通常は70人。そこまで行かないかも……1学年50人くらいかな、でもなんで?」
「うん」
1年齢あたりの人口が特殊要因がなければ50人? いや、中世的な社会で、全員が全員魔法院に行くことは無理がある。
仮に魔法院進学が半数とすれば1年齢あたり100人、平均年齢が50年と考えれば、都市圏人口は5000人。
中世都市の規模としてはあり得る人数だ。
「魔法院のことも心配じゃない?」と私はごまかした。
修正して考えてみよう。
・ここの都市圏人口は5000人規模(推定)
・前世における中世社会では、この規模でも職業の専業化は発生する。
・また、土地利用の集中化により富の分配、結果として経済的格差も十分に発生している。
・つまり、固定的な身分制度がどの文明でも見られたはず。
・しかし、この社会では生産性がかなり低い。
・職業の専業化と親子間での職業・地位の継承はあるが、階級分化や固定的身分制度となっているとは言いがたい。
・前世との大きく異なる条件にマナ、魔法環境があるため、このことが社会制度に影響を与えていると考えられないだろうか?
私がとりとめのないことを考えている間、アンヌはクララに絞られていた。
「アンヌちゃん、そんな計算もできないなんて! だからお勉強も大事だと言ったでしょ!
私からすれば、アンヌちゃんだって心配だよ!」
「うへぇ」
「そうか~ 私たちの学年って、いつもより少ないんだね」
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アンヌはクララの追求から逃れるため話題を変えてきた!
「それよりもっと大事なことがあるだろ!
アタシなんかより、クララのマナ発現の方がすごかったじゃないか!」
私 「でも、クララちゃん、なんか当然って顔して笑ってなかった?」
「えぇ。 予感はあったんです。
きっとクロエちゃんのおかげなの。
クロエちゃんといつも一緒にいるから、知らないうちにクロエちゃんのマナをもらっていた気がするの。」
「ほー アタシは一属性、クララは三属性。 クロエはアタシよりクララの方が大切って意味かな……」
アンヌは私の頭を抱え、ヘッドロックをかましてきたぞ!
「このっ このっ」
ギブ!ギブ! 降参だー!
「ち、違うのアンヌちゃん!
理由があるの! ほら! 図書室で勉強教えていたでしょ!
あれが大きかったと思うの。 日々の祈りも大切だけど、神さまへの理解や魔法現象の知識が結果になったのよ!
あんな大がかりになるとは思ってなかったけれど、発現した後は「やっぱり」って思ったの」
アンヌはそれを聞いてヘッドパッドを解いてくれた。
「あとはね。 クロエちゃんってすごいな!って思ったよ。」
にっこり笑う。
ほほう。つまりこういうことかな?
・魔法現象に対する知識増加+瞑想行為=マナ増加のトレーニング
・神への信仰心(特に属性を取得したい神への)+祈祷行為=属性取得の方向性付与
・瞑想行為=自分の肉体(特に魔臓)への干渉
・祈祷行為=世界のインフラ(神々と認識している何か)へのインターフェース
※本来、瞑想行為と祈祷行為は分けて考える
(『クララ=クロエ仮説』と命名します!)
「となると、私に属性魔法が発現しなかった理由は……?」
「はっきり言って、信仰心不足だと思います。」
アンヌ 「アンタ、神さまのこと、ぜんっぜん、信じてないだろ!」
クララも肯く 「ときどき、『火は現象だよね』とか『風が元素?ないない』とかつぶやいているの、聞こえてますよ」
(あちゃー)
アンヌ 「一番ひどいのが今日の歌だぞ!」
クララ 「そう!よりによって神さまのことを嘘って決めつけたり!
あんな、鼻歌なんかで馬鹿にしたりして!」
クララはもう泣いている。
「リナちゃんの魔臓で生きながらえているのに……」
アンヌ 「ほんと!冷や汗流れたよ……」
クララ 「く、クロエちゃんにまで悪いことが起こったら……」
……
「ごめんなさい。
正直、わかってなかったね、自分がしていること」
クララ 「私たちがそばから離れたら、ほんとにどうなっちゃうのか、こわいの」
二人とも本当にごめんね。




