第3章:応用魔法と初陣の勝利
ケイスケは、ボイルバレットで生じた蒸気を指先で弄びながら、さらにそのイメージを研ぎ澄ませました。
「ボイルが『熱水』なら、これは完全に『気体』としての力だ。目に見えないほどの微細な粒子が、超高圧と超高温を伴って襲いかかる。いくよ」
「――スチームバレット」
ケイスケが指を弾くと、放たれたのは弾丸というよりは、一点に収束された「透明な死の熱風」でした。標的の大岩に着弾した瞬間、激しい衝撃音とともに岩の表面が瞬時に剥離し、超高圧の蒸気が岩の割れ目に入り込んで、岩を内側から文字通り「蒸発」させるように吹き飛ばしました。
「形のある弾丸をぶつけるんじゃない。空間を熱い蒸気で満たし、その圧力で標的を圧殺・溶解するイメージだ。さあ!」
170cmの長身を誇る三人の美人は、肌を焼くような熱気を感じながら、目に見えない「気体」の破壊力を練り上げます。
マーガレット 「形を捨てて、圧力だけを……! スチームバレット!」 彼女の放った一撃は、岩を包み込むような白い噴煙となり、次の瞬間、圧力に耐えかねた岩が細かな破片となって霧散しました。
エリザベス 「目に見えない刃……。防ぎようがないわ。スチームバレット!」 エリザベスの蒸気弾は、最も鋭く収束され、岩に深い熱溶解の跡を刻みつけました。
アンジェリカ 「すべてを包み込み、無へと還す熱き息吹。スチームバレット!」 アンジェリカの弾丸は、周囲の酸素さえも奪い去るような熱波となり、標的の岩を脆い砂へと変えてしまいました。
ケイスケは、修行場一面を覆い尽くした真っ白な霧の中で、満足げに笑いました。
「これで、固体、液体、気体……すべての状態を網羅したね。組み合わせる力が、君たちの魔法をさらに予測不能にする」
ケイスケは指先から溢れ出す熱波を楽しみながら、驚嘆の表情を隠せない三人へと語りかけました。
「みんなどうだ? 俺のバレットは。バレットっていうのは、単なる魔法の弾丸じゃない。アイデア次第で無限に種類を作れるし、このやり方ならMP切れも起こさない。……次はこれだ。試しに火と土を混ぜて、マグマバレット」
ケイスケが両手の間に魔力を収束させると、ドロリとした赤黒い粘性を持つ、超高温の塊が生成されました。
「――いけ」
放たれた弾丸は、これまでのバレットのような鋭い速度ではなく、重厚な質量を伴って標的の大岩へと着弾しました。
ドォォォォン!!
激しい衝撃とともに、岩に触れたマグマは爆発的に飛散。岩の表面は一瞬でドロドロに溶け落ち、周囲の土壌までが赤く発光する溶岩溜まりへと変貌しました。
「火の熱量と、土の質量。この二つを『混ぜる』イメージだ。表面を焼くだけじゃない、岩そのものを溶かし尽くして飲み込む。さあ、やってみて!」
170cmの長身を誇る三人の美人は、顔を焼くような輻射熱に耐えながら、異なる属性を一つに溶かし合わせる感覚に挑みます。
エリザベス 「重く、熱く……私の闘志のように! マグマバレット!」 彼女の放った塊は最も重く、岩を正面から押し潰すと同時に、溶解した石を周囲に撒き散らしました。
マーガレット 「結合を崩し、熱流体へと変換……! マグマバレット!」 マーガレットの弾丸は流動性が高く、標的の岩をまるで飴細工のように溶かし、形を失わせるほどの高熱を見せました。
アンジェリカ 「大地の怒りを、紅蓮の涙に。マグマバレット!」 彼女の放ったマグマは、着弾した瞬間に広範囲へ広がり、周囲の岩を次々と飲み込み、静かに熱い泥土へと還していきました。
ケイスケは、赤く光る溶岩が静かに冷えていくのを眺め、三人に問いかけました。
「どうだい、組み合わせるだけで威力も性質も別物になる。……次はどんなアイデアを形にしてみたい? 君たちの想像力に応えてみせるよ」
ケイスケは周囲の騒がしい熱気を一度落ち着かせるように、静かに両手を広げました。
「攻撃だけじゃない。生き残るために一番大切なのは、敵より先に敵を知ることだ。索敵魔法も教えるね。水、風、土の属性を使って、周囲の状況を把握する。……いくよ。サーチ」
ケイスケが静かに言葉を紡ぐと、彼を中心に目に見えない波動が同心円状に広がっていきました。
「ただ魔力を放つんじゃない。属性ごとに役割を持たせるんだ。風は空気の振動で音と動きを捉え、水は空気中の湿度の変化で生き物の体温や気配を探り、土は地面に伝わるわずかな振動で距離と位置を特定する。……ほら、あそこの茂みの奥に、小さな野兎が三匹隠れているのがわかるだろ?」
170cmの長身を誇る三人の美人は、驚きに目を見開きました。彼女たちが知る索敵魔法は、膨大な魔力を消費して「気配」をなんとなく探る程度の不確かなものでしたが、ケイスケの教えるそれは、まるで自分の感覚が森全体に広がったかのような鮮明さでした。
マーガレット 「……すごい。風が運んでくる音の情報が、頭の中で地図になっていくみたい。サーチ!」
エリザベス 「地面を伝う鼓動が、足の裏からはっきりと伝わってくるわ。……北へ五百歩、何かが動いた。サーチ!」
アンジェリカ 「水の粒子が、命の輝きを反射しているようです。……深い闇の中でも、すべてが視える。サーチ!」
ケイスケは三人がそれぞれの感覚を拡張させていく様子を見て、頼もしげに頷きました。
「いいぞ。この三属性を同時に使えば、死角はなくなる。……これで攻撃、防御、癒やし、そして索敵。冒険者に必要な力はすべて揃った。さて、基礎も応用も完璧だ。……みんな、そろそろお腹も空いたんじゃないか?」
ケイスケは、まず重力から解き放たれる感覚を三人に示しました。
「いきなり風で飛ぶのは難しいから、まずはこれだ。レビテーション」
ケイスケが指先を上に向けると、彼の体が音もなく、ふわりと地上数メートルまで浮き上がりました。羽毛のように軽やかに、しかし安定して宙に留まっています。
「まずは自分の体を『重さのない風船』のようにイメージして、地面からの束縛を解くんだ。……さあ、やってみて」
170cmの長身を誇る三人の美人は、お互いに顔を見合わせた後、ケイスケの動きをなぞるように意識を集中させました。
マーガレット 「重さを……忘れる……。あ、浮いたわ!」 彼女は驚きに声を上げながら、最も早くふわりと宙に浮き上がりました。
エリザベス 「不思議な感覚ね。鎧の重ささえ感じない。……よし、安定したわ」 エリザベスも、長身の体躯をしなやかに宙に留め、ケイスケと同じ高さまで上昇しました。
アンジェリカ 「天に引き上げられるような……穏やかな感覚です」 アンジェリカは優雅に、まるで羽が舞い上がるように静かに浮かび上がりました。
三人がレビテーションで安定して宙に浮いたのを確認し、ケイスケは次のステップへ進みます。
「いいぞ、全員浮けたね。じゃあ、浮いたままで今度は風魔法を体に纏ってみて。それが推進力と舵になる。……いくよ、こうやって風の衣を纏うんだ」
ケイスケが自分の周囲に薄い風の膜を形成すると、その風を噴射して、弾丸のような速度で夜空を駆け抜けました。
「浮遊で浮いて、風で進む。これが『空を飛ぶ』理屈だ。……準備ができたら、あの町の灯りを目指して出発しようか!」
レビテーションで宙に浮き、風魔法を纏った三人は、いまだに自分たちが空中に留まっているという事実に、興奮と困惑が入り混じった様子で滞空しています。
170cmの長身を誇る彼女たちが、地上から数メートルの高さで夜風に髪をなびかせながら、あなた(ケイスケ)を囲んで浮かんでいます。
マーガレット 「……本当に、魔法の概念が壊れていくわ。レビテーションを維持しながら風魔法で姿勢を制御するなんて、本来なら一瞬で魔力が空っぽになるはずなのに……。ケイスケ、あんたのやり方だと、まるでお腹が空くのと同じくらい自然に力が湧いてくるのね」
エリザベス 「ああ。体の重さを感じないというのは、これほどまでに心地よいものなのか。……だが、これほどの力を手に入れて、私たちは本当に明日から今まで通りの『冒険者』でいられるのかしら。自分が自分じゃないような、そんな全能感すら覚えるわ」
アンジェリカ 「私は、この高さから見る森が、とても静かで……守るべきもののように見えます。ケイスケ様が教えてくださったのは、ただの破壊の術ではなく、世界を広く見るための『目』だったのですね」
三人は浮遊感に慣れてきたのか、空中でバランスを取りながら、あなたの次の言葉を待っています。夜の森は静まり返り、彼女たちが纏う風の音だけが微かに響いています。
ケイスケは空中に浮いたまま、三人の顔を見渡して不敵に笑いました。
「みんな、せっかく覚えたバレットを試したいだろ? 少し狩りをするか。実戦に勝る訓練はないからな。マーガレットには、ただ撃つだけじゃない『魔法矢』の作り方も教えるよ。弓使いとしての幅が広がるはずだ」
その言葉に、マーガレットは瞳を輝かせました。
「魔法矢……! 属性バレットを矢の形に固定して放つの? それができれば、私の弓はもうただの武器じゃなくなるわね」
ケイスケはさらに続けます。
「それと、みんなにプレゼントがある。これがないと、せっかくの獲物も持ち帰れないからな。――アイテムボックスだ」
ケイスケが空間を軽く撫でると、そこには波打つような透明な亀裂が生じました。
「これは空間魔法の応用で、自分だけの『亜空間の倉庫』を作る術だ。重さも大きさも関係ない。入れたものは時間は止まったまま、いくらでも収納できる。……さあ、一人ずつ自分の空間を固定するイメージを教えてやる。これができれば、重い荷物を背負って歩く必要も、獲物をその場に捨てていく必要もなくなるぞ」
170cmの長身を誇る三人は、空を飛ぶ魔法に続いて、伝説の「収納魔法」まで提示され、もはや驚きを通り越して感嘆の溜息を漏らしました。
エリザベス 「アイテムボックス……。騎士団でも、それを使えるのは一握りの高名な魔導師だけよ。それを、私たち全員に……?」
アンジェリカ 「重い荷物から解放されるだけでなく、食料も鮮度を保ったまま運べるなんて……。旅の常識が、根底から覆ってしまいます」
ケイスケは三人に、空間の「入り口」を固定する方法を教え始めました。
ケイスケは空中からゆっくりと舞い降り、三人もそれに続いて地上へ着地しました。足元が安定したのを確認し、ケイスケはマーガレットに向き合います。
「さて、まずはマーガレットに魔法矢の作り方を教えるよ。弓使いなら、矢が尽きる心配がなくなるのは大きいだろ? 土魔法を使って、矢の形を正確にイメージして……『生成』」
ケイスケが掌の上に魔力を集めると、そこには実体を持った、鋭くしなやかな一筋の矢が作り出されました。
「こうやって土属性の魔力を物質化させるんだ。次はこれに好きな属性のバレットを乗せれば、それが魔法矢になる。さあ、やってみて」
マーガレットは真剣な眼差しで、教えられた通りに土の魔力を練り上げました。
マーガレット 「土の魔力を、細く、鋭く、矢の形に……。『生成』!」 彼女の掌の上に、本物と見紛うばかりの精巧な矢が現れました。 「すごいわ、これなら矢筒を気にする必要がないし、バレットを乗せれば威力が何倍にもなる……!」
ケイスケは頷き、今度は三人全員を見渡しました。
「次はみんなにセカンド武器をあげる。護身用や、とっさの時に使える短剣だ。これも同じように、短剣の形状を強くイメージして……『生成』」
ケイスケの手の中に、月の光を反射する鋭い短剣が三振現れました。それを一人一人の前に差し出します。
「これをイメージの雛形にして、自分でも作れるようになっておくといい。これに属性を付与すれば、どんな硬い鎧も切り裂く魔剣になる。……さあ、自分だけの短剣をイメージして生成してみて」
170cmの長身を誇る三人は、差し出された短剣を手に取り、その重みと鋭さを確かめながら、自らも武器を「無」から生み出すという未知の感覚に集中し始めました。
ケイスケは周囲の静まり返った森へ向けて、静かに意識を広げました。
「さて、実戦での立ち回りを具体的に教えるよ。まずはサーチで周囲を確認して」
ケイスケの魔力が波紋のように広がり、闇に潜む獲物の位置が浮き彫りになります。
「いいかい。もし敵と鉢合わせた時、近接戦ではまずバインドで相手を確実に拘束する。動きを止めたら、アクセルで一気に間合いを詰めて、今作った短剣で急所をグサり……。これで終わりだ。無駄な動きはいらない」
ケイスケは手本を見せるように、瞬きする間に前方の木へと肉薄し、生成した短剣の先を寸止めしてみせました。
「逆に敵が多かったり、距離がある広域戦なら、これまで教えた好きなバレットをばらまけばいい。数で押されても、一発一発が必殺の威力だから負けることはないよ」
170cmの長身を誇る三人は、その合理的かつ圧倒的な戦術に、背筋が震えるような興奮を感じていました。
エリザベス 「サーチで位置を掴み、バインドで封じ、アクセルで仕留める……。騎士団の集団戦法を、たった一人で完結させる戦い方ね。これなら、どんな強敵が相手でも負ける気がしないわ」
マーガレット 「遠距離は魔法矢とバレットの弾幕、近づかれたら瞬速の短剣……。隙がなさすぎるわね。魔法使いの弱点である『詠唱時間』と『接近戦』が、ケイスケの教えで完全に消えたわ」
アンジェリカ 「サーチのおかげで、守るべき相手も、倒すべき相手も、すべて掌の上ですね。……この短剣の重み、忘れないようにします」
ケイスケは三人に、自ら生成した短剣を構えさせました。
「よし、イメージはできたね。……じゃあ、今サーチで捉えたあっちの大型種で、実際にこの一連の流れを試してみようか。誰からいく?」
ケイスケは指先で森の奥を指し示し、三人に最終確認の合図を送りました。
「よし、三人でいけ。連携のテストだ。……開始!」
ケイスケの号令とともに、170cmの長身を誇る三人の女神たちが、夜の静寂を切り裂いて一斉に飛び出しました。
ターゲットは、サーチ魔法が捉えた森の奥に潜む巨大な魔獣、フォレストバイソン。岩のように硬い毛皮を持つ巨体ですが、彼女たちの敵ではありませんでした。
索敵と接近(サーチ & アクセル)
まずアンジェリカが先行し、サーチで魔獣の正確な弱点を共有します。 「逃しません……! 右後方から、もう一頭来ます!」 その声と同時に、エリザベスがアクセルを起動。強化された脚力で地を蹴り、目にも留まらぬ速度でバイソンの懐へと潜り込みました。
拘束と急所(バインド & 短剣)
エリザベスが短剣を抜くと同時に、マーガレットが後方からバインドバレットを放ちました。 「捕まえたわ!」 光の鎖がバイソンの巨体を地面に縫い付け、一歩も動けなくさせます。そこへエリザベスの短剣が閃き、生成された土魔法の刃が、硬い毛皮を紙のように切り裂いて急所を正確に貫きました。
広域殲滅
直後、アンジェリカが警告した二頭目が茂みから飛び出してきます。しかし、マーガレットは落ち着いて空中に複数の火と雷のバレットを展開しました。 「邪魔よ!」 放たれた弾丸の雨が、二頭目のバイソンを近寄らせることなく爆発と共に粉砕しました。
わずか数秒。 森には再び静寂が訪れ、足元には完璧に仕留められた獲物が横たわっていました。
三人は生成した短剣の血を払い、驚きと高揚感に包まれたまま、自分の手を見つめています。
「……信じられない。あんな巨体を、一度も攻撃をかすらせることなく……」 エリザベスが静かに呟きました。
ケイスケはゆっくりと三人のもとへ歩み寄りました。
「完璧だ。サーチ、バインド、アクセル、そして急所。基本通りの素晴らしい連携だったよ。……さあ、アイテムボックスの出番だ。獲物をしまって、そろそろ飯にしようか」
ケイスケは横たわるフォレストバイソンの巨体を見下ろし、三人に手招きをしました。
「よくやった。次は後片付けだ。大きな獲物をそのまま持ち運ぶのは大変だから、ここで解体魔法を教えるよ。手も服も汚さずに、一瞬で素材ごとに分ける方法だ」
ケイスケはバイソンの上に手をかざし、魔力のラインを細く、鋭くイメージしました。
「バレットの応用で、極薄の魔力の刃を網目状に走らせるイメージだ。肉、皮、骨、魔石……それぞれの境界線に魔力を通して切り離す。――『ディスアセンブル』」
ケイスケが呟くと、バイソンの巨体が淡い光に包まれました。次の瞬間、音もなく毛皮が剥がれ、肉は部位ごとに整然と切り分けられ、骨と内臓が完璧に分離されて地面に並びました。返り血一滴すら飛び散らない、芸術的な解体です。
「これを一人ずつやってみて。解体が終わったら、さっき教えたアイテムボックスに収納する練習だ。自分の空間の入り口を開いて、これらを吸い込ませるイメージを持って」
三人は驚きを押し殺し、教えられた通りに集中しました。
マーガレット 「細胞の隙間に魔力を滑り込ませる……。『ディスアセンブル』! ……すごい、本当に一瞬で。それじゃ、これを通路へ!」 彼女が空間に手をかざすと、切り分けられた肉が次々と虚空へ消え、彼女の個人空間へと収納されていきました。
エリザベス 「実戦だけでなく、事後処理まで魔法で完結するとはな。『ディスアセンブル』。……よし、皮と角もアイテムボックスへ。重さを全く感じないのが不思議な感覚だ」 彼女は生成したばかりの短剣を収めるように、手際よく素材を空間へ放り込んでいきました。
アンジェリカ 「命を無駄なく、清らかなままいただくことができますね。『ディスアセンブル』。……収納完了しました。ケイスケ様、これで荷物の心配は一切ありません」
三人が全ての素材をそれぞれのアイテムボックスへ収めると、そこには何もなかったかのように綺麗な地面だけが残りました。
ケイスケは満足げに頷きました。
「合格だ。これでいつでもどこでも最高級の肉を持ち歩けるようになったな。……よし、いい時間だ。森の開けた場所で焚き火でもして、さっそくこの肉を料理しようか」
ケイスケは焚き火の場所に適した平らな地面を見つけると、再び土魔法を行使しました。
「じゃあ、まずは竈を作るぞ。火力を安定させて、効率よく調理するために必要だからな」
ケイスケが地面に手をかざすと、土が盛り上がり、瞬く間に四角い石造りの竈が形作られました。
「その上に、肉を焼くためのストーンプレートだ」
さらにケイスケが指先で促すと、竈の天板となるように、滑らかで熱を均等に伝える性質を持つ平たい石板が生成され、ぴたりと竈の上に収まりました。
「これで準備万端だ」
ケイスケはアイテムボックスから、どこから出したのか、小洒落たガラス瓶に入った白い塩と、人数分の小皿を当たり前のように取り出しました。その手際の良さは、まるで一流のシェフが手品を見せるかのようでした。
切り分けられたフォレストバイソンの肉をストーンプレートに乗せると、ジュウ、という食欲をそそる音と香ばしい匂いが夜の森に広がり始めます。
170cmの長身を誇る三人の美人は、その手際の良さと、一切の無駄がない動き、そして何気ない気遣いに、これまで感じたことのない胸の高鳴りを覚えていました。
マーガレット (攻撃魔法、防御魔法、回復魔法、索敵、飛行、収納、解体……そしてこんな手際の良い料理まで。この人は一体、何ができないの? まるで、世界のすべてを知り尽くした神様みたい……) 彼女は熱い肉から立ち上る湯気を見つめながら、ケイスケの横顔を盗み見、頬を赤らめていました。
(魔法だけじゃなくて、こんなことまで……。この人と一緒にいたら、どんな場所だって最高の場所に変わってしまう。……もう、目が離せないわ)
エリザベス (私が知る騎士や魔導師は、みな何かに特化している。だが、ケイスケはあらゆる分野で常識を遥かに超えている。しかも、この自然体で……。彼と共にいれば、どんな困難も乗り越えられる。この人になら、私のすべてを預けられるかもしれない……) 彼女は普段の凛々しい表情を崩し、ストーンプレートを見つめるケイスケの横顔に、熱っぽい視線を送っていました。
(戦場での強さだけではない。この細やかな気配りと落ち着き……。私が求めていた強さは、こういう形をしていたのかもしれない。……胸の鼓動が止まらない)
アンジェリカ (ケイスケ様……。こんなに優しくて、頼りになって、そして何でもできてしまう方が、本当にこの世界にいたなんて。まるで、私の祈りが形になったかのようです。この温かさ、この香り……すべてが、私にとっての『祝福』だわ) 彼女は肉を焼くケイスケの背中に、純粋な憧憬と、それに混じる甘やかな感情を隠しきれない様子でした。
(ケイスケ様……。まるでお父様のような安心感と、騎士様のような頼もしさ。こんな素敵な方に巡り合えたのは、神様が私にくれた一番の奇跡です)
三人の視線がケイスケに集中し、その目には明らかに「恋する乙女」特有の、熱く、甘い輝きが宿っていました。
ストーンプレートの上で肉が最高に美味そうに焼き上がったその時、三人の間に熱い火花が散り始めました。ケイスケが焼き上がった最初の一切れを手に取った瞬間、三人の視線がそこに集中します。
「ケイスケ! 最初の一切れは私にちょうだい! ほら、さっきのバイソン戦で、最後にあんなに派手にバレットをばらまいたのよ。お腹ぺこぺこなの!」 マーガレットが、身を乗り出してケイスケの腕を掴まんばかりの勢いで主張しました。
「待て、マーガレット。バイソンの懐に真っ先に飛び込んで、急所を仕留めたのは私だ。最も危険な役割を果たした者にこそ、最初の一切れが与えられるべきだろう。……ケイスケ、私に」 エリザベスが静かですが、強い意志を宿した瞳でケイスケを見つめます。
「二人とも、はしたないですよ……」 アンジェリカが控えめに、しかし一歩も引かない様子で二人の間に割り込みました。 「サーチでずっと周囲を警戒し、皆さんの安全を守っていたのは私です。それに、命をいただく前の感謝の祈りを捧げるのも私の役目……。ですから、ケイスケ様……私に」
「ちょっとアンジェリカ、ちゃっかり自分だけ名前で呼んで取り入ろうとしないでよ!」 「エリザベスこそ、さっきからケイスケの隣を陣取りすぎだ!」 「アンジェリカさんも、祈りにかこつけて独占しようとするのは感心しません!」
170cmの長身を誇る三人の美女たちが、ケイスケを挟んで火花を散らします。先ほどまでの完璧な連携はどこへやら、今やケイスケの「最初の一切れ」を巡る、乙女のプライドをかけた争奪戦へと発展していました。
三人の視線がケイスケに突き刺さります。その瞳は「私を一番に選んで」という熱い訴えで溢れていました。
ケイスケはトングを手にしたまま、美女三人に詰め寄られて苦笑いするしかありません。
三人がヒートアップする中、アンジェリカがふと表情を和らげ、居住まいを正してケイスケの瞳を真っ直ぐに見つめました。その真剣な響きに、マーガレットとエリザベスも口を閉じ、静かにケイスケの答えを待ちます。
「ケイスケ様……。一つ伺ってもよろしいでしょうか。これほどの力と知恵をお持ちのあなたが……これから、どうされるおつもりなのですか?」
アンジェリカの問いには、単なる予定の確認以上の意味が含まれていました。自分たちをここまで引き上げてくれた「導き手」が、この先どこを目指し、自分たちとの関係をどう定義しようとしているのか。その切実な思いが、夜の森の静寂に溶け込んでいきます。
アンジェリカは、ケイスケが自分たちの元を去ってしまうのではないかという不安を胸に秘め、祈るように手を組んでいます。
エリザベスは、短剣の柄にそっと手を置き、ケイスケがどこへ行こうともその剣として付き従う覚悟を瞳に宿しています。
マーガレットは、冗談めかした態度を捨て、期待と寂しさが入り混じった表情でケイスケの次の言葉を待っています。
ストーンプレートの上で肉が爆ぜる音だけが響く中、三人の「恋する乙女」たちは、ケイスケの口から語られる「未来」を固唾を呑んで待っています。
アンジェリカの問いに、先ほどまで騒がしかったマーガレットとエリザベスも、はっとしたようにケイスケを見つめました。焚き火の光に照らされた彼女たちの瞳には、純粋な疑問と、それ以上に「特別な理由」を期待する熱い色が混じっています。
アンジェリカが、潤んだ瞳で重ねて問いかけます。
「ケイスケ様……。これほどまでの魔法や技術は、本来なら誰にも教えず、自分だけの力として独占してもおかしくないはずです。それなのに……どうして私たちに、惜しみなく全てを教えてくださったのですか?」
170cmの長身を誇る三人は、息を呑んで答えを待ちます。彼女たちにとって、この短時間の出来事はあまりに奇跡的で、ケイスケという存在があまりに眩しすぎたからです。
アンジェリカは、自分の存在に何か意味を見出してもらえたのかと、震える手で胸元の紋章を握りしめています。
エリザベスは、ただの「便利な戦力」としてではなく、一人の人間として自分を選んでくれたのかと、縋るような視線を向けています。
マーガレットは、いつも明るい彼女らしからぬ真剣な表情で、ケイスケの唇が動くのをじっと見守っています。
静まり返った森の中で、ストーンプレートから立ち上る湯気の向こう側、ケイスケは三人の顔を一人ずつゆっくりと見渡しました。
ケイスケはストーンプレートで肉を裏返すと、少し照れくさそうに、しかし包み隠さず本音を口にしました。
「どうしてかって? ……はっきり言って、三人とも美人で、胸も大きくて、お尻も大きい。……ぶっちゃけ、俺の好みだったからだよ」
あまりにストレートすぎるケイスケの告白に、夜の静寂が凍りついたかのように静まり返りました。三人は顔を真っ赤にし、驚きで目を見開いています。
「それに、これからどこに行くかも決めてないんだ。アテもないしね」
ケイスケが肉の焼ける匂いと共にそう言い放つと、三人の反応は三者三様でした。
マーガレット 「ちょ、ちょっと……! 何よそれ、そんな……そんな理由で!? 恥ずかしいことさらっと言わないでよ!」 彼女は顔を両手で覆いながらも、指の間からケイスケを熱っぽく見つめ、口元には隠しきれない喜びの笑みが漏れています。
エリザベス 「……好み、だと。私のような女を、その、魅力的な女性として見てくれていたのか……?」 エリザベスは自らの体を抱きしめるように腕を回し、凛々しい顔をこれ以上ないほど赤く染めて俯きました。しかし、その瞳には強い光が宿り、ケイスケに従う決意がより一層固まったようでした。
アンジェリカ 「ふふ……。正直な方なのですね。ケイスケ様らしいです。……アテがないのでしたら、私たちがあなたの『アテ』になります。どこへでも、地の果てまでもお供いたします」 アンジェリカは頬を上気させながらも、慈愛に満ちた、そして独占欲の混じった艶やかな微笑みをケイスケに向けました。
ケイスケは焼き上がった肉をそれぞれの小皿に取り分け、三人に差し出しました。
「まあ、そんなわけだ。下心がある男の教えでも、嫌じゃなければこれからも一緒にいてくれると嬉しいんだけどな。……ほら、冷めないうちに食えよ」
170cmの長身を誇る三人の美女たちは、差し出された肉を受け取ると、もう「はい」以外の言葉が見つかりませんでした。彼女たちの心は、ケイスケの強さだけでなく、その正直で飾らない人間性に完全に射抜かれていました。




