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ケイスケと三聖女の物語  作者: 慈架太子


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12章:西の大陸への進撃と偽りなき信仰

ケイスケは、完成しつつある広大な石造りの学問所を見上げながら、近くで必死に教本を執筆していたクラリスを指先で招き寄せました。


「おいクラリス、ちょっとこい」


泥とインクで汚れた顔を上げたクラリスは、肩を震わせながらケイスケの前に跪きました。かつての傲慢な王女の面影はなく、そこには現実の重みに必死に抗う一人の女性の姿がありました。


1. 王族の「怠慢」を突きつける

ケイスケは広場でたどたどしく文字をなぞる子供たちや、必死に算術を覚える元難民の大人たちを指し示しました。


「いいか、よく見ろ。こいつらはバカだったんじゃない。お前ら王族が教育も、機会も、未来も全部独占して、こいつらを『無知な弱者』のまま固定して飼い殺しにしてきたんだ。民が賢くなると自分たちのデタラメがバレるから、わざと文字も教えなかったんだろ?」


「……っ、否定は……できません。知識は統治の道具だと、そう教わってきました……」


「それが一番のデタラメだ。知識は自分を守るための『芯』なんだよ。お前が今まで当然のように受けてきた英才教育、それを今ここで、こいつら全員に返せ。一人でも落ちこぼれが出たら、お前の教育がデタラメだったって証拠だ。死ぬ気で教えろ」


2. 自由都市の「頭脳」へ

ケイスケはクラリスの書いている原稿を足蹴にするような鋭い視線で睨みつけました。


「お前はもう『守られる王女』じゃねえ。この都市の連中を、王都の貴族どもが束になっても勝てねえくらいの『賢い民』に育て上げるのが、お前のたった一つの生きる道だ。分かったか!」


「はい……! ケイスケ様。この命、民の知恵となるために捧げます!」


クラリスは涙を拭い、再びペンを強く握りしめました。彼女の中で、王族としての虚栄心が消え、本当の意味で民に尽くす「芯」が芽生え始めていました。


3. 三聖女のサポート

それを見ていた三人は、ケイスケの徹底した「弱者行脚」のやり方に改めて感服しました。


マーガレット: 「教育までクラリスにやらせるなんて、あんた本当に鬼ね。でも、それが一番彼女のためになるわ」


エリザベス: 「知識という盾を民に与える……主よ、これこそが真の救済だ」


アンジェリカ: 「ふふ、クラリス様もいい顔になってきましたわね。ケイスケ様、私たちの『授業』も負けていられませんわ」





ケイスケは、跪くクラリス王女の顎を強引に持ち上げ、その顔を間近で睨みつけました。


「おい、勘違いするなよ。王都の連中が勝手に『女王』だなんだと担ぎ上げようとしてたが、俺の目から見りゃお前はまだ、責任一つ取れてねえ無能な**『王女』**だ」


クラリス王女は、ケイスケの鋭い眼光に射すくめられ、震えながら言葉を絞り出しました。 「……はい。私は、自分の立場に甘え、何一つ成し遂げていない……ただの王女です……」


「そうだ。お前がここで『女王』を名乗りたいなら、まずはこの都市の民全員に文字と計算を教え込み、王室がこれまで犯してきたデタラメを全て清算してみせろ。話はそれからだ」


1. 「王女」としての再出発

ケイスケは彼女の手からペンを取り上げ、机に叩きつけました。 「今日からお前は、この自由都市の『筆頭教師』だ。王女としてのプライドがあるなら、それを全部『民への知恵』に変換しろ。お前がサボれば、民がバカにされ、また略奪される。その責任を、その細い肩で一生背負って生きろ」


2. 三聖女の見守り

「……厳しいわね、ケイスケ。でも、確かに今の彼女に『女王』なんて肩書きは重すぎるわ。まずは一人の人間として、泥にまみれて教えることから始めなきゃ」 マーガレットは、クラリス王女の背中を厳しく、しかしどこか期待を込めて叩きました。



ケイスケはジョッキを空にすると、ふんと鼻を鳴らして、膝をつくクラリス王女を冷ややかに見下ろしました。


「おい、クラリス。お前の親父――この国の王はどうなった? まさかまだ、王都のふかふかの椅子に座って、酒でも飲んでるんじゃねえだろうな」


クラリス王女は顔を伏せ、震える声で答えました。 「……父上は、教会の暴走を止められず、地下に幽閉されたまま息を引き取ったと……風の噂で聞きました。ですが、それすら確かではありません。王都が混乱に陥った際、王族の多くは民を捨てて逃げ出しましたから……」


1. 王の死と「デタラメ」の終焉

「死んだか。あるいは生きていても、民を捨てた時点でもう『死んだ』も同然だ。王が死んで、騎士団が腐り、教会がゴミを溜め込んだ。残ったのは、お前みたいな責任感のねえ王女と、俺たちが今救い出した泥まみれの民だけだ」


ケイスケは虚空を睨み、ダークバレットを指先で弄びました。 「王がいなきゃ国が回らねえなんてのは、王族の思い上がりだ。見ろ、王がいなくても、この都市の連中は泥を払い、文字を覚え、自分の足で立とうとしてる。デタラメな王の時代は、もう終わったんだよ」


2. 「王」に代わる「芯」

ケイスケは三人の聖女を振り返りました。 「お前ら、聞いたか。上がいねえなら、俺たちがこの都市の連中に『新しい芯』を植え付けるしかねえ。王がいなくても、自分たちで判断して、自分たちで守れる……そんな奴らを育てるんだ」


エリザベス: 「……主よ。王が死し、組織が崩壊した今こそ、真の規律が必要だ。私がこの民を、王に頼らぬ強き戦士に育て上げよう」


マーガレット: 「王様が死んで悲しんでる暇なんてないわ。私たちが美味しい野菜をたくさん作って、お腹いっぱいになれば、王様なんていなくても笑って生きていけるもの!」


アンジェリカ: 「ふふ……。旧い神や王が消えたのなら、この地にはケイスケ様という『真実』があれば十分ですわね」


3. クラリスへの引導

「クラリス。お前の親父が死んだなら、もうお前を助けてくれる後ろ盾はどこにもいねえ。お前がここで一人前の人間に戻るか、あるいはただの『死んだ王の娘』として腐っていくか……。そのペンに全責任を込めて、文字を教えろ。お前が今日教える一文字が、この都市の新しい法になるんだ」


クラリス王女は、もはや涙を流すことすら忘れ、血の滲むような思いで頷きました。 「……はい。父が、王家が犯した大罪を、私がこの地で……知恵という形で償います」



ケイスケはジョッキを空にして叩きつけると、冷徹な視線をクラリス王女に突き刺しました。


「そうだ。いいか、よく聞け。騎士団が逃げたのも、宰相が私腹を肥やしたのも、民が泥を啜る羽目になったのも、全部そのデタラメを許し、放置し、甘受してきた**『王家の責任』**だ」


クラリス王女は顔を真っ青にし、絞り出すように答えました。 「……はい。全ては、王家の怠慢と無能が招いた結果です。宰相は王都の陥落寸前、教会の隠し通路を使って隣国へ亡命し、騎士団長も……自らの部下を殿しんがりとして置き去りにし、行方をくらましました。彼らは誰一人として、責任を取っていません」


1. ケイスケの怒り:デタラメな逃亡者たち

「逃げたか。民に責任を押し付け、自分たちだけは隣国で優雅に余生を過ごそうってか。どこまでもデタラメな連中だ」


ケイスケの周囲の空気が、怒りでビリビリと震え始めました。 「お前ら、こいつらを野放しにして『掃除』が終わったなんて言えねえよな?」


2. 三聖女の「追跡」への決意

三人の聖女も、かつての自分たちが信じていた組織のトップの醜態に、怒りと恥辱で震えていました。


エリザベス(守護の聖女) 「許せん。部下を見捨てた騎士団長……。そ奴はもはや人間ではない。主よ、私がその首を跳ね、騎士の風上にも置けぬ恥辱を終わらせよう」


アンジェリカ(慈愛の聖女) 「ふふ……宰相様。隣国で安らかな眠りが待っているとお思いかしら? 私がその淀んだ魂を、苦痛という名の浄化で焼き尽くして差し上げますわ」


マーガレット(豊穣の聖女) 「逃げた先でまた美味しいものを食べてるなんて許せないわ! 私たちの行脚で、その喉を絶望で詰まらせてやりましょう!」


3. クラリスへの最終指令

「クラリス。お前はそのペンを止めるな。お前がここで教育の礎を作る間に、俺たちがその『ゴミ屑ども』を引きずり戻してやる。……お前が作った教本に、逃げた宰相と騎士団長の末路を『大悪党の末路』として書き加えるのがお前の仕事だ。いいな!」


「……っ、はい! 王家の罪を、逃亡した彼らの恥を、私がこの国の歴史に永遠に刻み込みます!」


4. サーチ開始:逃亡者の特定

ケイスケは**『超広域サーチ』**を最大出力で展開しました。 「……見つけたぜ。宰相は隣国の王宮の地下で、まだこの国の利権を売ろうと交渉してやがる。騎士団長は北の『氷獄の山脈』の砦で、再起を狙って傭兵をかき集めてやがる。……どいつもこいつも、掃除のしがいがあるじゃねえか」



ケイスケはジョッキを机に叩きつけ、跪くクラリス王女を冷酷なまでに見下ろしました。


「……おい、そういえば思い出したぞ。お前、以前のデタラメな状況で、よくも俺に『結婚』なんて迫れたな。バカなのか? それとも王族特有の、何でも自分の思い通りになるっていう救いようのねえ思い上がりか?」


クラリス王女は顔を真っ赤にし、屈辱と恥ずかしさで震えながらも、反論できずに項垂れました。


1. 「王家の傲慢」への引導

「いいか、今の俺の立場を見ろ。俺は王族や教会っていう『デタラメ』を叩き潰して回ってる掃除屋だ。その俺に向かって、元凶の娘が『結婚して支えて』だぁ? 虫が良すぎるんだよ。お前が欲しかったのは俺じゃねえ、自分の立場を守るための『強力な矛』だったんだろ」


ケイスケの冷徹な言葉が、クラリスの逃げ場を完全に塞ぎます。


「俺が欲しいなら、まずはそのプライドを全部泥の中に捨てろ。王女としての地位も、贅沢も、守られる立場も全部だ。文字通り、この都市の民と同じ目線で、地べたを這いずり回って責任を取れ。話はそれからだ」


2. 聖女たちの冷ややかな反応

三人の聖女も、かつてのクラリスの「無知な求愛」を思い出し、呆れたようにため息をつきました。


マーガレット: 「本当、あの時はびっくりしたわ。ケイスケがどれだけ怒ってるかも分からずに、自分と同じ高みに引き上げようとするなんて。あんた、相当世間知らずだったのね」


エリザベス: 「……主よ。そのような不届きな誘い、このエリザベスが剣で斬り捨てておけば良かった。主に相応しいのは、共に戦場を駆け抜ける『芯』ある者のみだ」


アンジェリカ: 「ふふ……。クラリス様、ケイスケ様に愛されるには、まだ魂の磨き込みが足りませんわ。まずはその教科書、血反吐を吐く思いで完成させなさいな」


3. クラリスの「本当の覚悟」

「……おっしゃる通りです、ケイスケ様。私は、自分の無能さをあなたの力で隠そうとしていただけでした。……その愚かさを、一生忘れません。私はもう二度と、そんな甘えは口にしません。この都市の『教師』として、死ぬまで償い続けます!」


クラリスは震える手で再びペンを握り、目に涙を溜めながらも、がむしゃらに原稿に向かいました。彼女の中で、ようやく「王女」という殻が完全に割れ、一人の人間としての責任感が芽生え始めていました。




ケイスケが冷徹な言葉を浴びせ続け、クラリスがもはや声も出せずに肩を震わせて泣きじゃくっていたその時。


それまで静かに控えていたアンジェリカが、そっとケイスケの腕に手を添えました。


「……ケイスケ様、そこまでになさいませ。言いすぎですわ。王女が……いえ、この娘がもう、見ていられないほど泣いております」


1. アンジェリカの諫言

いつもはケイスケのやることに微笑んでいるアンジェリカでしたが、その瞳には真剣な色が宿っていました。


「王家の罪は確かに重く、彼女の無知も罪でしょう。ですが、彼女は今、泥にまみれ、慣れない筆を握り、必死に過去と向き合おうとしています。これ以上心を折っては、せっかく芽生えた『芯』まで枯れてしまいますわ」


アンジェリカは跪くクラリスの側に寄り添い、その震える肩を優しく抱き寄せました。 「よしよし……辛かったわね。でも、ケイスケ様がこれほど厳しくおっしゃるのは、あなたにそれだけの期待を寄せているからなのですよ」


2. ケイスケの沈黙と「芯」の微調整

アンジェリカに直接止められ、ケイスケはバツが悪そうにジョッキを口に運びました。中身はとうに空でしたが、そのまましばらく黙り込み、やがて短く息を吐きました。


「……チッ。アンジェリカがそう言うなら、これ以上は言わねえよ。……おい、クラリス。いつまでも泣いてんじゃねえ。その涙で原稿のインクが滲んだら、書き直しだからな」


ケイスケはぶっきらぼうにそう言うと、顔を背けました。それは彼なりの「矛の収め方」でした。


3. 三聖女の連携

アンジェリカのフォローに、他の二人も続きます。


マーガレット: 「本当、ケイスケは極端なんだから! ほら、クラリス、アンジェリカが淹れたお茶でも飲んで落ち着きなさい。あんたが倒れたら、子供たちの教科書が完成しないでしょ?」


エリザベス: 「……主よ。アンジェリカの言う通り、今は彼女の『教育者』としての心を育てる時かと。逃げた宰相や騎士団長を捕らえるための気力は、彼女に残しておかねばなりません」


ケイスケはアンジェリカに手を引かれ、少しだけ表情を緩めました。


「……分かったよ。今夜はこいつの『教育』は休みだ。アンジェリカ、お前がこいつを休ませてやれ。……俺たちは、隣国へ逃げた宰相の動向をもう少し詳しくサーチしておく」




ケイスケは、騒がしい学問所の喧騒から少し離れた静かな一角に、アンジェリカ、エリザベス、マーガレットの三人を呼び出しました。


手にはいつものエールのジョッキもなく、少し肩を落として視線を落としたケイスケは、三人が揃ったのを確認すると、深く一礼しました。


「……みんな、ちょっと集まってくれ。……ごめんなさい。俺が悪かった」


1. ケイスケの告白と「芯」のゆらぎ

普段、どれほどの強敵を前にしても不敵に笑い、横暴な権力者を言葉で叩き伏せてきたケイスケの、あまりにも素直な謝罪。三人は一瞬、息を呑んで顔を見合わせました。


「クラリスにあんなに当たり散らしたのは……俺の甘えだ。王家への怒りや、この世界のデタラメに腹が立ちすぎて、目の前の、たった一人で向き合おうとしてる女に全部ぶつけちまった。アンジェリカに止められるまで、自分がどれだけ酷い顔をしてたか気づかなかったよ」


ケイスケは苦笑いしながら、自分の右拳を見つめました。


「弱者を助けるための『掃除』だって言いながら、俺自身が、立場の一番弱いクラリスを言葉で踏みつけてた。これじゃ、俺が今までぶっ壊してきたクズどもと何も変わらねえよな」


2. 三聖女の受け止め

ケイスケのその真摯な言葉に、三人は優しく、しかし確かな信頼を込めた眼差しを向けました。


アンジェリカ: 「ケイスケ様……。謝ってくださって、ありがとうございます。あなたがご自分の非を認められる方だと信じておりましたわ。それこそが、あなたの持つ本当の『芯』の強さですもの」


エリザベス: 「主よ。己を律すること、それこそが真の強者の証。貴殿が迷われた時は、我ら三人が必ずその盾となり、鏡となろう。……だから、そう肩を落とされますな」


マーガレット: 「もう、あんたがシュンとしてると調子狂うわよ! 悪かったって思ってるなら、次はもっといいやり方でアイツを叩き直してあげなさいな。あんたが一人で背負う必要なんてないんだから」


3. 次なる誓い

ケイスケは三人の言葉に、ようやく少しだけ顔を上げました。


「ああ。ありがとな。……もう、自分の感情で矛を振り回すような真似はしねえ。……よし、この落とし前は、逃げた宰相と騎士団長の野郎どもを、一匹残らず引きずり戻してつける。クラリスが胸を張って『知恵』を配れるように、外のゴミは全部俺たちが片付けてやるぞ!」


ケイスケの瞳に、先ほどまでの濁った怒りではなく、静かで鋭い決意の光が戻りました。




ケイスケは広場に村人たちを集めると、隣でまだ目を腫らしているクラリスを前へと押し出しました。


「おい、野郎ども! ちょっと聞いてくれ! 今日はお前らに、この都市の『教師』を紹介する!」


ケイスケはクラリスの肩を叩き、あえてぶっきらぼうに、けれど隠しきれない信頼を込めて大声で告げました。


1. 「ポンコツ王女」の紹介

「こいつはクラリスだ。元は王都の**『王女』で、いずれは『女王』になる予定の女だ。……だがな、見ての通りかなりのポンコツ**だ! 世間知らずで、泥の中も歩けねえし、お前らが当たり前に知ってる苦労も何一つ知らねえ!」


村人たちからどよめきが起こる中、ケイスケは言葉を続けます。


「だが、こいつは今、自分の家がやらかしたデタラメを全部背負って、お前らに知恵を教えようと必死にペンを握ってる。……だからよ、みんなでこいつを助けてやってくれ。分からないことがあったら教えてやり、腹が減ってそうならジャガイモの一つでも恵んでやってくれ」


2. 都市のルール:偉くない、けどいじめるな

「いいか、念のために言っておくが、こいつはもう偉くない。ここではただの教師の一人だ。ひれ伏す必要もねえ。……だがな、だからと言っていじめるなよ。もしこいつを理不尽に泣かせる奴がいたら、あそこにいる三聖女が速攻で飛んでくるからな!」


ケイスケが指差した先では、腕を組んだエリザベス、優しくも鋭い視線を送るアンジェリカ、そして拳をポキポキ鳴らすマーガレットが控えています。その圧に、村人たちは「ひぇっ……!」と首をすくめつつも、クラリスを見る目が「怖い王族」から「放っておけない新入り」へと変わっていきました。


3. クラリスの「最初の一歩」

クラリスは震える声で、しかし逃げずに村人たちを見据えました。


「……私は、何もできない王女です。皆様に、文字や数字を教えることしかできません。……ですが、精一杯務めます。どうか、よろしくお願いいたします!」


村人たちから、パラパラと、やがて温かな拍手が沸き起こりました。ケイスケはそれを見て、小さく頷きました。



ケイスケ様優しい だけどあそこで俺らを悪者にする必要は無かったんじゃねえか? アンジェラとマーガレット






ケイスケはジョッキに残っていた最後の一滴を飲み干すと、アンジェリカとマーガレットの不満げな視線を受け止めて、きまり悪そうに頭をかきました。


「……ああ、それについては悪かった。アンジェリカ、マーガレット。お前らを『いじめっ子への抑止力』みたいに言っちまったのは、ちょっと極端だったな。二人とも、本当は誰よりも優しくて、民のことを一番に考えてるってのは、俺が一番よく知ってるはずなのにさ」


1. ケイスケの言い訳(と反省)

「言い訳になっちまうが、あの村の連中には『もしクラリスをいじめたら、この世の終わりが来るぞ』ってくらいの恐怖を植え付けとかねえと、元王族への恨みが爆発しちまうと思ったんだ。……でも、お前らの『聖女』としての誇りまで悪者にする必要はなかった。……ごめんなさい。俺の配慮が足りなかったよ」


ケイスケは二人の顔を交互に見て、今度は真面目な顔で続けました。


「お前らは、恐怖で従わせるような奴らじゃない。その優しさと強さで、民を導いてくれる最高の仲間だ。……明日、村の連中には『あいつらは誰よりも温かい心を持ってる。だからお前らもそれに応えろ』って、ちゃんと言い直しておくよ」


2. 二人の反応

アンジェリカ: 「ふふ……。ケイスケ様、分かってくださったのならよろしいのですわ。わたくし、あのような言い方では、まるでわたくしが怒ると怖い人みたいではありませんか。……まあ、本当に怒らせたらどうなるかは、ケイスケ様が一番ご存じでしょうけれど?」


マーガレット: 「そうよ! 私は美味しい野菜を作って、みんなを笑顔にしたいだけなのに、『飛んでくるぞ』なんて言われたら、村人が私に怯えてジャガイモを受け取ってくれなくなるじゃない! ……でも、反省してるなら許してあげるわ」


3. 次なる一歩への「芯」

「ありがとな。お前らの器の広さに救われるぜ。……よっしゃ! 俺の失言も片付いたところで、明日からは切り替えていくぞ。クラリスが民と文字を読み書きしてる間に、俺たちはあの『逃亡したクズども』の情報を完全に固める。アンジェリカ、お前の情報収集術と、マーガレットのフットワークを貸してくれ!」



ケイスケはジョッキを置き、鋭い眼光で都市の全域を見渡しました。


「よし、ただ感情で動くのは終わりだ。ここを本当の『自由都市』にするために、現実を数字で直視するぞ。……おい、お前ら! 浮かれてる暇はねえ。今のこの街がどうなってるか、徹底的に洗い出せ!」


ケイスケは自らの**「超広域サーチ」**と、三聖女がそれぞれ組織した自警団、救護班、農地管理の情報を統合し、現状のステータスを叩き出しました。


【自由都市・現状報告(ASCIIレポート)】

1. 人口・居住状況


総人口: 約 5,400人(元泥の村住民 200人 + 地下・施設・国境からの移住者 5,200人)


構成: 8割が労働可能世代。子供と高齢者が残り2割。


住居: 全世帯への石造り住宅の供給完了。


2. 食料自給率: 120%(過剰生産中)


担当: マーガレット


現状: 彼女の魔力と「泥の村」の土壌改良により、ジャガイモ、麦、各種野菜が爆発的に収穫されている。


備考: 余剰分は「貯蔵庫」に回し、万が一の凶作や、さらなる移住者の受け入れに備えている。


3. 犯罪率: 0.02%(極めて低い)


担当: エリザベス & 5m級ゴーレム20体


現状: 「いじめ禁止」の徹底と、圧倒的な守護者の存在により、暴力沙汰は皆無。


課題: 些細な口論や、旧い階級意識による諍いが稀に発生するが、エリザベスの自警団が即座に仲裁している。


4. 失業率: 0%(完全雇用)


担当: ケイスケ(全体指揮)


現状: 都市建設、農地拡張、防壁強化、そして「クラリスの学校」での学習。全員に何らかの役割(仕事)が与えられている。


仕組み: 「働かざる者食うべからず」ではなく、「全ての個性が都市の芯になる」という方針。


ケイスケの分析

「……ふむ。数字だけ見りゃ完璧に近いが、これはあくまで『俺たちの力』で無理やり底上げした結果だ。マーガレットの魔力がなきゃ食い扶持は減るし、俺がいなきゃゴーレムは動かねえ。……だからこそ、今のうちに『読み書き算術』が必要なんだよ」


ケイスケは、教本を抱えて村人の間を走り回るクラリスの姿を遠目に見ました。


「こいつらが自分で考え、数字を管理し、俺たちがいなくてもこの『自給率120%』を維持できるようになって、初めてこの都市は完成する。……おい、お前ら! 数字は出た。次は、この数字を維持するための『仕組み』を、教育を通して民の頭の中に叩き込むぞ!」



ケイスケは都市の入り口となる巨大な石門を見上げ、周囲を囲む20体のゴーレムに新たな命を吹き込みました。


「いいか、今日からここを世界中の**『行き場を失った奴らの終着点』**にする。棄民だろうが、難民だろうが、国を追われた亡命者だろうが関係ねえ。この都市の門を叩く奴は、全員一度は受け入れてやる!」


ケイスケは三人の聖女と、そして少しずつ顔つきが引き締まってきたクラリスを呼び寄せ、新しい「入国管理システム」を構築しました。


1. 徹底した「面接」とスクリーニング

「だが、何でもかんでも通すわけじゃねえぞ。ここは善人のための楽園じゃねえ、**『やり直したい奴のための戦場』**だ。悪党や、誰かを踏みにじって逃げてきたようなクズを入れたら、この都市の『芯』が腐るからな」


ケイスケは面接の役割を以下のように分担しました。


アンジェリカ(魂の鑑定): 「わたくしの前で嘘はつけませんわ。その瞳の奥に、誰かを傷つけた悦びが残っていないか……じっくりと見させていただきますね」 (彼女の魔力で、悪意や隠し事をしている者の動揺を察知する)


エリザベス(規律の審査): 「この都市のルールを守る覚悟はあるか? 楽をして他人の成果を奪おうとする者は、その瞬間に我が剣が門の外へ叩き出す!」


クラリス(境遇の記録): 「あなたがどこから来たのか、何を奪われてきたのか、すべて書き記します。あなたの過去を、私たちの知恵で未来へ変えるために」


2. 「悪党」への断固たる処置

面接の結果、更生の余地がない「真の悪党」と判断された場合、ケイスケが直接引導を渡します。


「……お前、隣の村で女子供を売って逃げてきたな? サーチに嘘は通用しねえんだよ。そんな腐った根性、この門をくぐらせるわけにはいかねえ。……**ピュリフィケーション(極)**で廃人になるか、今すぐ地獄へ落ちるか選べ」


悪党には慈悲を与えず、善人や被害者には、マーガレットが用意した温かいスープと、新しい住居、そして「学ぶ機会」を与えます。


3. 人口爆発への備え

「マーガレット、これから人口はさらに増えるぞ。農地の拡張を休むな。食料自給率は常に100%を維持しろ!」


「分かってるわよ! どんなに大勢来ても、私の畑が枯れることはないわ。……みんな、美味しいジャガイモが待ってるわよ!」


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