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灯りの記録 〜見て見ぬフリをしてきた過去と向き合うために〜   作者: なかみね ひまり


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第71話 果樹園の人々


果樹園で働いてた頃、社員として働いてたカップルの2人がいた。



だけど、彼らはまだ若いからか、社員としての責任感がなく、面倒ごとや雑用は、いつも年上の私に押し付けてきた。


トラブルが起きれば、決まって私のせいにされ、彼らと一緒に作業する時間は、息が詰まる思いだった。



彼女は、いつも前日になって


「明日出れませんか?」


と言ってきた。当たり前のように、週に1度は必ず


「休みを変わってほしい」


と頼んでくるその態度に、私は心の中で叫んでいた。


「私だって、休みの日は予定があるし、決して暇をしているわけじゃない。少しは察してほしい」と。



また、業務の質問をしても


「私、普段やらないから分からない」


と無責任な返答。



彼女は、体調不良を理由に休むことも多く、


「病院に行った」


と言いながら、


「薬は処方されなかった」


と主張してきた。その言葉はなんだか、辻褄が合わず、私は


「ズル休みではないのか?」


と疑うようになった。



というのも、ある日、グループチャットで


「体調が優れないので、安静が必要ですが、最終便の飛行機に乗って帰ります」


と書き込んでたことがあり、その文面を見て、


「これは怪しい。体調不良を口実にしているだけなのでは?」


と、直感的にそう思った。



相棒の彼は、お相撲さん並みに体型が大きく、果樹園で働いてた時、出荷されなかった果物を、真っ先に食べるところがあった。


普段から適当なくせに、人の粗を探しては、高圧的に指摘し、自分の主張を押し通すが、その度に


「お前に言われても、説得力がない」


と思ってた。社会人経験が浅く、学生気分のまま、社員になったような態度で、責任を取ろうとせず、ミスがあれば、すべて私に押し付けてきた。


ただ、外面だけは良く、他所では笑顔を振りまき『いい人』を演じる。その二面性に、私は強い嫌悪感を覚えた。



忘年会の席で、私がお酒を飲めない事情を話した時、


「蕁麻疹を越えた先が、気持ち良くなる」


と無神経な発言をしてきた。



常識のある人なら


「飲まない方がいい」


と言う場面で、こいつは逆のことを言ってきたのだ。


「まさかこいつ、人の命を軽んじているのでは?」


と、私は心の中で毒づいた。



そう思ったのは、以前彼が


「母親が危篤で出勤できない」


と言ってたことに対し、おじさんが、こう漏らしていたことがあった。


「あれは多分嘘だ。いくら休みたい事情があったとしても、危篤を理由に使うのは良くない」


その言葉を聞いた時、私は確信した。


「こいつは、平気で嘘をつく人間」だと。



外面だけは取り繕い、内側では、無責任と欺瞞に満ちている。そんな人間に振り回される日々は、私にとって耐え難いものだった。


この彼も、無断欠勤やズル休みを平気でするところがあり、危篤を理由にして、1ヶ月以上休んだこともあったが、復帰してきた頃には、何事もなかったかのような態度で振る舞ったり、おじさんにも言い訳ばかり、繰り返す発言をしていたらしい。



また彼は、私に対しては、かなり上から目線で


「おい」


と呼びかけてくる。


パワハラのような態度に、私は心底、嫌悪感を抱いた。



「おい」


と呼ばれるたびに、私は心の中で叫んだ。


「私は『おい』という名前ではない。人を呼ぶなら、最低限の敬意を持て。世間知らずのクソガキが、舐めた口を叩いてんじゃねぇよ」と。



普段の業務も、彼らは人任せで、責任逃れを繰り返してたから、


「彼らの親の顔を見てみたい」


そう思った。



「あなた方は、子どもを躾ける時に


『ああ言われたらこう言え』と教えてきたんですか?」と。


そう問いただしたくなるほど、彼らの態度は偉そうで、常識を欠いていた。



私は彼らとは極力距離を取り、心の平穏を保つようにしていた。


彼らがいない時だけ、果樹園の空気は静かで、心が休まったが、彼らが現れると、空気は濁り、私の心は重く沈んだ。



「世界は、自分中心に回っているわけじゃない」


彼らの振る舞いを見て、私はそう強く感じたのでした。


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