第85話 名前が変わって、私も少しずつ変化してた
私は静かに、
「過去の自分と決別しよう」
と決意し、改めて
「好きでもなかった和馬と、なぜ結婚までしたのか?」
その理由を、自分なりに分析してみた。
まず、私自身、複雑な家庭環境で育ったこと。
身元保証人になってくれる人もおらず、実家とも疎遠。
その孤独さが、同じように孤独を抱えてた和馬と重なっていたこと。
そして、もうひとつ。
『名字を変えたかった』
という、静かな願い。
旧姓だった頃の私は、まさに
『自己犠牲の人生』
だった。
自分に自信がなく、細かいことばかり気にしては、本音を話すのが怖くて、自分を守るのに必死で、それでも報われない日々ばかり送ってた。
けど、名字が変わったことで、私は少しずつ変わり始めた。
よっぽどのことでない限り、スルーできることも増えたし、自分の思いを少しだけ、主張できるようにもなった。
複雑な家庭環境の話も、
「気の知れた友人になら、話してもいいかな?」
と思えるようになり、今では、親しい人にだけ、身の上話をすることもあるけど、仮に否定されても、
「スルーすればいいや」
と思えるようになった。
それは、旧姓だった頃の私には、考えられない変化だった。
ただ、どうせ変わるなら、
「養子とか、違うかたちで変わりたかった。そしたら、こんな無駄な苦労をしなくても良かったのかな」
って、つくづく思うことがある。
名字が変わったことで得た
『少しの自信』と『自分を守る力』
それは確かに、私を強くしてくれたけれど、そこに辿り着くまでの道のりは、あまりにも遠回りだった。
和馬はいつも、どんなことが起きても、他人事のように捉え、まともな会話すら取り合ってくれなかったし、そのせいで、両親たちにバカにされてきた出来事が『フラッシュバック』したこともあった。
その度に
「私の人生、こんなはずじゃなかったのに」
と、何度も思い悩まされた。
『孤独と名字を変えたい』
という、静かな願い。
この2つの思いが、私をあの結婚へと押し出したのだと思う。だけど、こんな惨めな思いは、もう死んでも味わいたくないが。
けど、今は違う。
名字が変わったことで得た
『新しい自分』
を、私はこれからの人生に使っていく。
だから私は、和馬と離婚後、婚氏続称届を提出し、
『小島愛羅』
として、生きていこう。
そう静かに、決意したのでした。




