第82話 市役所での相談の落差
和馬の戸籍と附票を取得した私は、再び市役所を訪れたが、次に会った時の川上さんは、前回の丁寧さはなく、どこか事務的で冷たい対応だった。
戸籍と附票を見せると、川上さんは
「これらを持って、弁護士相談を受けるとスムーズだ」
と、あからさまに弁護士相談を受けることを提案してきたが、私は過去のトラウマから、
「無料相談を受けた時、そんなことを相談されても困る」
と突き返された経験を伝えた。
しかし、川上さんは、
「私たちが提供している無料弁護士相談会は、離婚の相談を扱うことが多い。私たちは弁護士と違って、あなたの離婚問題に踏み込むことはできないから」
と、まるで怒ってるかのような言い方をしてきた。
先日、私が泣きながら訴えたにもかかわらず、川上さんにも、冷たい態度を取られたことで、
「こないだ、弁護士を通したくない理由を必死な思いで伝えたのに、結局、この人にも届いていなかったんだな」
と感じ、悲しさが込み上げてきた。
「あの時の優しさは、ただ装ってただけで、この冷たい性格こそが、この人の本性なんだな。というより、最初から寄り添う気なんて、なかった人だったな」
そう思った。
川上さんは何度も
「弁護士を雇った方がいい」
と繰り返すように言ってきた。
しかし、実際に雇った結果、私にとって精神的にも経済的にも大きな負担となり、寄り添ってもらえず、解決にはつながらなかった。
だからこそ、私は自分で何とかしようと必死に動いているが、正直言えば、離婚の件は滞ったまま。
それも川上さんに説明したけど、私の必死な思いは、この人には、最初から届いていなかったんだなと思うと、深く幻滅した。
関係者もいないから、これまでいろんな窓口に問い合わせてきたけど、空回りすることが多かった。
協力してくれる友人や家族もいないから、ますます複雑で、
「私、一生離婚できないまま、人生を終えることになるのかな?」
と思ってしまう。
これまでも法律相談や窓口に問い合わせてきたが、具体的なアドバイスはほとんど得られず、無駄な動きにしかならなかった。
最初は優しく、次は冷たい。
その落差に、私は大きな失望を覚えた。
「人の温度に救われた」
と思ったのに、結局は、制度の壁に突き返されたから。
これまでも、市役所の人にお世話になってきたことが何度かあったが、どの方もみんな優しく、親身になって受け入れてくれた。だから、こんなに冷たく突っ返してきたのは、この人が始めてだったし、
「こんな人が、このまま福祉課なんかに所属してていいものなのか? そもそも、依頼者に寄り添う姿勢がなかったり、人の話に耳を傾けることができず、冷たい対応してくるくらいなら、他部署に移動させた方がいいのでは?」
そう実感した出来事だった。
昔、知人が
「子どもの親権で何年も争っているけれど、相手が同意してくれないから、離婚できない」
と話していたことを、ふと思い出した。
その時、私はまだ独身で、正直言うと、他人事のような感覚で聞いてた。
けれど、今なら分かる。
離婚の原因は違っても、この知人も、きっと孤独の中、1人で戦っていたと思う。
私もまた、離婚したくてもできない1人だから。
そんな理不尽な世の中に、ますます怒りが込み上がってくる。
制度の壁が被害者を追い詰め、孤独にさせる現実に。
「私みたいに、別居して半年経った場合、相手と連絡もつかなければ、身元も判明せず、夫婦関係が破綻してる場合は、有責配偶者の同意なく、自然と離婚ができる! そんな世の中になってほしい!」
と、願わずにはいられなかった。
市役所での相談は、結局、制度の壁を越えるものではなかったが、川上さんの対応の変化を通して、冷たい制度の中で、人の温度がいかに揺らぐかを思い知らされた。
そして私は、また1つ記録を残した。
それは、孤独に共鳴し、怒りを抱えながらも、灯りを探し続ける記録だった。
季節はすっかり冬になり、今年もあと1か月。
結局、離婚はできないまま、今年も終わろうとしている。
市役所を出て外を出た時、風は強く、雨も降ってたせいで、空気も冷たかった。
私の心の中も、この日の天気のように、孤独感に覆われ、冷たく凍りついていたのでした。




