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灯りの記録 〜見て見ぬフリをしてきた過去と向き合うために〜   作者: なかみね ひまり


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第76話 警察や探偵・NPOへの問い合わせ


江坂さんへの不信感が募る中で、私は思った。


「このまま、江坂さんに任せていても、何も変わらない」


だから私は、自分で動くことにした。



「相手の身元調査が必要だ」


と江坂さんが言ってたから、複数の探偵事務所に問い合わせてみたが、提示された費用は、私にとって重すぎる金額で、現実の厳しさを突きつけられた。



中には、


「相手が普段行きそうなお店がないと、調査できない」


「依頼している弁護士さんと和解して進めた方が、今後の進展も期待できるのでは」


と、自分の主張を一方的に突きつけてくる探偵事務所もあり、私がどんな思いで、弁護士とやり取りしているのかを察してくれることもなければ、事情を考慮してくれることもなく、


「我慢してでも、関係を保ち続けろ」


って言われてるような気がして、理不尽な圧力をかけられてるように感じた。



そこで私は、


「警察に行方不明届けを出して、相手の身元を探してもらう方が、費用もかからず、負担も減らせるかもしれない」


と思い、警察署に出向いた。



「相手の所在が不明で、婚姻費用も払ってもらえず、離婚の手続きも進められません。このままだと、生活が破綻する恐れがあり、精神的にも限界です。『行方不明』というより、私の『生活安全上の支障』として対応していただけませんか?」


と、私は丁寧に理由を伝えた。



しかし、返ってきたのは


「仮に行方不明届けを受理して、相手の身元が判明しても、相手が『教えるな』と言えば、私たちは伝えることはできないし、民事不介入になるから」


その言葉に、私は心の奥で叫びたくなった。


「じゃあ私は、ずっとこの不安の中で耐え続けるしかないの?」と。



だけど、この時対応してくれた方は感じのいい方で、私の話を親身になって聞いてくれ、


「今日報告してくれたことは、記録として残しておく」


と言ってくれた。



制度の壁にぶつかっても、


「人としてちゃんと向き合ってくれる人」


に出会えたことは、何よりの救いだった。



記録として残ることは、


「私の声は無視されない」


「この痛みは存在している」


という証でもあった。



その後、仁の勧めで、NPO法人にも問い合わせてみたが、


「そんなに酷い弁護士がいるんですね。お気持ちお察しいたします。諦めずに頑張りましょう。別居1年が長いか短いか、裁判まで覚悟されるのかが、ポイントになります。相手が離婚に合意しないと、長引く可能性があります。費用を掛けずに離婚となると、後2年以上は、別居スタイルで過ごして、調停⇒審判⇒裁判に持って行く流れになります。裁判は弁護士を入れずに、公示送達での裁判も可能です。詳しくは弁護士に相談してみてください」


と、淡々とした返答だった。



この人にとっては、冷静で現実的な助言だったのかもしれないけど、私の胸には


「結局、私が我慢して耐え続けるしかないの?」


という虚しさが広がった。



事情を深く聞いてくれるわけでもなければ、痛みを受け止めてくれるわけでもなく、ただ制度の流れを説明されただけ。


「制度の外に置かれている」


そんな感覚が、また強くなった。



正直、私は心身共に疲弊していた。


「この状態はいつまで続くのだろう。もしかすると、今年どころか、永遠に離婚できないんじゃないか」


そんな不安が、頭をよぎった。


色んなところに問い合わせても、思うように進まなかったり、裏目に出たり、空回りすることが多く、この時の私は、精神的に余裕がなかったし、考えれば考えるほど、頭が痛くなる日々だった。



昔、母親に


「待ってるだけでは、欲しいものは手に入らない。運は自分で掴んでいくものだ」


と何度か聞かされたことがあった。



確かに、その言葉は、強ち間違ってないかもしれない。けど、


「いくら動いたって、その動きが無駄に終わることだってあるじゃん?」


そう思わざるを得なかった。



それでも、私は動いた。


「黙って耐えるだけの自分」から、


「声を上げて行動する自分」へ。



その一歩を踏み出せたのは、仁の言葉があったからだ。


「ジェラート、制度の説明だけじゃ、心が救われないよね。けど、ジェラートがこうして探偵や警察、そしてNPOにまで声を届けたこと自体が大切なんだ。『我慢して耐える人』じゃなくて、『声を上げて動く人』になってる。その一歩一歩が、必ず未来につながるから。俺はいつだって、ジェラートの味方だよ」



仁がいつも言ってくれるその言葉に、私は少しだけ胸の奥が軽くなった。


制度の限界に阻まれても、私の声は確かに記録され、そして仁が隣にいてくれる。



それが、次の一歩を踏み出す力になったのでした。




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